- Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784409030899
作品紹介・あらすじ
組織や集合体から創造性はいかにして発生するのか
物質的/非物質的諸条件、ネットワークによる交流の反復を軸に、小さな共同体から、企業、都市、国家、社会運動までをフラットに分析。有機体的社会観の乗り越えと、偶然的な創発の解明に挑んだ、新しい社会実在論の試み。
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デランダは、観念論でも実証主義でも捉えられないものとして、社会を思考しようと試みる。つまり社会を、人間の心の作用とは独立のものとして思考することである。観念や概念のふるまいや、システムや社会構造や言説といった知的構築物では捉えられないものとして社会存在を考える、ということである。デランダは、このような知の転換が要請される理由について、次のように述べる。「今や、人類が直面している問題の多くは、直接的には観察できない物質的な過程によって引き起こされています。それはすなわち、環境や河川や海の緩慢な汚染であり、大量生産において規格化された労働の拡散を要因とする、人間の技能の緩慢な低落です。」(訳者解説より)
感想・レビュー・書評
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本書はとある地理学者仲間が「読書会でもやりましょう」といって指定してくれたもの。著者について全く知らなかったし,手にとってみると魅力的だが積極的に自分では選ばない本なので,ありがたい。読書会ということで,今後精読する予定なので,ここではごくさらっと済ませましょう。とりあえず目次。
第一章 全体性に背反する集合体
第二章 本質に背反する集合体
第三章 人とネットワーク
第四章 組織と政府
第五章 都市と国家
著者はメキシコ出身の映像作家でもあるという哲学者。すでに,杉田 敦さんの翻訳で『機会たちの戦争』という本が出ているとのこと。なにやら最近実在論が流行っているらしく,メイヤスーという人の『有限性の後で』という本とともに本書も話題になっているという。実在論とはrealismで,観念論idealismと対比されるのでしょうか。哲学的にいえば実在論と観念論ですが,まあ現実主義と理想主義とも翻訳できる。私は観念論寄りなので,どうも実在論というのは苦手。まあ,批判すべき素朴実在論というものと近年の議論はもちろん違うのだが,素朴実在論というのはそれこそ当たり前の考え方。私という人間がいなくても地球はあって,他人は存在し,社会は回っていくというもの。きちんと哲学の教育を受けていない私にとっては実在論や唯物論よりも,私がいなければ世界なんて存在するかどうかも分からないというような観念論の方が刺激的で,また別の視点から世界を,あるいは自分を見ることができた。
本書はもっと斬新な思考で世界をとらえてくれると少し期待したが,意外にドゥルーズなどに依拠した議論が前半を占める。集合体という概念もassemblageという『千のプラトー』からきている概念とのこと。後半も具体的な話はいたって普通で,「新しい社会実在論」(帯の言葉)といわれても何が新しいのかは私には分からなかった。
まあ,読書会ということで,他人と意見を交換するうちに発見することもあるかもしれません。