老い 下 (新装版)

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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409230558

作品紹介・あらすじ

人間存在の究極的意味を示す老いーこの人生最後の時期に我々はいかなる者となるのか、そしていかに生きるのか。実存主義者であり無神論者である著者が、老いに直面した自らの苦悩にもとづき執筆した生々しい記録であり、老人問題に対する的確な回答書でもある。待望の復刊。

感想・レビュー・書評

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  • 早死にするか、老いるか、これ以外の道はない。身も蓋もない事実!

    本書はさまざまな老いのケースをくどいほどまとめているものの、著者自らが言うとおり知識階級や、富裕層のケースであったりと極めて身近なケースが多いです。しかも、宗教家のケースは一言もふれていません。ガンジーのケースにしても革命活動という政治家としての側面です。これだけ個人の意識の面が最終的な決め手となると言っておきながらこれはどういうことでしょうか。宗教は死生観に大きな影響があると思うのですが、なぜ触れていないのでしょう?60年代でもタブーだった?政治的圧力?いや、もうこんなガン無視という事自体が宗教による老いの問題の解決はありえないと主張しているようにさえ思われてきます。ここは非常に興味深いことろです。東洋の思想や仏教、禅などの思想の影響下にある東洋の老いについての思想も触れられてはいないところが、物足りなくもありヒントもありそうな気が・・・

    唯一のチャンスは、当人にとって世界が目的に満ちていることによって活動し、役にたち、倦怠や失墜から逃れられること。とすれば、いかに打ち込めるものを持っているか?また社会が打ち込む姿を許容するか?ということが課題ということですね。体の不具合、社会からの孤立という点では老人はある意味、障害者と似た境遇であるため、障害者問題を考えることはつまり老人問題の解決へのヒントとなるのだとことも頷けます。

    ただ、今の介護の現場をみていると頭は明晰のまま体の自由が効かずに苦しんだり病苦に悶えるよりは、痛みすら感じない完全に痴呆となったほうが本人としては幸せなのではないかとすら、4人の親を見送った者としては思ってしまいます。

    早期退職をした身としては衝撃の大作でした。流行りのFIREを考えている人は読んでみた方がいいかもよ〜

  • 老いを真正面から捉えていて、圧倒される。トルストイ、ユーゴーらの晩年に驚く。谷崎潤一郎や楢山節考、アイヌも出てきていた(上巻)。老いが怖いものとして読んでいた。読んでいるとどんどん恐怖になってくる。何故か最後はどんな老いが自分に待っているのか、やってくるのかと楽しみになってくる。

  • 記録

  • ボーヴォワールの、テーマに対して徹底的に書き尽くそうとする姿勢は好き。老いについても上下巻の大著となる。
    上巻が社会や歴史など外から見た老いだったのに対し、下巻は内から見た老い。老いたものは何を語るか。古今東西(「今」は作家の同時代人)の文化人がサンプルなのでハイブロウな老いではあるが、共感するところも多数。
    「過去は私の背後にある(略)静かな風景ではない。そのなかへ進んでゆくにつれて、それは崩れ去ってゆくのだ。そこから浮かび上がる残片の大部分は色褪せ、凍り、いびつで、その意味が私には理解できない。」「『われわれのある部分は硬化し、他の部分は腐る、われわれはけっして成熟しはしない』サント・ブーヴ『老人に向かって、人生から得た豊富な経験などと言わないでもらいたい。あのように長い年月のあいだわれわれの中に流れ込んだもののうち、われわれが留めえたもののなんと少ないことか。信じられないほどである。』モーリヤック」
    老いは残酷な崩壊と喪失である、というのが一貫したトーンである。自身も高齢者となろうとする作家の冷徹な眼は「経験豊富で柔和な賢者」たる老人の理想像を打ち壊す。老人は(家族の有無、過去の地位や実績に関わらず)孤独であり、自らの老いを悲哀をもって自覚せざるを得ない。本書の結論でも、惨めに老いないただ一つの方法は「人生に意義を与えるような目標を追求し続けること」だが、それはごく少数の恵まれた特権者にしかできないという。容赦ない。覚悟して老いるべし。

  • 100分で名著であげられ、上野千鶴子が解説をしていた本である。データに基づいて説明していることにはおどろかされた。しかし、楢山節考を日本の例として取り上げているのはいいのだが未開社会に入れているのはおかしい。貧困と老い、の中に入れるべきであるが、フランスの例で精いっぱいで日本のことはあまりかんがえられなかったのかもしれない。さらにアイヌ部落の記録の例で、老女が檻に入れられて糞尿にまみれていることもあげられている。これは、統合失調症の老女の例と思われるが、その精神疾患と貧困についての考慮が行われていない。
     フランスでの例を考えるためにはいいと思われるが、それをそのまま日本に対応させて論文で持ってくるのは無理かもしれない。(上)の話である。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:367.7||B
    資料ID:95131097

  • 出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介

    ボーヴォワールの傑作。あらゆる文献や研究をたどり、老いと生を対比して捉えた本。

  • 「老い」の先も見据えなきゃ、、、

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    「人は老いる。肉体的に、精神的に・・・はじめて多角的に「老い」の姿を捉えた名著、新装版にて再刊行。

    老いを自己のうちに発見しながら、我々は
    老いることを拒否し、残された短い未来を予知する。
    絶望、空虚、無為、貧困、
    この人生の最後の時期を我々はいかに生きるのか?
    老いという呪縛に意識と行動をもって反応する人間。
    充溢した老いを生きるためには、若い年代に
    すでにその準備がなされていなければならない。」

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