- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784409241356
作品紹介・あらすじ
私たちはまだ連帯できる――ほんとうの敵は資本主義だ
1%の富裕層ではなく、「99%の私たち」のために、性差別・人種主義・環境破壊のない社会を。いまや世界中に拡がる女性たちの運動とも共鳴しながら、研究の第一線でも活躍するジェンダー学者たちが、性の抑圧をもたらす現代資本主義の終焉を呼びかける。分断を正確に認識することで、私たちはまだ連帯できる。
「99%のためのフェミニズムは反資本主義をうたう不断のフェミニズムである――平等を勝ち取らないかぎり同等では満足せず、公正を勝ち取らないかぎり空虚な法的権利には満足せず、個人の自由がすべての人々の自由と共にあることが確証されないかぎり、私たちは決して既存の民主主義には満足しない」(本文より)。
◎目次
1 新たなフェミニズムの波がストライキを再構成する
2 リベラル・フェミニズムは崩壊した──私たちは前に進まなければならない
3 私たちには反資本主義のフェミニズムが必要だ──99%のためのフェミニズム
4 私たちは社会全体の危機のさなかを生きている──そしてその根源は資本主義にある
5 資本主義社会におけるジェンダー的抑圧は、社会的再生産が利益目的の生産に従属していることに根ざしている──私たちはその順番を正しくひっくり返したい
6 ジェンダーに基づく暴力には多くの形があり、そのすべては資本主義と複雑に絡みあっている──私たちはそれらすべてと闘うことを誓う
7 資本主義はセクシュアリティを規制しようとする──私たちはそれを解放したい
8 資本主義は人種主義的・植民地主義的暴力から生まれた──99%のためのフェミニズムは、反人種主義かつ反帝国主義である
9 資本による地球の破壊から脱するために闘う──99%のためのフェミニズムはエコ社会主義である
10 資本主義は本物の民主主義や平和と両立しない──私たちの答えはフェミニスト的な国際主義である
11 99%のためのフェミニズムはすべてのラディカルな運動に反資本主義の反乱を呼びかける
感想・レビュー・書評
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至極真っ当な内容ではあるんだけどジェンダーギャップ指数121位(153カ国中)の日本の状況を考えると、まずこの本で問題提起されているようなことが社会で問題として扱われるようになるまであとどれくらいの時間がかかるんだ?とか思って気が遠くなった。
第5章「資本主義社会におけるジェンダー的抑圧は、社会的再生が利益目的の生産に従属していることに根ざしている」は最近読んだ何冊かの本に書かれいたケアへの軽視や依存労働(キテイ)のことなどを思い返しながら読んだ。社会的再生産とは生命を生み維持し継続させる活動と制度であり(バタチャーリャ)、社会的再生産論がこれらの重要性に注目するのに対し、資本主義はモノや利益の生産を優先させている。そしてその活動は女性が主に担わされているということ。
第6章「ジェンダーに基づく暴力には多くのかたちがあり、そのすべては資本主義と複雑に絡み合っている」それな〜
"ふくれあがっていく不平等とすっかり親和しながら、リベラル・フェミニズムは抑圧をアウトソースする。経営者層の女性たちはそれによってまさしく体制の一員となる(lean in)ー薄給の移民女性にケアの提供と家事を外注し、彼女たちに寄りかかれる(lean on)ように自ら膳立てをすることによって。リベラル・フェミニズムは階級や人種に対して無関心を貫き、我々の信念をエリート主義や個人主義につなげてしまう。またフェミニズムを「孤立無援」の運動に仕立てあげることで、私たちと多数を脅かす方策とを結びつけ、その方針に対抗する闘いから私たちを切り離してしまう。端的に言って、リベラル・フェミニズムの名をおとしめたのだ。"(p28)
"リーン・イン・フェミニズムに対する私たちの返答は、キック・バック・フェミニズムである。飛び散った破片の片づけを圧倒的多数の人々に押しつけてまで、ガラスの天井を打ち破ろうとすることに興味はない。役員室を占拠する女性CEOたちを称賛することはおろか、私たちはCEOと役員室自体を撤廃したいのである。"(p31)
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ここまで反資本主義を掲げたフェミニズムの議論は昨今では珍しいのではないだろうか。本書でいう「99%のためのフェミニズム」とは、残りの1%であるグローバル化する資本主義から利益を得ている人びとに対抗するために、階級やセクシュアリティ・人種などの属性を乗り越えて広く手を取り合おうというフェミニズムのことのようだ。「解説」パートではそもそも本書がどのような文脈から書かれるに至ったのか、事実関係が詳述されているので、マニュフェストのパートを読む前に「解説」から読むと理解がしやすいのではないかと思う。
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今月中に読もうと思ってた『99%のためのフェミニズム宣言』(人文書院、2020年)、滑り込み読了。
数値とか出てくるとたまに出典どこだろ?って気になることもあったけど、本書の核心はそーゆーとこじゃないんでしょう。
やや資本主義への論理展開についていけない部分もあったけど、フェミニズムと資本主義の関係について初めて考える機会をもらえた。
特に興味を持ったのはフェミニズムと人種の関係。女性解放の旗を掲げて人種差別・宗教差別が正当化されるという発想をは今まで持ってなかった。かなり難しく繊細な問題だろうけど。
1/3くらい読み進めたところでマルクス主義の香りがするなーと思ってたら、やっぱり3人の著者のうちナンシー・フレイザー以外の2人はマルクス主義も研究してる方みたい。
マルクス主義フェミニズムとか社会主義フェミニズムっていうのがフェミニズムやジェンダー論の中でどんな展開をしてきて、今どんな位置付けにあるのか気になる。
ところで、奥付で訳者が同い年の院生と知り、同じ院生としてなんかもう立つ瀬がないなと思ってしまった。24歳ですでに翻訳実績持ってるって凄過ぎん? -
1%の富裕層ではなく、「99%の私たち」のために、性差別・人種主義・環境破壊のない社会を。いまや世界中に拡がる女性たちの運動とも共鳴しながら、研究の第一線でも活躍するジェンダー学者たちが、性の抑圧をもたらす現代資本主義の終焉を呼びかける。分断を正確に認識することで、私たちはまだ連帯できる。
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ラジカルな反資本主義・反リベラルなフェミニズムの宣言。具体的にはどういう社会をめざしてんだろうねえ。
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資本主義により生まれる1%の富裕層と99%の貧困層の話。女性差別や暴行は資本主義を回すため、貧困層に強く現れる。資本主義の問題を洗い出す本。
勉強本。 -
セックスワークイズワークなど受け入れられない部分もあるが、リーンインフェミニズムへの批判などは非常に良かった