人に強くなる極意 (青春新書インテリジェンス)

著者 :
  • 青春出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784413044097

作品紹介・あらすじ

どんな相手にも「ぶれない」「びびらない」「怒らない」――。ビジネスでも人生でも、人と相対したときにどう振る舞えるかが結果を大きく左右する。いつでも最高のパフォーマンスをするには、どんな心持ちでいることが重要なのか。外国の要人、日本国首相、そして特捜検察などに対してギリギリの交渉力を発揮してきた著者が、現代を“図太く”生き残るための処世術を伝授する。

感想・レビュー・書評

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  •  経済・社会・国際情勢が激動する現代社会を乗り切るには、そうした状況に対応できる人間力を強化することが必要である。こうした人間力を高めるために、「怒らない」「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」「先送りしない」という8つのテーマについて、著者の考え方・基本技法を紹介したのが本書である。各テーマの中で特に参考となった事項は次のとおり。

    「怒らない」
     怒るということは、単なる感情の発露、危険を避けるために行動を止めるための怒り、場を収めるための戦略的なお芝居の怒りと、3種類の怒りの種類がある。周りで怒っている人がいる場合でも、ただ怒られたことは嫌だと避けるのではなく、どの怒りの種類なのかを分析して対応を考えることが必要とのこと。もちろん、単なる感情の発露の場合は、避けることが肝要である。また、自分が管理職になった場合は、危険を避けるために行動を止めるとか、場を収めたり嘘をつかせないなどの場合については戦略的に怒るということも必要である。ただし、立場の弱い人に自分の立場の強さを背景に怒るのは絶対に避けるべきこと。また、怒りの感情が湧いた場合は、怒りの感情が湧いた原因(嫉妬、コンプレックス、焦り)などを客観的に分析して、対応することが重要であると著者は説く。こうした分析をし、感情を昇華させるには、代理経験として小説やドラマを見るなど、芸術に触れることが有効であるとのこと。

    「びびらない」
     人間の社会では、びびらせて行動をとらせるということも多々あるもの。資本主義経済においても、健康などに対する不安をあおって商品を売るといった、フィアメッセージが横行している。不安になったりびびったりすると、冷静な判断ができなくなる。こうした中で「びびらない」胆力を身に着けるには、相手や対象を知り、相手の本質や意図を見極めることが重要である。人間はよくわからないもの、不可解なものに対してびびるものである。このため、相手や対象を知り、相手の内在的論理を知れば、相手が何を言おうが、どんな威圧をしてこようが、冷静に対応できるようになる。また、小説や映画などで代理経験を積むことも有効である。代理経験も含めた経験を重ねると、びびるような場面に出くわした時でもその状況を分類・類比し、今後の展開などを予測することができ、落ち着いて対応することができる。
     他方、理屈や道理が通じない相手や、自分の能力では対応できないことには、びびって撤退するしかない。撤退のラインを見極めるためには、普段から負荷をかけて自分の能力の限界を知っておくことも重要である。

    「飾らない」
     飾るというのは、自身の優越欲求や承認欲求を満たすための行為である。こうした欲求は、封建制から近代社会へ移り変わる中で、身分の代わりに競争をして自分の位置を確かめるという社会に移り変わってきた中で強化されてきたものである。これらの欲求を利用されると、マインドコントロールされることもあるので注意が必要。仕事の局面などでは、自分の実力を素直に認め、分からないことは分からないと伝えて教えを乞うという態度が必要であり、そうした真摯な態度が仕事における飾らない関係を作ることにつながる。そして、飾らないためには、自分の素の軸(国や民族、故郷や家族、信条、哲学、など)がしっかり分かっていることが必要である。

    「侮らない」
     人間は、上手くいっているとき、得意なことをしているときほど、人や仕事を侮り、取り返しのつかない失敗をしてしまうものである。このため、侮って失敗した事例を扱った書を読むことで代理経験を積むということや、内省ノートをつけて周囲からの指摘を客観的に分析して自分の侮りに気づく努力をするということが必要である。

    「断らない」
     断らないとは言い方を変えれば、受け入れるということである。自分とは異質な事柄を受けいることは、自分の価値観が棄損されなどのリスクも伴うが、異質な存在や価値観と触れることで、タフさや可能性を広げることができ、成長のきっかけとなる。

    「お金に振り回されない」
     資本主義社会の特性を知り、お金に振り回されないスタンスを取ることが重要。

    「あきらめない」
     現代社会に通底する「あきらめない」という価値観は、西欧の目的論的な考え方に端を発し、日本では明治維新以降に定着した価値観である。「あきらめない」というからには、その目指す物事の完成形(終わり)が明確になっていることが必要である。そうした完成形が曖昧なままあきらめないでいると、執着の泥沼に陥り、身も心も破綻する。このため、何か目標設定をする時は、実現可能な完成形がイメージできるものにする必要がある。そうした、完成形の明らかな目標を複数設定し、期限を区切って取り組んでみることが、自分を管理する上で重要である。

    「先送りしない」
     決断・判断するリスクと、判断を先延ばしにするリスクを天秤にかけて、今判断するリスクの方が高いと考えているから先送りしてしまう。何を怖いと考えるか、リスクを冷静に合理的に比較することが必要。うつ病やその傾向のある人は、「もう終わってしまった」という「祭りの後」的な時間意識を持っている人が多いとのこと。この感覚が強いと、ある時点から先は何をやっても無駄だ、やっても仕方ないという気持ちになってしまい、何もできなくなるとのこと。こうした感覚は、完璧主義のかたくなさが極端に表れたものでもある。しかし、現実はかなりフレキシブルなところもあり、一つがうまくいっていなくても、べつのところで補えば、全体として何ら問題がないことの方が多い。こうした感覚の硬さをほぐし、取り除くことが、先送りしないための一つの心の持ちようである。

    (感想)
     社会で生きるとは、人と相対して関わって生きていくことであり、人と適切に関わっていくために必要なテーマのノウハウの詰まった本である。「怒らない」で説明のあった、怒りの種類を分析して対応する方法は、怒られて落ち込むしかできない傾向にある自分が、客観的に怒られたことを分析して、受け流す助けになると思う。「びびらない」で説かれた相手の内在論理を知り対応するということや、自分の能力を把握して対応するということが参考になった。「あきらめない」においても、やはり目標として適切な完成形を設定することの重要性が解かれていた。また、「先送りしない」で言われた「祭りの後」的な時間意識は非常に強いので、そうした感覚をほぐして一つがうまくいかなくても別のところで補うこともできる、まだ間に合うという感覚を身に着けていけたらと思った。
    全体を通じて、内省的に自分を客観的に振り返ること、読書や映画・演劇などの芸術のもたらす代理経験という効用を改めて認識することができた。何故、人間にとって「物語」「芸術」が必要なのかということも腑に落ちた。そして、今の自分が当たり前に持っている価値観や欲求も、社会の在りようと共に時代によって変遷しているものであるということが述べられており、自己を相対化するという視点を得ることができたのは大きな収穫であった。

  • ・おこらない →自分が何に怒っているのかを書き出す
    ・びびらない →相手を知る
    ・飾らない
    ・代理体験→読書や映画で体験する

  •  ここ最近、ウクライナにおけるクリミア情勢が緊迫しています。様々な見方があるとは思うのですが、どうにも日本国内での報道は「欧米の立場でしか伝えてくれていない」と感じることも多く。もちろんロシアの「力による現状変更」とのやり方を認めてはいませんが、どんな形であれ双方の立場からの「情報」がほしいな、と。そんなこともあったのか、ロシア情勢にイロイロな意味で通暁されている方のこちらを思い出しました。

     “中国が潜在的脅威だという見方は甘い。日本にとって、中国は顕在化した現実的な脅威である。”

     近未来の混乱を想定して、日本人が“生き残るためのノウハウ”をまとめた一冊となります。といっても、堅苦しい感じではなく、身近な例を題材にしながら、わかりやすく述べられています。

     構成は全てで8章、「怒らない」「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」「先送りしない」。その各章ごとに佐藤さんの推薦本も載っていて、ちょっとお得な気分にも。また、佐藤さんご自身の視点を俯瞰するにもちょうどよく、導入本的にも使えるかな、とも。

     “TPPの本質は対中国を睨んだ環太平洋諸国の経済・軍事同盟”

     クリミア問題に限らず、各国のエゴがぶつかり合い、権益担保いのために軍事衝突も辞さない時代に入りつつあると感じています。これは、まごうことなき“帝国主義時代”の再来ですが、、その中で日本はどう立ち回っていくべきか、そんなヒントがちりばめられているかと。

     古代ローマの例を見るまでもなく、古来より経済と安全保障は分かちがたいものです。先の大戦後、国防の意識が希薄なままで来れた日本が、むしろ特異な存在なのかなと、そんな風に感じた一冊です。

  • 人に強くなる極意として8つを挙げている。怒らない、びびらない、飾らない、侮らない、断らない、お金に振り回されない、あきらめない、先送りしない。どれも人に対する意識としては基本的なことだけれども、外交官として実績のある著者があえて主張するのだから面白い。エピソードを踏まえて主張しているので分かりやすい。すごくためになる。

  • 本書は「近未来、日本が大きな変化に巻き込まれることを想定したうえで、われわれ一人ひとりが生き残るには、どうすればよいかというノウハウを記している」(P3)
    実社会でうまくかわしていくにはどうしたらいいのか、元外務省に勤務していた頃の話を交えて経験豊富さからの極意を伝授。

    しかし、鈴木宗男事件で検察にとらえられていた時のことを話題にし、鈴木さんを裏切ることはできなかったなどと弁解がやたらと出てくるのが気になった。
    「もしも、検察の圧力に屈して嘘の証言をしていたら、拘置所を出た後も一生、鈴木さんの顔をまともに見られないし、スズキのバイクを見ただけで憂鬱になったかもしれない」(p186)と、義理堅いお人柄なのでしょうか。
    実体験の例として蒸し返したのでしょうけど、言い訳がましいのがなんとも…。

  •  近い将来に日本に何が起きるかと言うことを、筆者は2つ点を指摘する。

    ・グローバリゼーションの本格化
    ・国家機能の強化

     この二点に関しては筆者の他の著作に詳しい。特に二点目の指摘は代表作「国家の罠」に詳しい。


     弱肉強食の新自由主義がはびこる世界を生き残るには、個人として人間力を強化することが必要だ。その人間力を次の8つのテーマで記す。

    ・怒らない
    ・びびらない
    ・飾らない
    ・侮らない
    ・断らない
    ・お金に振り回されない
    ・あきらめない
    ・先送りしない

     読んだ中で思うことを書いていきますよ。

     まず、「怒らない」の章から。

     「怒らない技術」とか、イライラしないのが生きる上で大事、って本が一昔前に流行ったように思う。

     怒ると疲れるし、ストレスたまってよくない。俺だってブチ切れて怒鳴り散らすことなんて、めったにと言うか全くないよ。鷹揚な山中さんだよ。

     この怒りと言うもののパターンが次のように分析されている。

    ・神がかり的な怒り:突然に理不尽に怒り出す。情緒不安定なので、こんな人は避けるべき。

    ・人を守るための怒り:人を怒るところを違う人に見せることによって、実際にはその人を守るために怒っている。

    ・動きを止めさせるための怒り:人は怒鳴られることによって頭が真っ白になり動きが止まる。危険なことをやっている人を怒鳴りつけることで動きを止めさせる。

    ・ショートカットさせるための怒り:怒ることによって止まっていた状況を進めさせる。あの人が怒ってるから早くやろう、みたいな。

     怒らないことは重要だ。怒ってばかりの人からは人が離れていく。

     しかし、怒らなくてはいけないときに怒れないことは危険である。怒られなかったほうは「これでいいのか」と勘違いして、再びミスを繰り返す。

     できる人と言うのは頭がキレる。

     そこで怒らなければならない、なぜ自分が怒らなければいけないのか。

     それをわかったうえで怒るというのは大事だということがわかった。うん、重要。

     怒らなくてはならないときに怒れる人になりたい(と思った気弱な山中さんだった)。


     次に「侮らない」で少しコメントを。

     「侮らない」という言葉をみて、辻村深月「凍りのくじら」のセリフを思い出した。

     「あんまり人の脈絡のなさを舐めないほうがいい。
     どうしてそうなるのかわからないという原理、矛盾だらけの思考で人はあっさりと動くよ」

     あんまり人を侮っていると、なぜそうなるのかわからないことで人は反撃に回る。

     人も、会社も、組織も、国家も侮るなかれ。侮りは慢心を生み足をすくわれますよ。


     最後に「先送りしない」

     わかっちゃいるけど先送りライフ満喫中のワタクシです。

     資格の勉強するぞ!←続かない
     
     英語の勉強するぞ!←やらない

     これに関してはどうしても無理です。

     目標は複数設定し、期限を設けて、紙に書きだすこと、って言っても無理なものは無理だからしょうがない。

     そうやって俺の人生進んでいって、いつか後悔するんでしょうね、わかります。


     以上、そんなレビューでした。

     佐藤優の新書本は考えさせられること多く、新しい発見を得られるので、オヌヌメです。

  • いま何かしらうまく物事が進まない事に悩んでいるならば、手に取ってみたい良書。
    例えば「びびらない」の項。ビビっているのは対象のことをよく知らない恐怖心から生まれて来る感情。必要以上にびびらないようにするには相手を知ること。その相手のことを類推できるようになれば随分楽になる。本や映画にふれて代理経験しておけば冷静に客観的になれる。
    著者自身、鈴木宗男事件で拘置所に500日を超えて閉じ込められた経験があり、内容はすごくリアルである。

  • どちらかというと若い層向けに、社会で生きていくための心構えを説いた一冊。怒らない、びびらない、飾らない、侮らない、断らない、お金に振り回されない、あきらめない、先送りしないという8つのテーマに分け、生き方、働き方を自身の具体例を交えながら説明している。
    以前は著者については、圧倒的な秀才という印象があって、著書もそれをひけらかすように感じたものだが、最近の著書、例えば池上さんとの対談本などを読むと、やはり主張には筋が通っているし、学ぶところが多いと感じるようになった。本書は2013年の作品で若者向けということもあり、やや昔の印象を思い出させる語り口ではあった。

  • 日本が大きな変化になるにつれて、一人一人が世の中でいかにどう生き残っていくかをテーマに佐藤優さんの立場から語っている。各章は「怒らない」、「飾らない」、
    など8種類の「○○ない」でノウハウを学びます。
    「標準的な努力ができる人なら確実に実行できる」と書かれていますが、外務省出身ということもあり、所々に政治や外交にまつわる話が出てくるため、なんとなく親近感がわかず、距離を置いてしまいました。
    各章では、「こうしたほうが良い」と提言したあと、その根拠として、著者の経験談を交えて展開していきますので、特に心理的・医学的なものはありません。
    わかりやすい文章ですが、個人的にはこういう考え方もあるんだなということで参考になればと思いました。

  • さすが佐藤先生。
    最近買ったと思ってたが四年前の本だし、結構前に買っていた。色々示唆に富んだ実用書

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著者プロフィール

佐藤 優(さとう・まさる)
1960年東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了。外務省に入省し、在ロシア連邦日本国大使館に勤務。その後、本省国際情報局分析第一課で、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕、起訴され、2009年6月執行猶予付有罪確定。2013年6月、執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『人をつくる読書術』(青春出版社)、『勉強法教養講座「情報分析とは何か」』(角川新書)、『僕らが毎日やっている最強の読み方』(東洋経済新報社)、『調べる技術 書く技術』(SB新書)など、多数の著書がある。

「2022年 『世界史の分岐点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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