神々は真っ先に逃げ帰った 棄民棄兵とシベリア抑留

  • 人文書院 (2020年5月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (298ページ) / ISBN・EAN: 9784409520819

作品紹介・あらすじ

日ソ戦争、抑留、そして戦後。捕虜たちはどう生き延び自分と社会をみつめたか? 


著者は歴史家として、シベリア抑留を北東アジアの歴史と地政学のなかに置き直し、分析に有効な例として香月泰男、高杉一郎、石原吉郎を選び出した。苛酷な抑留体験をした彼らの戦中戦後をセンシティブにたどりながら、喪失の意味をさぐる。国家が責任をとらずに、特権階級だけが真っ先に難を逃れる構造はいまもかわらない。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

シベリア抑留という厳しい歴史的背景を通じて、戦争の影響や国家の責任を考察する作品です。著者は、抑留された日本人たちの実体験を掘り下げ、彼らがどのようにして自身のアイデンティティや社会を見つめ直したのか...

感想・レビュー・書評

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  • 日ソ戦争の終結後、取り残され、シベリアに抑留された日本人の人々に焦点を当てた著作。
    こうした著作として、珍しいのは、著者がアメリカ人であることだろう。著者はカリフォルニア大学バークレー校の歴史学教授である。シベリア抑留に特に個人的な関係や思い入れがあったというわけではなく、その分、一歩引いた、客観的な視点になっている印象を受ける。

    原題は"The Gods Left First: The Captivity and Repatriation of Japanese POWs in Northeast Asia, 1945-1956"。
    原題に比較して、邦題の方が憤りが強い印象を受ける(少なくともleftには「逃げ帰った」ニュアンスはないだろう)。これは訳者の思いが混じっているのだろうか。訳者はソ連政治史、日ソ関係史、シベリア抑留を専門とする研究者で、著者とは友人関係にある。本書の邦訳が出たのは、訳者の力添えによるところも大きいようである。

    タイトルの神々("The Gods")とは、「国体」に連なる官僚や高級将校を指す。
    植民地で神のような存在であった彼らは、敗戦となるやさっさと去り、あとには下級の兵士や文民が残された。彼らは、厳しい逃避行、そして場合によって長期の抑留を強いられた。
    彼らがどういった「精神世界」にあったのか、実際、それを経験した人々の記録から、その世界に迫っていく試みである。

    取り上げられているのは画家の香月泰男、評論家の高杉一郎、詩人の石原吉郎である(さらに引揚者として藤原てい(『流れる星は生きている』著者)にも触れている)。
    この抑留者3人が選ばれたのは、代表的な知識人であったのに加え、それぞれ抑留期間や帰国時期がずれており、抑留者がどのような経験をしたのかが流れとして見えやすいためである。
    香月に代表される第一群(帰還は1947年半ば-1948年半ば)は、食料や労働力が不足して過酷であったが、イデオロギー化されなかった世代である。
    高杉の第二群(帰還は1948年終盤-1950年)は、ソ連全体のさまざまな条件が改善され、捕虜の待遇も前よりはよくなった時期である。だが、再教育キャンペーンが始まり、捕虜の間でも思想的対立が高まるという別の意味の緊張があった。
    石原の第三群は、「戦犯」に指定され、自由剥奪25年の判決を受けた人々である。憲兵や諜報機関員、外交官やロシア語話者なども含まれた。だがこの群の人々はかなり多様で、一部は権力を持っていたが、多くはさほどの権力もないまま戦犯とされていた。長期の拘留により、祖国から捨てられた思いを抱いていた者もある。

    本書では、それぞれの著作からの引用を元に、彼らがどういった抑留生活を送り、どのような思想を深めたかを探っていく。
    三者三様であるが、また三者の経験を追うことで、抑留全体の変遷も浮かんでくる。

    正直なところ、門外漢には少々難しかったのだが、労作である。
    文献リストは訳者により欧文・邦文で分けられて巻末にまとめられており、次の読書につながりやすくなっている。

  • 『夜と霧』にたいへん感銘を受けた。
    なので(内容はまるで異なるが)収容所の日本人、つまりシベリア抑留について知りたくなって読んでみる。
    で、本書。
    『神々は真っ先に逃げ帰った』(The God Left First)というタイトルが気になったので調べたら、たしかに「left」には「見捨てる」「置き去りにする」という意味がある。
    なぜこのようなタイトルをつけたのかというと、敗戦が決定的になったため、満州その他に建立した神社にあるご神体を日本に帰した、というエピソードが元である。
    まるで日本の神々がさっさと逃げ出したかのような印象を植え付けるタイトルということがわかり、眉を顰める。
    そもそもタイトルを「逃げ帰った」という、「神々は卑怯だ」というイメージを抱かせる邦訳にしたことが、もううさんくさい。
    シベリア抑留の話なのに、とっかかりを「逃げ出した神」という、いわば日本の神々をディスってるやり口が気に入らない。
    著者はカリフォルニア大バークレー校の歴史学教授だが、調べたらこの大学は左翼の総本山だということがわかり、警戒しながら読み進める。
    訳者は私の20歳上、つまり団塊の世代だ。これもますます警戒材料となる。というかそれ以前に、翻訳翻訳したこなれていない文章は非常に読みづらい。
    で。
    終盤、七三一部隊の話が出てきて、註によると森村誠一の『悪魔の飽食』から引用したものだという。
    後年、森村氏自身が「あれはフィクションだ」と認めた著書をエビデンスにしてどーすんのよ。
    というわけでここでもう読む気を失くす。
    でもシベリア抑留の話は知りたいので、実際に修養経験のある人が著した『シベリア抑留1450日』を読み始めることにする。

  • 棄民棄兵とシベリア抑留という副題のついた良書。
    米国学者のシベリア抑留についての論考。
    日本にもいろいろこの手の本はあるがなかなかのスグレ本。
    ロシアのウクライナ侵攻を考えるうえでロシア人不信がさらにも倍加した。
    ロシア人の本質を知るためにはお勧め。

  • 東2法経図・6F開架:210.75A/B25k//K

  • 【書誌情報】
    『神々は真っ先に逃げ帰った――棄民棄兵とシベリア抑留』
    原題:The Gods Left First (2013)
    著者:アンドリュー・バーシェイ
    訳者:富田武
    定価:3,800円+税
    出版年月日:2020/05/10
    ISBN:9784409520819
    判型:4-6 296ページ  

    ◆抑留された捕虜の内面世界とはどのようなものだったのか? 喪失体験と生き抜くこと
    -------
     日ソ戦争が勃発、「分霊」された神社の鏡と軍隊の神々である将校たちは内地に逃げ帰り、無力な兵隊と民間人がのこされた。
     著者は歴史家として、シベリア抑留を北東アジアの歴史と地政学のなかに置き直し、分析に有効な例として香月泰男、高杉一郎、石原吉郎を選び出した。苛酷な抑留体験をした彼らの戦中戦後をセンシティブにたどりながら、喪失の意味をさぐる。国家が責任をとらずに、特権階級だけが真っ先に難を逃れる構造はいまもかわらない。
    http://www.jimbunshoin.co.jp/smp/book/b487607.html

    【目次】
    謝辞
    日本語版への謝辞
    用語解説と凡例
    地図

    序章 神々は真っ先に逃げ帰った

    第二章 歴史の中のシベリア抑留 
    皇族宮の話/日ソ戦争の実態/日本降伏の決定的要因は?/熱戦から冷戦へ/日ソ紛争:前史から本史へ/捕虜のソ連移送・抑留へ/動機としての労働力不足/記憶される抑留

    第三章 香月泰男とラーゲリの世俗的世界 
    世俗的なもののイコン/赤い屍体/「私のヴィジョンは十倍にもなった」/「シベリア・スタイル」/イメージからテキストへ/芸術家の責任/私しかとらえられない美しさ

    第四章 苦しんで得られた知――高杉一郎とシベリアの「民主運動」
    ヨシフ・ヴィッサリオーノヴィチ〔スターリン〕に感謝する!/ヒューマニストがラーゲリを解釈する/シベリア、民主主義の学校/小川五郎が高杉一郎に/極光のかげに/地獄の門/洞察に向かって/帰還へ向けて/苦しんで得られた知

    第五章 石原吉郎――最も良き私自身は帰って来なかった
    プロローグ:石原吉郎とヴィクトル・フランクル/生き残った者の疑問/記憶の原始的蓄積/
    石原の前半生/ラーゲリ生活/石原の最低点への落ち込み/鹿野武一、謎の男/これがダモイか?

    終章 藤原てい――引揚者たちの苦難
    スターリンが配慮しなかった人民/生きるための戦い:『流れる星は生きている』
    生き残りの意味とメッセージ


    文献
    訳者あとがき
    付表 何人捕われ、何人死んだか?

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