石油とナショナリズム 中東資源外交と「戦後アジア主義」

  • 人文書院 (2022年9月22日発売)
4.00
  • (1)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 30
感想 : 4
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784409520901

作品紹介・あらすじ

戦後の石油危機に民族主義はどう結びついていたのか?



大東亜共栄圏を夢見たアジア主義者にとって石油は何を意味していたのか?



資源ナショナリズムと天皇を中心とした日本民族主義とはいかなるものだったのか?



出光佐三、山下太郎、田中清玄、杉本茂ら「資源派財界人」、保守傍流とされた岸信介、中曽根康弘らの政治家、ブレーンとなった中谷武世の思想と行動を明らかにする。



本書は、戦後日本の「中東」概念を検討し、それが単なる資源保障論に基づく産油国という認識ではなく、戦前のアジア主義が形を変えた資源と密接に結びついた「民族主義」の影響を強くうけていたことを明らかにしたものである。関係者の聞き取りも踏まえ、資源と密接に結びついた「民族系資本」としての石油、資源ナショナリズムについて考察する試み。



◎目次

序章 戦後日本における中東:その定義と概念

第一章:出光佐三とイラン石油

第二章 山下太郎とサウジアラビア・クウェート石油

第三章:田中清玄とアブダビ石油

第四章 杉本茂とアブダビ石油

第五章:中谷武世と中東

補論:通商産業省と石油の自主開発政策

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「第三章 田中清玄とアブダビ石油」がとくにおもしろかった。

  •  戦後日本社会の歴史を考える際、つねに米国とその軍事戦略との関わりばかりが前景化されてしまうことはどうなのだろう、と思っていた。研究者や批評家が政治史・社会史・文化史の問題をつねに米国との関係で考え、米国の図書館や公文書館に資料探しに出かけること自体が、そうした構造を再生産することにつながるのではないか、と思っていた(なので、「冷戦文化」の影響力を大きく見積もる議論には飽き足らないものを感じていた)。本書が重要なのは、上記のようなトレンドとは異なる議論の場を開く可能性を感じさせてくれることにある。

     戦後日本の中東政策は、外務省の正式な外交ルート以上に、戦前の大アジア主義の系譜、右翼ナショナリストの系譜に連なる民間のフィクサーたちが重要な役割を果たした、というのが筆者の見立てである。そして、彼らの行動原理の根本を規定したのは、英米系メジャー資本による市場支配への反発と、アジアの自立という観点から産油国の資源ナショナリズムの胎動に協調・賛同する思考に他ならなかった。こうした本書での指摘は、たとえばA・A会議と文学者・文化人との関わりを考える上でも補助線の一つとなるのではないか。アジア・アフリカへの関心は、決して左翼やそのシンパの専売特許ではなかったのだ。
     冷戦の中期から後期、1960-70年代のエネルギーをめぐる動向を考えることは、米でもソでもない第三の道がリアルに感じられる世界の下部構造に向かう眼差しを鍛えてくれるように思う。

  • 東2法経図・6F開架:568A/L57s//K

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

シナン・レヴェント
Sinan Levent/1983年トルコ共和国生まれ。2014年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士課程修了。博士(学術)。2017~2019年 日本学術振興会の外国人特別研究員PDとして立教大学法学部政治学科に在籍。専門は日本政治外交史。現在アンカラ大学言語歴史地理学部助教授。東洋大学アジア文化研究所客員研究員。

単行本:『日本の中央ユーラシア政策:トゥーラン主義運動とイスラーム政策』彩流社、2019年。
論文:「聞き書き 福田康夫元総理『中東』関係回想録:認識と政策」『立教法学』第100号、立教大学法学部、2019年、53~117頁;「戦後日本の対中東外交にみる民族主義:アジア主義の延長線」『国際政治』第204号、日本国際政治学会、2021年3月、33~48頁など。

「2022年 『石油とナショナリズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

シナン・レヴェントの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×