性暴力の理解と治療教育

著者 : 藤岡淳子
  • 誠信書房 (2006年7月1日発売)
3.75
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784414400281

性暴力の理解と治療教育の感想・レビュー・書評

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  • 性犯罪の治療に関する専門家が、性暴力の理解、アセスメント、治療、再犯防止、回復等をわかりやすく説明。
    性暴力は治療(認知行動的アプローチ等)が必要ということを知らなかったので驚いた。
    認知の歪み、感情交流の困難さ、自己概念と対人関係の不適切さ。
    相応の時間とエネルギーを要し、単に薬を飲めばよいといった魔法のような解決法はないというところに納得。

  • 後半はワークブックになっている。

  • 司法・矯正の心理臨床で活躍している著者による、性犯罪(性加害)児・者への治療教育的なアプローチがまとめられた本です。
    「性暴力」とはなにか、という定義から始まり、それらをどう理解するかという視点を提示し、それに則った治療プログラムを紹介する。とても論理的にまとまっていて分かりやすいのですが、この中で特に注目したいのは「性暴力は通常の性行動とまったく異なるようなものではない」という指摘です。

    合意の上での愛撫・性交→セクハラ→わいせつ電話・覗き→痴漢→強姦→快楽殺人

    これらの間にあるのは、「暴力性」そして「合意性」の差異だけであり、すべて同一次元上で捉えることができる。この「性暴力スペクトラム」とも名づけられそうなモデルは、性加害児者に対してどう対応したらよいのかということを考える上で、とても重要な示唆を与えてくれます。つまり、彼らの認知・感情・行動から、暴力性を取り払えるようなアプローチをすればよい、と。性暴力へのスパイラルに入りそうなサインを自分で気づけるようにすれば良い。自分で気づけなくても、それを指摘してくれる援助者のそばにいればよい。気づけたらそれを止められるような行動をとればよい。自分の行動をとめてくれるように周囲に援助を求めればよい。そういった、行動の選択のスキルを身につけさせるという視点は、まさに認知行動的アプローチそのものだと感じます。
    そして著者は言います。そのときに重要なのは、加害児者の治療という視点と、社会秩序の防衛という視点の両方を、治療者が持っていなければならない、と。性加害児者の多くは、子ども期に家族とのアタッチメント形成の不全や被虐待体験といった、発達上のつまずきを抱えているのですが、それらを治療の中でどう扱っていくのかが非常に難しいように感じます。加害者の根底にある被害感に焦点を当てることは、自身の加害行為を正当化する口実を与えてしまうかもしれない。しかしそれを扱わなければ、再発防止のための治療は非常に困難になってしまう。本書の中にあるモデルはあくまで答えの一つであり、矯正という枠組みの無いところでこれを用いるのはとても不可能だと思わざるを得ません。「過去の体験は現在の行動に影響を与える。しかし過去の体験に現在の行動を支配させてはならない」。言葉で言えばこんなに簡単に表現できるのに、それの実現は途方も無い作業に思えます。
    本書の基本的なスタンスは、司法領域においてこれまで主流だった「応報的司法」、つまり犯罪→刑罰形式の一辺倒ではなく、社会秩序の防衛のために加害者を治療する「修復的司法」の重要性を謳ったところにあります。しかし、刑の厳罰化が進む現在にあって、この考え方が広く受け入れられるとは、私にはとても思えません。個人的な予想では、厳罰化しても犯罪抑制の効果が期待されるほどにはあがらないことに気づきはじめ、修復的司法の概念が国民のコンセンサスを得るまでには、あと20年はかかるでしょう。とはいえ、それまでの間にできることはきっとたくさんあるはずです。社会にも、そして、私自身にも。

    (2009年2月入手・3月読了)

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