- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784409160985
作品紹介・あらすじ
児童文学への愛にあふれる珠玉のエッセイ
金原瑞人氏推薦!
「ぼくは、ここで取り上げられている子どもの本は、ほとんど読んでいない。それを、こんなふうに楽しそうに語られると、もう、悲しくて、くやしくて……このエッセイ集をまた、最初から読み直してしまった。ぼくの子ども時代は灰色にくすんでいるのに、松村さんの子ども時代はとても鮮やかだ。ずるいなと思う。そして、その鮮やかな読書体験を、こんなに楽しく語る言葉を持ってるなんて、さらに、ずるいと思う。」
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
朝倉めぐみさんのカバーイラストと導入の面白さにそそられて手に取ってみた。始まりこそ「メロンと菓子パン」といった、おいしそうな甘目テイストな児童文学エッセイで、ずっとこんな感じなのかと思ったら…いい意味で「思ってたんと違う」な内容で、目からウロコでした。
著者の松村由利子さん、名前だけは聞いたことがあったけど著作を読むのは今回が初めて。英文科卒、元新聞記者で歌人でもあるという彼女の経歴が生きた内容で、気になるところをとことん掘り下げていく姿勢が、エッセイなのにちょっとノンフィクションっぽいところもありで、読んでいてワクワクした。作品の考察と、彼女の思い出話のミックス加減が絶妙。甘すぎずユーモラスで、ノスタルジックすぎないのがまたいい。
若草物語、赤毛のアン、あしながおじさん、クマのプーさん、ちびくろさんぼ…といった有名どころから、名前しか知らなかった戦前の児童文学など取り上げてる作品は多岐に渡り、名作については「そんな見方があったのか」(特に翻訳について)と新鮮な気持ちになる。名作の抄訳のよさ、時代や価値観の変遷と共に変わる表現など…なるほどの連続!児童書の古本屋さんに行きたくなりました。 -
すごい人に出会ってしまった。
こんなにも少年少女文学が好きな人に
これまで会ったことがない。
一冊一冊の本に対して、またその本たちを受け繋いでいくことに対しての愛があふれる本。
何冊か読みたい本メモしたので、翻訳者も意識して読んでみたいと思う。 -
私もたくさんのいい本に出会って、そして繰り返し読んで、今に至っております。
いいタイミングで出会えたことに感謝! -
歌人である著者が子どものころ読んだ本と、その思い出や印象的なシーンを語る。
なんと素晴らしい読書体験をしてきたのだろうか。そして、とても細かく色々な事を記憶している事に感心。
懐かしい本がたくさん登場します。 -
再読候補。
◆きっかけ
図書館 新刊棚
◆感想
すごく良かった。松村さんの少女時代の読書遍歴が、生き生きと書かれている。なんて楽しそうに読書をするのだろう!児童文学への、本への愛がひしひしと伝わってくる文章だった。
家族や親戚、友人にも本好きが多く、本の話を共有できるのが素敵だ。
小学生の頃にすでに沢山の物語を読み、時代背景や舞台背景が次々にリンクしていっている。そうして更に更に、楽しい本の旅へと向かっていった少女の姿が目に浮かぶ。
翻訳の違いや時代背景についても話が及び、面白い。どの本も読んでみたくなった。
抄訳や言葉遣いの改変についても触れられていたが、私も筆者と同じく、賛成派である。今の子供達が読みやすく、登場人物や場面によりそえるもの。敷居は低く、より多くの子供達が名作に触れる機会があればいい。そこから読書の旅に出た子供達が、同じ物語を完訳含めさまざまな訳や表現で再度味わえたなら素敵だ。
読書感想文について、「心に抱いているものを言葉にした途端に、そのときの思いは変質する。それが言葉というものの本質である。」と書かれており、日頃、言葉にすると意味が限定されてしまって、感じたことが伝えられない…と感じていたので、だよね!!と同調。「本当に大きな感動を覚えたとき、それは恐らく一生、その子の心に残る。言葉にしないまま、そっと胸の奥にしまっておくことで、その感動は子どもの成長と共に熟成し、心を豊かにする。(p143)」とも。娘が言葉を発するようになったら、読み聞かせの後、つい感想を聞きたくなってしまう気がする。が、ぐっと我慢することも大事だなとハッとした。
ちびくろサンボについて、1988年12月、小学館、学習研究社、講談社、そして岩波書店が相次いで絶版を決め、この絵本をあまり目にすることがなくなった。(p151)とあったが、物語の最後、虎がバターになってしまうシーンはその挿絵をよく覚えている。なんて美味しそうなんだと思った記憶がある。あの絵本は、図書館で借りたのだろうか。
「どんな作品も時代と切り離せない。現代の感覚や価値観を、古い時代の作者や登場人物に当てはめることはほとんど意味がないだろう。私たちはむしろ、優れた文学作品でさえ時代性から逃れられない面があることを直視し、そこから学ばなければならないのだ。(p156)」→物語のなかの行動や言葉に違和感や嫌悪感を感じることは確かにある。その時代背景や政治的背景を知って学んでいきたい。
「小学生くらいの子どもたちの読みものの挿絵は、絵本ほどには質がよくないように思える。(中略)幼い子の感性を見くびってはいけない。(中略)本物の美は深く心に浸透し、いつまでもそこにとどまる。だから、幼年向けの読みものの挿絵は、もっと多様性があってほしい。マンガしか知らないより、いろいろな画法や色彩、質感の絵に触れる機会がたくさんあった方がよい。(p165)」
紹介されている本を読むときに再読したい。また、娘が小学生になったときに彼女に勧める候補をさがすため、再読したい。
2016/9/27 -
子どもの頃に読んだ児童文学の思い出。
翻訳についての言及が多いのが興味深い。それに伴い児童文学全集に於ける抄訳の意義や魅力についても語られる。
子どもの時に出会った作品は後の人生に大きく関わる。いい出会いがありますように。 -
文学