力なき者たちの力

  • 人文書院
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本棚登録 : 137
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (154ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409031049

作品紹介・あらすじ

無力な私たちは権力に対してどう声をあげるべきか?
チェコの劇作家、大統領ヴァーツラフ・ハヴェルによる
全体主義をするどく突いた不朽の名著
真実の生をいきるために私たちがなすべきことは何か

すべてはロックミュージシャンの逮捕から始まった――。かれらの問題は自分たちの問題だと共鳴した劇作家は、全体主義の権力のあり様を分析し、「真実の生」、「もう一つの文化」の意義を説く。このエッセイは、冷戦体制下の東欧で地下出版の形で広く読まれただけでなく、今なおその影響力はとどまることを知らない。形骸化した官僚制度、技術文明の危機を訴える本書は、私たち一人ひとりに「今、ここ」で何をすべきか、と問いかける。無関心に消費社会を生きる現代の私たちにも警鐘をならす一冊。解説、資料「憲章77」を付す。

東欧の民主化から30年、人権と自由を考えるために今なお重要なテクスト。「力のない人びと」の可能性とは?
本邦初訳!

感想・レビュー・書評

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  • 人間の尊厳を守る戦いに挑んだ1人の戯曲家の思考の記録。

    全体主義への洞察もさることながら、徹底したヒューマニズムへの信頼と、ヒューマニズムこそが社会を良くするというナイーブとも取れる期待。

    しかし、この書は間違いなく歴史を変えた。
    その事実が、この本の主張する内容の説得度を数段も押し上げる。

    正直読みづらさは否めないし、一読ではわからないところも多い。でも、はっきりとしたメッセージは明確に伝わる名著。

  • 「真の人間への回帰」という視点から、ポスト全体主義におけるイデオロギーの性質、体制と個人との関係性を鋭く考察する一冊。体制や組織の中での「(支配者/被支配者全員を含む)私たち人間の位置づけ」を考える機会を与えてくれる。体制は生きものみたいに、その構造を維持すべく、私たち人間を動かす。こういう視点から現実世界を、また周囲の人々を捉え直すと、今までとは違った感覚や理解が生まれる。この本は私の世界観を変えた。

  •  東ヨーロッパを幽霊が歩いている。西側で「ディシデント(反体制派/異論派)」と呼ばれる幽霊が。(p.7)

     イデオロギーとは世界と関係を築いていると見せかける方法のことであり、自分はアイデンティティも威厳もある倫理的な人間であるという錯覚を人びとにもたらし、その一部となることを容易にする。「超個人的」で、目的にとらわれない何かのまがい物として、良心を欺き、世界や自分のほんとうの姿を隠し、不名誉な「生き方」を隠すことを可能にする。それは、「上」に対しても、「下」に対しても、「横」に対しても、そして人びとに対しても、神に対しても、有効かつ威厳のある証明書である。「堕落した存在」、疎外、現状への迎合を隠すことのできるヴェールである。つまり、ありとあらゆるものに用いることができる口実である(p.17)

     イデオロギーの第一の--つまり、「口実」としての--機能は、ポスト全体主義体制の犠牲者かつ支援者である人びとに対して、体制は、人間の秩序、宇宙の秩序にふさわしいものであるという錯覚を与えることである。(p.18)

     権力はみずからの嘘に囚われており、そのため、すべてを偽造しなければならない。過去を偽造する。現在を偽造し、未来を偽造する。統計資料を偽造する。全能の力などないと偽り、なんでもできる警察組織などないと偽る。人権を尊重していると偽る。誰も迫害していないと偽る。何も恐れていないと偽る。何も偽っていないと偽る。
     このような韜晦のすべてを信じる必要はない。だが、まるで信じているかのように振る舞わなければならない、いや、せめて黙って許容したり、そうやって操っている人たちとうまく付き合わなければならない。
     だが、それゆえ、嘘の中で生きる羽目になる。
     嘘を受け入れる必要はない。嘘の生を、嘘の生を受け入れるだけで十分なのだ。それによって、体制を承認し、体制を満たし、体制の任務を果たし、体制となる。(pp.20-21)

     消費の価値体系にとりつかれた人間、大衆文化の混合物の中にアイデンティティが「融け」、自分が生き残ることしか考えず、高次の責任を意識せず、存在の秩序に根ざしていない人間は、堕落した人間である。体勢は人びとのそのような堕落を拠り所にし、それを強めるが、その堕落こそ社会を投影するものとなる。
     そのような場に追い込まれた人間が拒絶し、目指す「真実の生」は、逆に、みずから自身の責任を担おうとする試みである。それは、明らかに倫理的な行為である。人間が多大な犠牲を払わなければならないからではなく、それが目的になっていないからである。(p.44)

     文化は「並行構造」がもっとも発展しているのが観察できる領域である。もちろん、ベンダは、こういった構造の展望、および萌芽的な形態を他の領域でも検討している。並行的な情報ネットワークから、並行的な教育システム(私的な大学)、並行的な労働運動、並行的な外交、さらには「並行経済」まで仮定している。こうした「並行構造」の基盤から、「並行都市」という概念も導き出しており、場合によっては、その中に、そのような都市の萌芽となる組織をも見出している。(p.95)

     幾千もの個人的な体験からわかっているのは、それまで面識のない人たち、顔しか知らなかった人たちが、憲章77に共に署名したというだけで、深く開かれた関係を築くことができ、意義深い集団という強い感情を突然抱くことができるということである。それは、無関心な公式構造の中で長期にわたって共に働いていたとしても、稀にしかない。課題を共通に受け止め、経験を共有するという意識が、人びとと、人びとが暮らす雰囲気を一変させ、かれらの公的な仕事に、ある貴重なより人間的な次元がもたらされたかのようであった。(p.120)

  • 今の自分では難しくて読みこなせない。再読の必要あり。

  • 20/01/17。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/520906

  • 毎日新聞20191020掲載

  • 東2法経図・6F開架:311A/H45c//K

  • オートマティズム、誰それに強制されたというわけではなくシステムに取り込まれた時点で「自らそう振る舞ってしまう」ということ。
    本エッセイで繰り返し登場するこの概念は強烈だ。
    いってしまうと「空気を読む」文化というのは、このオートマティズムが浸透した社会だという読み替えも可能なわけだ。

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