私たちを分断するバイアス マイサイド思考の科学と政治

  • 誠信書房 (2024年2月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (252ページ) / ISBN・EAN: 9784414306392

作品紹介・あらすじ

正しい知識と情報を得て、熟慮をすれば同じ結論に至るはず……。
残念ながら、実際にはそのようになっていない。

この理由をマイサイドバイアスという観点から紐解いたのが本書である。
人々は自分が持つ信念に合致するようにエビデンスを評価し、自分は常に正しいと考えてしまう。熟慮をしても逃れられないこの傾向は、既知のバイアスとは違って非常に厄介だ。
本書はこのバイアスの特徴、影響、食い止める方法などを解説し、分断をもたらす人々の思考を明らかにする。

原書名:The bias that divides us: The science and politics of myside thinking

感想・レビュー・書評

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  • ハデなところが控え目で、実はかなり硬い感じ。横書きもこうして見ると読みにくいねえ……

  • 本文ではマイサイドバイアスという言葉を多用しているが、バイアスの認知の問題である。科学と政治のサブタイトルがあるが、それは後半のことであるので、バイアスを学習したい学生には役立つであろう。しかし、著者の実験や多くの実験が引用されているものの、図やグラフがないので少し分かりづらいところもあるから、この本に図を入れるだけで、学生ももっと読みやすいと感じるであろう。

  • マイサイドバイアスが意見の領域では心の肥満症をもたらすことを認識する
     自分の信念に対してより懐疑的に考えるようにさせることは、(信念が確信に変わるのを防ぐことによって)その人が示すマイサイドバイアスを減じさせる傾向があるだろう。自分の信念は、それ自体が複製的な利益をもつミーム複合体であることを理解すれば、信念に対する懐疑心を養うことに役立つであろう(第4章参照)。私たちの脳に居座っているミーム複合体は、それに敵対する考えを取り入れない傾向がある。なぜなら、その敵対する考えは、現在の考えと取って代わってしまうかもしれないからだ。
     第4章で見てきたように、新しい変異対立遺伝子が協力者でない場合には、生物は遺伝子的に欠陥を持つことになる傾向がある。ミームの論理は少し異なるが、同じようなことである。ミーム複合体内で相互に支持し合う関係にあるミームは、矛盾するミームが脳のスペースを獲得するのを防ぐ構造を形成しやすいだろう。同化しやすく、以前から存在するミーム複合体を強化するようなミームは、非常に容易に取り込まれる。ソーシャルメディアも従来のメディアも、深い意味においてこの論理を利用してきた。私たちは今、同化しやすい、性質の合うミームを提示するように特別に構築されたアルゴリズムによって送られる情報を浴びせかけられている(Lanier、2018;Levy、2020;Pariser、2011)。そうして、私たちが収集したすべての好都合なミームは、単純に検証可能な信念を確信に変えてしまう傾向のあるイデオロギーへと凝集していくのだ。
     以前の著書、『ロボットの反乱』(Stanovich、2004)で、私は、自由市場が遺伝子とミームの両方の熟慮的ではない一時的欲求にいかに奉仕するようになるかという同じような論理を描いた。先史時代に生き残るよう設計された遺伝子のメカニズムは、現代において不適応となりうる(Li van Vugt、& Colarelli 2018)。例として、脂肪を貯蔵し利用するための私たちの遺伝子メカニズムは、それが生き残りに重要であった時代に進化した。しかし、これらのメカニズムは、マクドナルドがあらゆる街角にある技術社会に生きる現代の人々のサバイバル欲求には、もはや役立たない。市場の論理は、脂肪分の多いファストフードを好むことが、間違いなく便利であることを保証している。なぜなら、そうした嗜好は普遍的であり、安価に満たすことができるからである。市場は、無批判な一時的選好を満足させることの利便性を強調する。
     市場は、私たちが既に持っている信念と一致するミームに対するあなたの嗜好とまったく同じことをするのだ。そして、市場は、そうしたことを安価に、容易に入手できるようにする。例えば、FOXニュースのビジネスモデル(ニッチなミーム市場を狙う)は、右派・左派の両方の他のメディア、CNN、ブライトバート、ハフポスト、デイリー・コーラー、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・エグザミナー誌などにも広がっている。この傾向は、2016年の米国大統領選挙以降、加速している。ニューヨーク・タイムズ紙は、選挙で負けた側の有権者が、自分の信念を共有するメディアに群がっていると表現している(Grynbaum & Koblin、2017)。ある有権者は、MSNBC(※ニュース専門局)にますます惹かれるのは「見ていて補強されるから。私が女性の行進に参加して行進する理由と同じです。自分が信じているから、同じものを信じている他の人たちに囲まれていたいのです」(Grynbaum & Koblin、2017)と述べている。活動家で作家のグロリア・スタイネムは、「私がMSNBCを見るのは、ジョイ・リード、クリス・ヘイズ、レイチェル・マドウ、ローレンス・オドネルをジャーナリストとして信頼しているから、賛同して見ているのです。……ジャーナリストの仕事はバランスを取ることではなく、正確であることです」と電子メールに書いた(Grynbaum & Koblin、2017)。
     要するに、私たちの体が利己的な複製子のサバイバルの論理を持つ遺伝子によって作られているために、体によくない脂肪の多い食べ物を貪るがごとく、文化的複製子も同様のサバイバル論理を持つので、私たちにすでにある信念に適合するミームを貪るようになっているということである。医学的に、米国で脂肪を含む食物の過剰消費による肥満症が蔓延しているように、私たちは気の合うミームを過剰消費することで、同じようにミーム的肥満症になっているのだ。複製子の1組は、私たちを医学的危機に導いたが、もう1組は、コミュニケーションにおけるコモンズの危機を招き、私たちはマイサイドバイアスにつながる多くの確信を持ってしまうために、真実に収束することができないでいる。(Kahan、2013、2016;Kahan et al.,2017)。そして、自己複製するミーム複合体が自分とは異なるミームを拒絶するために、私たちの信念ネットワークに一貫性がありすぎて、課題にマイサイド的確信を持つのである。
     このような心の肥満の流行に対する解毒剤は、自分の信念には自分の利益があることを認識し、この洞察を利用して、自分と自分の信念の間に少し距離を置くことである。その距離によって、確信のいくつかが検証可能な信念に変化するかもしれない。信念が確信ではなくなるほど、私たちはマイサイドバイアスを示すことが少なくなるだろう。

    「あなたがその方向に向けて考えたわけではない」と気づくことで、信念を自分の所有物扱いしない。
     この節のタイトルは、2012年7月、オバマ大統領が選挙戦で語った有名な〝You didn’t build that〟(あなたがそれを作ったわけではない)を模したものである。「あなたが成功してきたとして、自分だけでそれを成し遂げたのではない。……自分が賢いからだと考える人には驚かされたものだ。……あなたが成功したとしたら、あなたの人生に沿って、あなたに支援を与えていた誰かがいたはずだ。あなたの人生のどこかに偉大な教師がいたのだ。インターネットは、勝手に生まれたものではない。政府の研究がインターネットを作り出し、すべての企業がインターネットからお金を稼げるようになったのだ」とオバマ大統領は語った(Kiely,2012)。大統領の発言は、この党派的な時代に論争を巻き起こしたが、もちろん、議論の余地はないはずだ。ここでの要点は非常に明確で、事実、社会心理学の文脈で確立されているものである。心理学者は「基本的帰属錯誤」(Ross,1977)として知られる現象を研究してきた。そこでは人は、自身の行動において状況からの決定因を過少申告しがちだということである。
     オバマ大統領の言を模した私のバージョンは、私たちの強い信念(確信)に拡張したものであり、それは彼のひいた例よりもさらに深いところまでいく。私たちに住まう信念は、他の人の考えと相互作用した結果である。私たちの生涯の経験の産物なのだ。しかし、何十年にもわたる認知科学の研究により、私たちの情報処理の多くは、私たちの意識外で行われることがわかっている。特に、新たな情報が脳内の既存の生物学的基質とうまく融合する場合、その傾向は事実となる。私たちは、意識的な推論によって、自分の信念に至るまでどれだけ意識的に考えてきたかを過大評価する傾向がある。自分の富がいかに自分独自の創造性と努力によるものであるか過大評価するビジネスマンのように、多くの人は、自分の強い意見や確信に到達するのに、どれだけ意識的に考えてきたかを過大評価する傾向がある。
     この洞察を十分に処理することで、私たちは、党派的な起源を持つ確信ではなく、新しいエビデンスに検証可能な信念のみを投影するという戒めを、より容易に聞き入れることができるようになるかもしれない。確信が所有物でなくなれば、新しいエビデンスに不適切に投影される可能性は低くなる。自分が意識的に理屈上そうなったのではないことに気づけば、自分の信念に所有感をあまり抱かなくなるだろう。しかし、この点から何が帰結しないかを理解することも重要である。第一に、自分の確信に至る道を考えなかったということは、その確信が無意味であることを意味しない。それどころか、あなたが自分の信念を大切にするのは、それなりの理由があるからだ。実際、あなたの信念は、あなたの行動的/心理的気質を構成する生物学的基質を反映しているだろう。また、あなたの信念は、家族のなかでの経験、仕事での経験、恋愛の経験など、あなたの人生経験を反映しているだろう。これらのことすべては、あなたにとって重要な意味をもたらし、あなたの一部をなすものである。しかし、あなた側での思考を必ずしも反映したものではないことを理解することが大切である。あなたの現在の信念は、あなたの人生の大切な一部であるが、それでもそれをあなたが意識的に選んだものだと考えて、価値づけることをしてはならない。

  • ふむ

  • 【書誌情報】
    原題:The bias that divides us: The science and politics of myside thinking
    著者:Keith E. Stanovich
    訳者:北村英哉
    訳者:小林知博
    訳者:鳥山理恵
    出版社 : 誠信書房
    ジャンル:社会心理学
    出版日:2024/02/15
    ISBN:9784414306392
    判型・ページ数:A5 ・ 252ページ
    定価:2,970円(税込)
    https://www.seishinshobo.co.jp/book/b10046199.html

    【簡易目次】
    序文
    謝辞

    第1章 マイサイドバイアスの多様な顔
    第2章 マイサイド処理は、非合理なのか
    第3章 マイサイドな考え方──例外的なバイアス
    第4章 人々の確信はどこから来るのだろうか──マイサイドバイアスを理解することの意味
    第5章 認知エリートたちのマイサイド・ブラインドネス
    第6章 マイサイドバイアスをどうするか


    引用文献
    訳者あとがき
    索引

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著者プロフィール

Keith E.Stanovich|トロント大学発達・応用心理学部門応用認知科学部長

「2016年 『心理学をまじめに考える方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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