職業は専業画家 無所属で全国的に活動している画家が、自立を目指す美術作家・アーティストに伝えたい、実践の記録と活動の方法
- 誠文堂新光社 (2021年6月9日発売)
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感想 : 7件
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784416521274
作品紹介・あらすじ
美術業界初! 創作者が活動するときに直面する「お金」の問題、接客方法など、今まで語られなかった作家の20年分の手の内を公開!!
一生、絵だけを描くことに専念したいと考えた著者は、30歳のときから20年間、専業で絵を描く画家として、無所属でさまざまな創作活動を展開しています。
そして、より多くの画家、造形作家、アーティストたちが自立し、創作に専念することを希望して情報交換の場「話します会」を開いてきました。
本書では、専業画家を続けている著者の活動や独自の考え方を紹介するとともに、
・なぜ24時間、100パーセント画業に専念することを目指すことが望ましいか
・どのように活動を展開させれば、本当のプロになれるのか
・「自分のお客さん」のつくり方
・制作依頼の獲得をはじめ「仕事の取り方」をどのようにしているのか
・作品の価格はどのような根拠で設定すればよいか
・接客の仕方はどうするか
など、今まで誰もオープンにしてこなかった「美術の世界で生活するノウハウと方法」を丁寧に、わかりやすく解説します。
「自分の絵で生活しようとする人は、自営業者です。
経営者に雇われる感覚ではなく、自分が経営者となって、どのようにすれば自分の美の活動が展開できるのか、継続できるのかを主体的に考え、行動することが大切だと考えています。」本書より
■目次
【天の章 活動の基礎となる心について】
Ⅰ 専業で活動できる作家を目指してほしい
Ⅱ 自信をもって踏みきること
【地の章 お金のこと】
Ⅰ 絵を描き続けるためにー必要な基盤と考え方
Ⅱ 見ず知らずの方でも作品を求めるということ
Ⅲ 絵の値付けの考え方
Ⅳ 注文を受けやすくする
Ⅴ 収入を増やすための活動の拡大
Ⅵ 作品の原価について考える
【人の章 お客さんとのつながりについて】
Ⅰ 「自分のお客さん」をつくる
Ⅱ 接客に関すること
Ⅲ お客さん獲得のための考え方と工夫
Ⅳ 目標は「自分の特別なお客さん」30人
対談1 田住真之介さん
対談2 山本太郎さん
インタビュー 服部しほりさん
福井安紀 作品と年表
私の個展スタイル―より楽しんで見てもらうための工夫/美について2/「花」について―『風姿花伝』になぞらえて/これから私ががんばること
技術資料 寒い空間でも描くことができる水干絵具の練り方/「土・石・砂で描く」/描き方について
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AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
この作品は、専業画家として20年間活動してきた著者が、アーティストとしての自立や創作活動に必要なノウハウを具体的に解説しています。絵を描き続けるためには、作品を売るためのマーケティングや顧客との関係構...
感想・レビュー・書評
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個展を中心に絵を販売して生計を立てている著者が、どのようにお客様を得てどのように絵を売っているかを綴った一冊。気になるお金のことも具体的に書かれている。正直いってこの内容をnoteなどの情報商材にすればその情報代は一冊1800円よりもはるかに高いものとなっただろうに、そうはしなかったのは、専業で絵を描ける人が増えればその分文化も豊かになるだろうという視座を著者が持っているから。私自身はとてもじゃないけど絵を買う財力は持ち合わせていないけれど、画廊を覗いてみたくなった。
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専業画家である著者が自身のノウハウをまとめた本。ちょうど身近に作家活動をしている者がおり、その考えの一端が掴めれば、もしかすると彼への何らかのヒントになるかと思い読んでみた。
著者は自身のことを以下のように書いている。
- 美術団体に所属せず、画商に取り扱われることもなく、ほぼ専業主婦の妻と娘の三人が地道ながら生活できる状態を作り出した。
- 1970年生まれで30歳の時に専業画家になった。
- 35歳の時に絵の収入で食っていけるようになった。
一般のイメージに違わず、作家活動のみで生活していくのは簡単なことではないようだ。「地の章」では、30歳で会社を辞めた後のお金のない生活や将来への不安など、生々しい記述がいくつもある。だが、それでも若い作家には最初から諦めることなく専業を目指してみて欲しいという強い思いが書かれている。著者と今の若い作家では時代も違い、同じように上手くいく保証はないだろうが、専業を目指す作家にとってはそういった記述は心の支えになるのかもしれない。
著者がとった戦略は端的に言うと、貸し画廊での個展を重ね、自身のファンを地道に増やしていったということらしい。具体的なノウハウもあり、納得できる内容だった。細かな接客のノウハウを読むと、著者は作家であると同時に優秀な商売人のようにも感じた。いかに顧客とコミュニケーションをとり、自分の作品や作家としての自分を知ってもらい、購入してもらえるか。そんなことが書かれている。
「人の章」では作家を歌手に例えている。芸能事務所に所属するメジャーの歌手と地下アイドル。業界内、あるいは世界で名の通った現代アーティストと、直接会って話を聞ける「地下絵描き」。それぞれで求められる価値は違う。メジャーだけが良いわけではない。アート作品を楽しむ側から見ても、距離感が近く会おうと思えば会える「地下絵描き」で推しを見つけて作品を買うというのも面白いかもしれない。
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その他、印象に残った点を箇条書き。
・制作場所を確保することの大事さ。ある程度のサイズの作品を制作するには、それなりの広さがいる。著者は最終的に、築10年の店舗付き住宅をローンで購入し、店舗部分を画室として改装したとある。
・作家の活動の方向性として3タイプ。あくまで大まかな分類だろうが、作品をどう出すかで作家人生が大きく変わりうることがわかる。
- 美術団体の公募に出品していくタイプ
- 個展を開き、販売を含め展開していくタイプ
- グループ展に出品するなどの活動をメインとするタイプ
・作品を求めるのは身内や友人など、作家に近い人ばかり(作品はそう簡単に売れない)と考えている作家が意外に多いとある。作家を取り巻く環境の厳しさを感じる。しかし、それに対する著者の言葉は『他人が作品を求めることは、特別なことではない』。逆に、個展に知人を呼ぶのは未知の人との出会いを失いかねず、控えるべきとある。全体を通して、新たな顧客との出会いを多く得ることを中心的な戦略としているようだ。
・著者は『作家も商品である』と書いている。1作目は作品を気に入って購入し、その後作家自身を気に入り2作目を購入されたという自身の経験の中での言葉。
→アート作品の価値は複雑で、単に作品の良し悪しだけでなく制作の背景や作家の人間性も重要な要素になる。作品に込めた想いや自分の考えを表現し、そしてそれを発信するような能力が作家には重要なのかもしれない。
・作品が売れたとしても、必ずしもそれは「自分のお客さん」ではないとある。顧客が作品を買うのは、作家ではなく企画画廊や百貨店という場に価値を感じている可能性があるため。
→この考えは「地下絵描き」として活動を続けた作家ならではと思う。企画画廊や百貨店で売れた作品にももちろん価値があるだろうが、「地下絵描き」として、絵で食っていくということを考え抜いた戦略なのだろう。
・個展での顧客への接し方が具体的だった。自分が著者を優秀な商売人だと感じた理由はこれだ。
- 個展には必ず在廊する。
- 絵を見る顧客との距離感。積極的に声を掛けすぎるとプレッシャーになるし、逆に声を掛けなければ関係性が生まれない。画廊を百貨店のジュエリー売場に例えていて、納得感があった。
- DMの出し方。興味を持ってくれていそうな客へはアプローチを増やすなど、顧客管理もしている。
- 単に制作した作品を売るだけでなく、受注制作も受ける。名刺などでそれをさりげなくアピールする。 -
これはとても良い本で、画家に限らずアートで生きたいと願う人には良いアドバイスになる。 画家で生きるには、作品を買ってもらう必要がある。 そのためには、ある程度マーケティングの知識も必要だ。 画廊との付き合い方、客との接し方、自分の作品の価値など、作品を買ってもらうためのノウハウが沢山記載されてあり、イラストや図の説明も分かりやすい。 アートで自立したい人には、一読の価値はあると思う。
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専業のみち。
地下アイドルの発想のように絵描きはごろごろいていいはずだと思える。
業界の思い込みがあるのは作家性故か。
著者はなんくるないさ精神ですなおに美を追求した結果お金がもらえる状態を方法として落とし込みことができている。
これは、生き方や幸せを考えた結果、自然と出てくる発想なのだろう。
生存者バイアスじゃなくて、再現性がある活動が本として珍しく詰め込みがなされている。 -
個人的にもものすごく好きな本。著者のユーモアが伝わる細かい手描きイラストと誠実なお人柄が滲み出た丁寧な文章が読んでいて心地よかったです。
