文字講座

  • 誠文堂新光社
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本棚登録 : 137
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784416609071

感想・レビュー・書評

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  • 子供のころからびっくりするような悪筆で、PCでドキュメントを作る時も使用フォントに比較的無頓着な自分だが、ちょっと興味を持って手に取った。
    有名無名・ジャンルを問わず文字と深い係わりをもつ13人の文章からなるとても面白い本。

    AXISフォントを作った鈴木功氏や、80年以上の歴史があるサンセリフ書体「ギル・サン」をつくった石彫職人エリック・ギル(河野三男氏著)の話など実に面白いし、これに限らず、つくることに携わる人の思いやこだわり(こだわらないというこだわりも含め)が興味深い。

    葛西薫「完成度ってなんだろうなと考えたときに、これまで統一感だとか平均化だとかいうことをずいぶん言ってきたんですが、どこかに崩れとか、ほころびとか、ほっとするとか、そういう分があることで、文字に人間味が生まれるというか、表情が生まれていくんじゃないかなぁ」
    ナンセンス=軟尖…和訳のセンス

    永原康史「opentype…前後の文字を読み、それにふさわしい形の文字を表示するという機能が備わっている。ひらがなでは、かつて嵯峨本で用いられた連綿体さながらに、前後の文字を参照しながら形を決めていくというフォントが、これから現われてくるのではないか。」

    中島英樹「文字というのはもともとマジカルで不思議なものだと思う。」「簡単に読める物と言うのは伝達スピードが早く、不特定多数のターゲットに伝えるには有効な手段だが、同時にすぐに忘れるコミュニケーションの方法だとも思う。結果、すぐ忘れられてしまわないようにと量産されることになる。」

  • 東洋美術学校創立60周年記念事業として、2006年度、全10回にわたり開催した「文字講座」の内容を採録したものの。連続講座「文字講座」は「デザインとしての文字」「知識としての文字」の両面からタイポグラフィを楽しみ、その大切さを学ぶことを目的に、文字活字に関わりを持つ専門家、そしてデザイナーの方々の協力を得て企画されました。

    文字に関する本は数多く出版されていますが、それらは大きく活字文化史やタイポグラフィを学術的に考察するものと、アートディレクターやデザイナーといった実際に文字を使う立場の方々の考察や作品をまとめたものとに分かれているのが常でした。しかしこの書籍『文字講座』は、学術的解考察とデザイン的視点からの考察の二つが同時に一冊のなかに存在していることが大きな特徴です。そして、どちらに属する方であっても、全員に共通して流れているのが「文字が好きだ!」という熱い思いなのです。

    読んでいるうち文字の世界の楽しさにわくわくしてくるような、そんな本を目指しました。

    構成を担当。

  • グラフィックデザイナーから
    タイプデザイナーまで、
    13人の文字に携わる文字のプロによる
    文字講座を一冊にまとめた本。
    (なかなかそうそうたる面々)

    文字ひとつとっても、関わる立場によって
    それぞれの視点が全然違っていて、
    とてつもなく面白い一冊です。

    文字の歴史から、デザインにおける
    文字の重要性とその可能性。

    ぼく自身この本に出会ってから
    文字の面白さにめっきりのめり込んで
    しまいましたね。ええ。

    デザイナーの方はモチロン必読だと
    思いますしデザイナーでない方でも
    面白く読めるつくりになっています。

    こういう観点で歴史にふれられるのは
    とても楽しく有意義なことです。

    やっぱり「好き」だと学びは自然と
    楽しく深まりますね。

    「文字」について
    素人から玄人まで楽しめる一冊。


    読むのにかかった時間:3時間

    こんな方にオススメ:三度の飯より文字が好き!な方に…

  • 文字を扱う人、文字を作る人、研究する人、それぞれの情熱やら思いが一冊でみれてよかった。

    また読みやすいし。

    あの中島英樹さんが井上嗣也のところに3回フラれたとか、葛西さんのKの間の間隔が広く見えちゃうとか。アクタスフォントをどうしてつくったとか、トンパ文字を現地人に書きにいってもらうとか、浅葉さんは線の中に10本線をひけるとか、そういった裏話もとっても面白かった!

    歴史についてはあんま頭に入らなかったな。
    でもギルサンはセリフより読みやすいサンセリフを作るためとか、もともと石彫り職人だったとか、そういった話も全く知らなかった!
    フーツラ、ヘルベチカ、オプティマそれぞれ案外近年にできたてること(80年内)ってのにも若干驚く。サンセリフはこれからの文字っていうのが印象的でした。

  • 葛西薫さんと、服部一成さんと、佐藤可士和さんのお話が特に面白かった。
    文字にこだわる人の気持ちが分かった気がする。
    実際の仕事をした際の発見なんかも知れて、すごく参考になる。
    特に佐藤可士和さんが最後に、デザイナーやアートディレクターは医者のような仕事だと述べていた部分が印象に残った。
    今までの自分のデザインなどに改善点があるなと感じた。

    デザイナーの方の自伝的なものと、文字の歴史についてのお勉強のような文章が交互に載せられている感じです。
    タイトルの通り、講義を受けているような感じだった。飽きないで読めるかなと思います。

  • 文字に関する様々な知識人の公演内容を掲載している。書体の歴史や字詰め、書体の使い方や理念など。文字の予備知識が多く得れる一冊。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00167902

  • 冒頭の一文にこうある。
    「デザインとしての文字」、「知識としての文字」。文字のことを知らずして、文字を使いこなすことはできない。

    今現在、文字のことが気になったら、まずフォントがどんなものなのか調べることになる。
    評判のいい定番のフォントの形を調べていくうちに、文字は単体ではなく並んで意味をなす、というのがわかって、組版を調べる。
    それから、そもそも組版の大本の活字に入って、活字を作るための種字がどうやって作られてきたのかを調べる。
    そうすると、手書き文字に行きつく。

    文字を学ぼうとすると、時代をさかのぼっていくことになる。
    それぞれの時代のすばらしいとされる文字・文字組みをたくさん見て考えて作ったり書いたりして、文字についての基礎体力をつける。
    その基礎体力が、文字をデザインするときに力になる。

  • 中学時代、美術の授業で囓って以来しばらくその密やかな官能性はまったレタリングのことを思い出した。タイポグラフィ、フォントデザイン、CI、様々な形で深く文字と関わる人々の並ならぬ文字への愛情が感じられる。ほんの数文字のタイトル、キャッチコピーも仇や疎かに扱えない。

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著者プロフィール

1912年創業の明治時代から続く老舗出版社で、大正年間から刊行する「MJ無線と実験」「子供の科学」「農耕と園芸」の3誌をはじめ、「アイデア」「天文ガイド」「フローリスト」など大変息の長い雑誌が多いのが特徴です。出発は書籍の文芸書でしたが、その後、実用や科学、農業や花、デザイン、商業、広告、ペットなど、雑誌を中心に多種多様なジャンルを刊行し続けてきました。近年は、料理や手芸などの実用系書籍も多数刊行しています。

「2021年 『復刻版 日米會話手帳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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