- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784413033060
感想・レビュー・書評
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1999年に起きた幼女の殺人事件。加害者は同じ幼稚園に通う子供の母親で、被害者の母親とは「ママ友」であった。普通の主婦が家族づきあいをする幼女を殺害、死体をバッグに詰めて新幹線に乗り、地中に埋める。そして、自首した加害者が、なぜ殺害に及んだのかがわからないと語る。なんとも不気味な事件として報道されていたことを覚えている。
被害者家族のいじめが事件の発端になったとか、加害者は小学生受験戦争社会の被害者だという意見もあった。
本書は本事件の全15回の裁判を通して、加害者、山田みつ子の殺害動機に迫ろうとするドキュメンタリー小説。
今の時代ならば、山田みつ子の過去を並べると、PTSDとか、うつ病、発達障害など何らかの精神障害と結論付けられるだろう。それくらい不安定な人生を送っている。
そしてこの人の最大の不幸は、運良く夫と知り合い、結婚し、出産してしまったことだと思う。まともで、一般的で、幸せな人生を送る常識が欠けていたし、その修復ができないまま成長してしまった。夫に「私が犯罪者になったら、どうする?」なんて問うのは、まともな精神じゃないだろう。
この人のそばに偶然、存在してしまった被害者家族には同情するしかない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
夫が家庭に無関心のわりに逮捕するときだけ親身になってて変なの。新聞もとらせないカーテンもつけない細かい家庭、さらに孤立した人間関係。みつ子のしたことに同情の余地はないけど育った家庭や周りの人にも恵まれなかったな。筆者があまり文章に色をつけずに読み手側に委ねているようなところがよかった。
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フィクションである森に眠る魚を読み、ノンフィクション作品を手に取る。
こちらのほうが事実に即しているが、当事者や周辺事情などは闇の中。 -
当時のワイドショーや電車の中吊りで「お受験」が事件の発端になったのだとばかり思っていたけど、ちょっと違ったんですね。
同じく「『ママ友』の難しさ」も当時事件の糸口とあげられていたけど、本書を読んでそれもしっくりこない気がしました。
何かと思いつめがちな加害者の性格や夫(やその職場)との関係なんかも知ると「○○が原因」「○○が引き金」と簡単には言い表せないと思いました。
加害者にしかわからない、というか加害者にもハッキリわからないモヤモヤした感情が潜んでいるように感じます。 -
ママ友怖い
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佐木さんの本を読んでいる今日この頃。
読んでいて暗くなるわけですが、「お受験」などの状況って当時とほとんど変わっていないような気がする(むしろ加速しているのか?)
もちろん、それはこの事件の一面にすぎないわけだけど…。 -
現在放映中のドラマ、「名前を忘れた女神」を見ていると、この事件を思い出さずにはおれない。それから気になって気になって、探して見つけた。佐木隆三でしたか。ひさしぶり。
お受験がらみだの、ママ友同士の確執だのと、当時、ワイドショウで騒がれていた。傍聴にも長蛇の列だったようだ。裁判はさくさく進み、あっという間に判決が下りたと記憶する。犯行の動機について、あくまでくちをつぐんだ容疑者は、その後どうなったんだろう。
子をはさんでの母親同士には、大同小異、互いのココロを乱すには充分な、ねたみそねみ嫉妬がつきまといがちである。それは、時に恐るべし化け物じみた変化を見せるものなのだろう。本当に、いやなものだ。おとこにゃあ、わかるまい。
とはいえ、どうあっても、幼い子を殺害する理由にも、言い訳にもならない。弱きものに手をかけるとは、いかようなる理由があっても、許されるものではない。しかし母親であるならば、誰しもが、ママ友関係において、「一瞬の殺意」を当たり前にもつわけで、わたしだってあるし。
でも、「殺したい」から「殺す」にいたるまで、何重もの倫理のプロテクトに阻まれているはずなのに、それを壊してまで罪をおかす心理状態って、いったいどうなんだろう。
丁寧に丁寧に、手繰っている。
時に、手を合わせつつ、祈りながら読んでいる。
そして、読了。
意外や、報道で知るほどに「黙秘」でもなく、たまっているものを全部吐き出していた。ただ、動機については当人も「わからない」。
お受験がらみのみならず、知られざる事実がたくさん登場した。
摂食障害、実家の複雑な家庭での生育歴、自殺念慮、自殺未遂、さまざま。強迫性の、精神症状がかなり強く出ているが、かといって、殺害シュミレーションは周到、計画性ありあり。まるで、夢のできごとのように、殺害へ吸い寄せられていく。明確な意識的殺意、というより、無意識にあやつられたかのような印象。
また、よきデキたオットかと思っていた僧侶、なんてことない、おんなを家事ロボットとみなすただのオトコ風情。冷静すぎる、というより、感情がないのか、思うほど取りみだしがない。それを「悟り」というには、ちょっとちがうというか、説明がつかないかんじ。
だが、殺人をおかした妻と対峙して、はじめて己が生業にめざめたのか。自首を促すまでの数時間が、この夫婦にとって、最良の共有しえた時間だったのだろうか。
その後がやけに、気になるふたりだ。
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またいつものユミさんのところで見掛けて予約した本です。
当時とても話題になり、ワイドショーでも長い時間取り上げられた事件で、私も興味深く見ていました。まさかお付き合いのあるお母さんが犯人だったとは!とかなりの衝撃でした。
でもテレビで取り上げられなくなると、全然分からなくなってしまうので、忘れてしまって、結局どうなったの?と思っていたのです。この本では判決までが書かれてあります。
本当はどうなんだろう。本を読んでいくとその気持ちがどんどん大きくなってしまいました。犯人の言っていることは全て被害者のお母さんが否定しています。でもそれが全て真実ではないんじゃないかとも思ってしまうんですよね。
確かにかなり曲解されてるとは思います。言ってもないことを言ったと証言していることも事実かもしれない。だけど、ここまで犯人が思うまでにはそれなりの言動があったんじゃないかと思ってしまう。
子供を通じての親同士の付き合いって本当に難しいんだと改めて考えさせられました。
そして私は大丈夫かなと考えずにはいられない。どちらの立場にもなる可能性があると思うから怖いです。
でも私は大丈夫でしょうと思うけれど。
他の事件についても本を出されているので予約してみます。 -
1999年に起きた2歳の春奈ちゃんが殺害された事件の裁判記録。山田みつ子被告の異常な被害者の母に対する嫌悪感と、相談できる相手のいなかった寂しい日々が明かされています。もし、誰かが山田みつ子の話に親身になっていれば起こる事のなかった事件だと思います。殺された春奈ちゃんがかわいそうで、言うに言われぬ気持ちになりました。