野の医者は笑う: 心の治療とは何か?

著者 :
  • 誠信書房
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本棚登録 : 158
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784414400960

作品紹介・あらすじ

ふとしたきっかけから怪しいヒーラーの世界に触れた若き臨床心理士は、「心の治療とは何か」を問うために、彼らの話を聴き、実際に治療を受けて回る。次から次へと現れる不思議な治療! そしてなんと自身の人生も苦境に陥る……。それでも好奇心は怪しい世界の深奥へと著者を誘っていく。武器はユーモアと医療人類学。冒険の果てに見出された心の治療の本性とはなんだったのか。「心が病むってどういうことか?」「心の治療者とは何者か」そして「心が癒やされるとはどういうことか?」底抜けに楽しく、そしてほろりとくるアカデコミカル・ノンフィクション!

感想・レビュー・書評

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  • 「野の医者」とは、国家資格を持った医師ではなく、民間で心や身体のヒーリングを行っている方々。
     沖縄にはそのような方々が多いらしい。
     沖縄の病院で勤務していた臨床心理士の著者(京大大学院出身)はトヨタ財団の研究助成プログラムに採用され、野の医者の体験取材・フィールドワークを開始する!

    「相対化です!」
    とイインチョーが目を見開いて叫びました。
    「権威や制度になっているものを相対化しようとしているんですね。そうやって当たり前の価値を揺らがせようとしているわけです。それは確かに新しい価値を生もうとする学問的行為です」

     
     華々しく始まったのはいいですが、著者自身にも人生の危機が訪れる!
     勤務していた病院を辞職することになり、求職活動も行う羽目に。
     本書では野の医者の体験レポートと著者の求職活動がハイテンションの同時進行で描かれています。

     
    「時代は笑える学術書です!アカデミックとコミカルを掛け合わせたアカデコミカル・ノンフィクション、これですよ!一山当ててやろうじゃありませんか!」
    と編集者に宣言したようですが、確かにその目論見は成功しているようです。
     予想外のことに著者の求職活動の要素も加わり、エンタメサスペンスの要素も加わっています。
     野の医者の怪しげな治療を面白おかしく描写する一方で、学術的に鋭い考察も行われていて、返す刀で著者が拠って(依って)立つ臨床心理士という立場を考えるという。笑うところは笑って押さえるところは押さえています。
     そして最後はほろりとさせる。まるで映画のようです。
     しかし映画がハッピーエンドで終わったとしても、登場人物はそれで終わりではない。その後の人生を送らなければいけないのです。むしろそれからが始まりとも言えます。
     幸い著者は立派に一冊の本を完成させ、安定した大学常勤講師の立場を得ることができました。 
     著者の創設したアカデコミカル・ノンフィクションというジャンルの続編を読んでみたい。
     しかし本書のようなハイテンションで八方破れのような研究と文体は、ある種求職活動中の異常状態だったからこそ可能だったのではないかとも思えます。
     研究も著書も一期一会な面があります。
     本書は著者・東畑さんが沖縄で求職活動を行っていた時期だからこそ書けた唯一無二の書ではないでしょうか。
       http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20180629/p1
       http://iching.seesaa.net/article/460262543.html

  • 家入さんのオススメ

  • めちゃ面白い一冊。
    何かを信じて笑って生きる。
    それとも、事実が全てと考えるのか。
    どちらも正しい。

    キャリアも同じ…

  • ヒーラーをひたすら巡る冒険、といいつつちゃんと学者として「癒し」についても語られていて、とても興味深いです。私はお寺生まれですが、お寺にも近いものを感じると共に、分析軸として使えるな!と思いました。

  • 野の医者(現代医療では無い治療や癒しをする人たち)への興味と暖かい目を感じつつ、冷静な分析が面白い。物語としても、起伏に富んで面白かった。

  • 2階心理学C : 146.8/TOH : 3410162203

  • ところどころ飛ばして読んだ。作者の独白があったりと、長いコラムのような作品。さくさく読め、3時間もかからず読めた。
    とても面白い。いまだ謎につつまれた心、そしてその治療とは何か?それを沖縄の野の医者の治療を体験することで解き明かしていく作者。詳細に記録された実体験も面白いが、結論もまた面白い。
    人間の逞しさと危うさを感じた一冊である。
    また、沖縄人または、沖縄の知り合いがいるひとはさらに面白く読めるだろう。

  • かなり面白かった。大学院で学ばれている臨床心理学のいわゆる「正統派」とされている技法と沖縄の怪しいスピリチュアルとされているものが、どちらも同じ河合隼雄さんや山中庸裕さんなどの流れを汲むものだったというのはびっくりをした。本書はかなり軽い口調で書かれていて、おどけた調子での文章が多いが、著者が就職先を見つけるなかで様々な多くのスピリチュアルヒーリングを受けるなかで、再就職先が決まったときに「最大の癒しだ」と現金なことを書いていたが、これが臨床心理学でもヒーリングでもないけども、本当に癒しだろうと感じてしまった。

  • 巷で流行っているパワーストーンやオーラソーマ、〇〇療法など個人的に怪しいと思ってしまうセラピーが、沖縄では流行しているそうで、臨床心理士の著者が実体験しながらそれらの実態にせまっていく体験記だった。
    高野秀行さんに憧れて文書化を目指しただけあってとても面白く読むことができた。

    セラピストたちの治療は気分が落ち込んだ時にそれを忘れさせるような一種の躁状態をつくることがゴールであり、一方、著者の心理療法は落ち込んだ自分としっかりとむきあい解決することがゴールと対象的ではあるが、どこを目的にするかでそれぞれ意見が異なっており、理解できないものなのだ。しかし、理解できないのは当然で、ダイバーシティーが謳われる世の中いろんな考え方があっていいと思うし、そのため様々な(怪しい?)セラピーがあってもいいのだろう。個人的には、じっくりと問題と向き合い、悩み解決の本質だと思っていたが、処理できないほどの問題にぶつかった時は他の手法で心が救われるなら、それはそれでいいのだと少し思えるようになった。

  • 気になっていた本。やっと読めた。

    「臨床心理学」とは何なのか。
    他のケアシステム(野の医者)を知ることで,治療とは何か,臨床心理学との違いは何かを探っていく。

    読み終わった後にこの題を見て,ある意味で総括になっているんだなと思った。

    「宗教の末裔であり学問である」のが臨床心理学。
    クライエント側からしたら学問である必要はないんだろうけど,それでもこの資本主義の世界で治療者とクライエントでない人にもその意義を説明してお金を出してもらうには,学問であることが大きな力を持つ。

    ・野の医者は自らが患者であり,治療行為が自らをも癒やす
    ・野の医者の治療とは軽い躁状態まで回復すること(精神分析の場合は悲しみをきちんと消化し,しっかりと悲しめるようになること。松木先生の帯にも)

    治療者の技法にどれだけクライエントを巻き込めるかが治療成果を左右する。だから野の医者は喋り倒すし,臨床心理士は治療機序を詳しく書き込む。クラインマンの説明モデルとポストモダンについては普段からボスにも言われていることだけど,文化要因(経済水準,産業,性役割,宗教など)と説明モデルの関連について調べてみたいなあ。

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著者プロフィール

十文字学園女子大学人間生活学部講師、博士(教育学)、臨床心理士、白金高輪カウンセリングリーム

「2018年 『心理療法家の人類学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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