社会学ウシジマくん

著者 :
  • 人文書院
3.33
  • (1)
  • (5)
  • (7)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 100
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409240953

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  タイトルのとおり、『闇金ウシジマくん』を社会学的観点から研究してみるという面白い趣向の本である。

     『磯野家の謎』を筆頭としたかつての「謎本」の系譜につらなるものとも言えるが、もっと本格的だ。なにしろ著者自身が社会学者(関西学院大学社会学部教授)だし、片手間のやっつけ仕事という感はなく、けっこう本気で書いている。「謎本」にありがちだったおちゃらけは一切なしで、ごく真面目な研究書でもある。

     「謎本」ブーム以降に登場したマンガ研究本には粗製濫造のひどいものも多かったが、本書はていねいな作りで好感が持てる。原作へのリスペクトもしっかり伝わってくるし。

     『闇金ウシジマくん』は現代社会の病理と闇を、綿密な取材もふまえて多角的に描いた作品であるわけで、考えてみれば社会学を学ぶ素材にふさわしい。その意味で、本書は「コロンブスの卵」的な好企画だと思う。

     社会学入門として十分有益だし、随所で関連書籍が紹介されるので社会学ブックガイドとしても使える。また、『闇金ウシジマくん』という作品の魅力をより深く理解できる本でもある。
     
     ただ、作品のセリフやシーンの引用が山のように出てくるので、『ウシジマくん』をずっと読んでいる人でないと、本書の内容は半分くらいしか理解できないだろう。なので、作品を読んだうえで手を伸ばすべき本だ。

  • 【エピローグ―社会階層論ウシジマくん】p237
    「社会問題とされないという社会問題がもっとも根深い社会問題なのかもしれません」

著者プロフィール

【編者】難波功士(なんば・こうじ)
1961年大阪府生。関西学院大学社会学部教授。博士(社会学)。『広告で社会学』(弘文堂)、『社会学ウシジマくん』(人文書院)、『メディア論(ブックガイドシリーズ基本の30冊)』(人文書院)など。

「2023年 『吉見俊哉論 社会学とメディア論の可能性』 で使われていた紹介文から引用しています。」

難波功士の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×