心理学をまじめに考える方法:真実を見抜く批判的思考

  • 誠信書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784414306316

作品紹介・あらすじ

なぜ、心理学が人文科学でありながら、他領域科学よりも一段低く見られてしまうのか。それは、大衆の心理学という学問への誤解が大きい。本書はこの誤解をとくべく、人間の行動について心の動きからアプローチする“まっとうな”学問である心理学を、真正面より論じたテキスト。
原書は第10版と版を重ね、本書を読むための「手引書」が刊行されるほど、アメリカでは心理学講座のバイブル的なテキストである。特に、職人技やカリスマ性を誇示した疑似心理学に騙されないため必須となる批判的思考を学ぶために、医学・社会学・経済学・心理学分野の有名な調査研究を振り返り、出された結論のどこが正しく、どこが誤っているかを示しながら解説をする。

感想・レビュー・書評

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  • 心理学の科学性、というか科学志向性を考えるために良い本だと思います。心理学を学ぼうとする人って「心理学はこころの科学です」って言われてきたと思うのですが、その科学性がなんなのか、いまいちよくわからないと思うのです。というか、その点をきちんと教えられていない。この本は、心理学者が考えているところの心理学の科学性について紹介したものです。心理学科の学部生なんかは読んでおくと研究法の授業なんかの勘所がつかめるようになるのではないでしょうか。

  • 医学部分館2階心理学:140/STA:https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410163406

  • 2019I222 140/S
    配架場所:C3

  • *****
    心理学を学ぶ学生に必要なのは,心理学的情報を独力で評価できるために必要な批判的思考をしっかりと教育されることなのです。(p.vii)

     悪名高きフロイトは,心理学という学問分野に対する一般の人々の理解に非常に大きな影響を及ぼし,多くの誤解をもたらしました。(p.1)

    この事態[フロイトの重要性が誇張されすぎていること]をさらに悪化させているのは,まずもってフロイトの探究方法が,今日の心理学者の研究方法を典型的に示してはいないということです。それどころか,フロイトの探究方法を学ぶことで,心理学研究について完全に誤った印象がもたらされてしまいます。(p.2)

    心理療法の歴史の研究者が述べるとおり,「フロイトを科学者と呼ぶなら,彼が広めたものはヘンテコな科学ということになる。…精神分析学には理論と仮説があるが,それを検証するための実験的な観察方法が欠如している」(Engel, 2008, p.17) のです。(p.2)

    要するに,フロイトは一つのデータベース(事例研究と内省)についての入念な理論を打ち立てはしましたが,それは支持されるに十分なほど堅牢なものではなかったのです。フロイトは複雑な理論を構築することに専念しましたが,その理論が信頼できる,再現可能な公道上の関係群のデータに基づいている,ということを保証しませんでした。これらは現代の心理学者なら皆やっていることです。つまり,フロイトの研究手法になじみを感じるなら,それは現代心理学を理解するうえで,重大な妨げになるのです。(pp.2-3)

    理論的にまとまっていないことを理由に,心理学がこれまで達成してきた科学的進歩を誹謗中傷する批判家もいます。そうした批判は,真の科学はすべて,一つの壮大な統一的理論を持たなければならないという語階から生じるものです。それが誤解であると言えるのは,その他の学問領域でも,首尾一貫した概念構造を欠いたものが多く存在するからです。(p.6)

     簡単に言うと,独立した学問分野としての心理学の正当性を示すものは,実際には二つしかありません。第一に,心理学は,人間や動物のありとあらゆる行動を,科学という手法で研究しているということです。第二に,この心理学の知見から導き出されるさまざまな応用も,科学に基づいているということです。こうしたことが当てはまらなければ,心理学の存在理由は皆無でしょう。(p.7)

     心理学は一つの学問領域として勝ち目のない,八方塞がりの状況に置かれています。一方で心理学を科学と呼ぶことを拒否し,心理学者が行動についての実証的な事実を確立できるということを認めない人がいます。他方,心理学が明らかにする事実によって自らの信念が脅かされるのを恐れて,人間行動のある領域における探究を拒絶する人もいます。スキナー学派の心理学者は,このような矛盾した批判にずっと取り組んでいます。たとえば,批評家は,行動主義者が定式化した強化の法則は,人間行動に応用することができないと主張します。と同時に別の批評家は,その法則が,人間に対する硬直化した,非人道的なコントロールに利用可能であろうと懸念を抱いています。このように行動主義者は,彼らの見出した法則の応用可能性を否定する批評家や,いとも簡単に応用できることを告発する批評家の双方に直面しているのです!(p.24)

    現在の精神分析理論は,現代心理学の中で一理論としてというより,文学的な想像力を刺激するものとして,極めて大きな役割を果たしています。精神分析理論が心理学の中で地位を失ったのは,ある意味で,反証可能性基準を満たせなかったことにその原因を見出すことができます。(p.31)

    事実,精神分析的な解説はあらゆることを説明しました。ただし事後的にです。しかし,精神分析理論が提供する解説は,理解という名の幻想,つまり分かった気になる錯覚を生んだだけでした。事後的にあらゆる事象を説明しようという試みによって,いかなる進歩も閉ざされてしまいました。進歩とは,ある理論が,すべての予測はできないけれども,そのかわり世界に関するある事柄を事後ではなく事前に教えてくれるような,ある特定のことを予測するときにだけ起こるのです。そうした理論から導かれる予測は,間違っている場合もあるにせよ,それは強みにこそなれ弱点ではないのです。(pp.33-34)

    すなわち,科学の過程で間違いを犯すのは当たり前のことで,むしろ,科学の進歩にとって本当に危険なのは,自分の信念を,それが間違っているかもしれないことが明らかになる状況に晒すのを回避しようとする,人間の自然な傾向であるということです。(p.40)

    概念を観察可能な事象に関連づけることによって,概念が公共のものとなり,ある個人の感覚や直感から引き離され,測定可能な操作を実行できる人はだれでも検証できるようになります。(p.51)

    物理学の場合は,理解を妨げるものは自分自身の無知にあると記者にも分かります。しかし主題が心理学の場合,自分の理解不足の責任が心理学者にあるかのように振る舞うのです。(p.62)

     結論に達する前に比較情報を得る必要性を考える能力は,明らかに自然に身につくものではありません。ですから,あらゆる科学分野の訓練で,統制群を作ることの重要性を強調した方法論を学ぶ課程が含まれるのです。統制群,すなわち重要な因子がないこと以外は実験群とまったく同じように取り扱われるグループは「目立たない」ため,このようなグループがどんなに重要かを理解することは難しいのです。(p.114)

    (ある実際的な問題を解決するように科学者に命じることで)繰り返し科学の方向性を操作しようとすることは,結局は科学を発展させるよりも,邪魔することにつながります。皮肉なことに,多くの場合,実際的な応用への道筋は非常に予想しにくいため,科学者が実際的な問題だけの解決を考え「他のもの(基礎研究)」から目を背けてしまうと,結果的にまったく非実用的で近視眼的になってしまうのです。(p.140)

    一般の人々が統計的に考えることができないことに,おそらく最も苦しんでいるのが心理学です。しかし,あらゆる学問分野の中で,その確率的推論能力の特質に関する研究のほとんどは,心理学の領域でなされているのです。(p.198)

    ロールシャッハテストに関する信念は,幻相関の現象から生まれています。臨床家は観察された反応パターンの中に,実際に関係が見られるからではなく,関係があると信じているがために反応パターンの関係を見出すのです。(p.216)

     臨床的予測は,統計的予測への非常に意味のある付け足しに見えるでしょう。しかし,たった一つだけ問題があります。臨床的予測は役に立たないのです。
     臨床的予測が役に立つには,臨床家がクライエントとの経験やクライエントに関する情報を通して行った予測が,クライエントの情報を簡素にコード化し,量的データの組み合わせ処理を最大限活用するような統計的手続きを用いた予測よりも,優れていなければなりません。つまり,臨床家は臨床経験を通して,研究が明らかにした関係性の寄せ集めを超えた高みにまで到達できる,という主張です。それゆえ,臨床的予測が効果的だという主張は簡単に検証できます。しかし,残念ながらその主張を検証した結果,誤りだと認められました。(pp.226-227)

     臨床家がクライエントの情報を与えられてその行動を予測するように求められた場合と,同じ情報が,研究により明らかにされた統計的な関連性に基づいて開発された数式によって数量化され,処理された場合では,さまざまな臨床領域で常に数式のほうが優れていました。それは,統計的予測が臨床家の予測よりも正確なことを意味しています。実際,臨床家が統計的手法による多くの情報を利用できたとしても,校舎のほうが優れていたのです。それは,臨床家が統計的数式で用いる場合と同じ情報に加えて,クライエントとの個人的な接触や聞き取りから情報を手に入れても,臨床的予測はまだ,統計的手法の正確さには及ばないことを意味します。その理由はもちろん,数式は正確かつ矛盾なく情報を統合するからです。この一貫性と呼ばれる容易は,臨床家が非公式に集めた資料から得られる情報のあらゆる優位性を凌駕するのです。(p.227)

    …臨床家は,彼らの経験が「臨床的洞察」を与えてくれるので,クライエントの資料を数量化した情報から得られるものよりも,さらに優れた予測を得られるだろうと信じています。実際には,彼らの「洞察」は存在せず,公的な統計的情報だけをもとにした場合に比べて,誤った予測を導くことになるでしょう。(p.228)

    第一に,私たちは統計的手法を用いることで,より正確な予測を得ることができます。第二に,統計的なアプローチは,統計的手法が誰でも知ることのできる知識であるという点で,臨床的予測よりも優れています。つまり,その利用,修正,批判,あるいは反論のすべてに対して開かれているのです。これに対して,その判断が個別的で,特異的であると主張されることを理由に,判断する人の力量に頼った臨床的予測を用いることは,公的な批判の影響を受けないことを意味しています。(p.231)

  • ブクログのレビューで良い感想がありました。引用させていただきます。

    「心理学の科学性,というか科学志向性を考えるために良い本だと思います。」
    FROM gsd9720さんのレビュー

    私も同じ感想を持ちました。

    本書では,心理学がどこまで科学的か,しかしなぜ科学として(他の科学のようには)見てもらえないのか,について説明されていました。

    心理学は,その方法を科学から持ち込んだという歴史があります。ですので,心理学の方法がいかに科学的かを説明する本書は的を射ていると思います。現在用いられている心理学の方法はまさに「科学」でしょう。

    しかし,心理学が対象するモノ(つまり,人間の心)は,科学の対象とは違います。(自然)科学は人間(研究者)の観測が対象とするモノ(研究対象)に影響を与えることはありませんが,心理学は不可避的にそれが起こる場合があります。

    ※ (自然)科学における観測問題は,人間の観測がモノに影響を与えているのではなく,モノの振る舞いを人間がより正確に捉えられるようになった結果としての現象であると私は考えています。

    そのような「対象とするモノ」の違いがあるにもかかわらず,方法の科学性をもって心理学を科学であると宣言することは,私には一定の違和感があります。

    たとえば,煮物をつくるときに鍋を使いますが,野菜炒めを作るときにはフライパンを使うと思います。このときの,鍋かフライパンか,が方法です。もちろんフライパンで煮物を作ることもできますが,もっとも美味しい煮物を作ることができるのは鍋であろうと思います。

    すなわち,心理学が対象とする人間の心にはそれを捉えるために科学の方法以外の適切な方法があるのではないか,その方法をきちんと見つけ出せたときに,心理学ははじめて「科学」になるのではないかと思います(そのときの「科学」が自然科学的かはわかりませんが)。

    心理学が対象するモノは多様です。したがって,中には,従来の(そして現在に続く)心理学的方法がうまく適用できるところもあると思います。他方,それがうまくいかない分野もあると思います。

    ヴントが実験心理学と民族心理学を構想したように,自然科学的心理学と人文科学的心理学とがうまく共存したとき,心理学ははじめて人間科学として素敵な学問になるのではないかと思います。

    その意味で,本書は,自然科学的心理学の方向性について考えさせてくれるもので,また,胡散臭い「エセ心理学」と(自然科学的)心理学を見分ける視点を養ってもくれるものでした。

  • 原題:How to Think Straight About Psychology 10th edition
    著者:Keith E. Stanovich
    監修:金坂弥起

    【メモ】
     ここ(下記リンク先の読書案内)を読んでいて、本書に辿り着きました。
    http://www.socialpsychology.jp/jssppr/category/jssp/books/


    【書誌情報】
    人間について心の動きよりアプローチする“まっとう”な学問である心理学を真正面から論じた、批判的思考を身に付けるためのテキスト

    ジャンル 心理学一般
    出版年月日 2016/07/25
    ISBN 9784414306316
    判型・頁数 A5・320ページ
    定価 本体2,700円+税

     なぜ、心理学が人文科学でありながら、他領域科学よりも一段低く見られてしまうのか。それは、大衆の心理学という学問への誤解が大きい。本書はこの誤解をとくべく、人間の行動について心の動きからアプローチする“まっとうな”学問である心理学を、真正面より論じたテキスト。
     原書は第10版と版を重ね、本書を読むための「手引書」が刊行されるほど、アメリカでは心理学講座のバイブル的なテキストである。特に、職人技やカリスマ性を誇示した疑似心理学に騙されないため必須となる批判的思考を学ぶために、医学・社会学・経済学・心理学分野の有名な調査研究を振り返り、出された結論のどこが正しく、どこが誤っているかを示しながら解説をする。
    http://www.seishinshobo.co.jp/book/b238523.html

    【簡易目次】
    まえがき
    謝辞

    第1章 心理学は元気です(それに,ちゃんと学問やってます)
     フロイト問題
     現代心理学の多様性
     科学の統一性
     では,そもそも科学とは何ぞや?
     心理学と民俗知:「常識」の問題
     心理学はまだ若い学問
     本章のまとめ

    第2章 反証可能性:頭の中のリトルグリーンメンをやっつける方法
     理論と反証可能性基準
     科学における誤り:真実に近づくために
     本章のまとめ

    第3章 操作主義と本質主義:「でも先生,それってそもそもどういう意味?」
     なぜ研究者は本質主義者ではないのか
     心理学における操作的定義
     本章のまとめ

    第4章 支持証言と事例研究でのエビデンス:プラセボ効果と天才マジシャン
     事例研究の位置づけ
     なぜ支持証言に価値がないのか:プラセボ効果
     「鮮明度」の問題
     支持証言が疑似科学の道を開く
     本章のまとめ

    第5章 相関関係と因果関係:パンを焼くトースターで妊娠を避けられるか?
     第3の変数問題:ゴールドバーガーとペラグラ
     方向性の問題
     選択バイアス
     本章のまとめ

    第6章 事象の統制:賢馬ハンスの事例
     ジョン・スノウとコレラ
     比較,統制,操作
     本章のまとめ

    第7章 「人為性」批判と心理学:「でも,それは現実の世界ではありません!」
     なぜ自然状態である必要がないのか
     心理学的理論の応用
     本章のまとめ

    第8章 収束証拠の重要性:アインシュタイン症候群を回避するために
     連結性原則
     収束証拠:弱点を伴いながら進歩すること
     科学における合意形成
     絶望しないための助言
     本章のまとめ

    第9章 複合原因の問題:「特効薬」に惑わされて探し求めること
     交互作用の概念
     単一原因の説明をしたくなる誘惑
     本章のまとめ

    第10章 確率的推論:人間の認知のアキレス腱
     「〇〇な人」統計
     確率的推論と心理学に対する誤解
     確率的推論についての心理学の研究
     本章のまとめ

    第11章 心理学における偶然の役割
     偶然の出来事を説明しようとする傾向
     偶然と心理学
     誤りを減らすために誤りを受け入れる:臨床的予測と統計的予測との対立
     本章のまとめ

    第12章 学問の世界の哀しきコメディアン
     心理学のイメージにまつわる問題
     心理学と他の学問領域
     心理学にとっての最悪の敵
     皆誰でも心理学者?:暗黙の行動理論
     科学的心理学への抵抗の起源
     おわりに

    文献
    邦訳文献
    監訳者あとがき
    人名索引
    事項索引

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著者プロフィール

Keith E.Stanovich|トロント大学発達・応用心理学部門応用認知科学部長

「2016年 『心理学をまじめに考える方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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