ビジュアル 人物で読む太平洋戦争 歴史を変えた指導者たちの作戦と決断

  • 世界文化社 (2011年11月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784418112340

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  • 「原爆投下の候補地はどのように選ばれたのか」

    1945年8月、人類史上初めて核兵器が実戦使用された、広島・長崎への原爆投下。投下候補地はいくつかあったといわれています。今回はそのお話を少し。

     * * *

    原爆の投下目標を選定する責任者で、原爆開発の指揮官でもあったグローブス少将は、多くの民間人による目標選定委員会をつくり、4カ所の候補地を選んだ。

    日本における最大の弾薬工場を持ち、鉄道操車場、機械工場および発電所に隣接している小倉(こくら)。海軍の輸送船団の集合地である広島(ひろしま)。アルミニウム精錬工場、巨大な鉄工所、製油工場のほか、油槽線の終着港となっている新潟(にいがた)市。約100万の人口を持つ工業都市で、多数の避難民と罹災工場が市内に流れ込みつつある京都(きょうと)。

    京都は原爆から生ずる損害が街全体にいきわたる程度の手頃な大きさを持っており、原爆の破壊威力を余すことなく実証しうる。故に第1候補。

    だが、かつて京都を訪れたことがあるスチムソン陸軍長官が待ったをかけた。京都は歴史的に由緒ある都市であり、日本人にとっては偉大な宗教的重要性を持った心の故郷であるとの理由で反対した。

    ポツダム会談中、スチムソンは日本空襲の指揮をとっていたアーノルド大将に、京都に代わる投下目標地の意見を求め、「長崎(ながさき)を目標の一つとして考慮すべき」との答えを引き出した。

    スチムソンは大統領の支持も取り付け、京都に固執するグローブスを押しきり、長崎と入れ替えることに成功した。

    広島が第1候補になり、小倉が第2候補、長崎が第3候補と決まった。広島が第1候補にあげられた最大のポイントは「連合軍捕虜収容所がないのは広島のみ」だったからである。


    -----
    「歴史を変えた指導者たちの、太平洋戦争に対する作戦と決断とは」

    今回はいつになく硬めのものをお届けします。担当編集者からのおすすめの一言よりご紹介を。

    「ややもすると、歴史は出来事から捉えがちですが、 事が起きる原因は、つねに人間の思惑、決断などにあります。本書は太平洋戦争にかかわった指導者たちのパーソナリティにフォーカスし、なぜ戦争が起きたのかを 『人間の決断』から解き明かす歴史の入門書です。

    戦争を知らない若年層から疎開や被災経験はありながらも当時は幼かった年配のかたがたまで、開戦から終戦までの流れをご理解いただけます。真珠湾攻撃から70年を迎える今年、読んで、見て、面白い! わかりやすい! 1冊をお届けします」

    では、どうぞ!

     * * *

    戦争は人災である。人為的行為であり、始めるのも終えるのもすべて指導者、あるいは指導部に列する政治家や軍人の意思によって決まる。それだけに私たちは、常に自らの時代に指導部に座っている人物はどんな考えをもっているか、事にあたって軽率な判断をするタイプではないのかを見ぬいておく必要がある。

    近代日本は日清戦争から始まって太平洋戦争まで幾つかの戦争を体験している。このなかで昭和時代の太平洋戦争は明治期、大正期の戦争とは異なっている点がある。どこだろうか。

    日清、日露、第一次世界大戦と並べてみて、これらの戦争指導にあたった政治家、軍人には、ともかくもこの国の歴史や文化、さらには知識を代表する能力と見識をもっていた。戦争を単に軍事だけで考えるのではなく、政治や外交をからませて非軍事面の部分を代表する指導者が存在した。(中略)

    残念なことに、太平洋戦争の指導者にはそのような政治・外交を見る人物が不在だった。そのために戦争は、軍人の目だけで戦われて、一言でいえば「軍事上の勝利を得るまで戦い続ける」という頽廃(たいはい)を生んでしまったのだ。

    加えて太平洋戦争開戦までのプロセスを見ていくと、大本営政府連絡会議では政府側は首相、陸相、海相、外相、蔵相はいずれも官僚(軍官僚)出身者、大本営側も参謀総長、次長、軍令部総長、次長も軍官僚である。国民の付託を受けた政治家が一人もはいっていない。官僚(軍官僚)の思惑によって国の存亡が決定された状態だったのである。

    大本営政府連絡会議では、この国の未来はどうあるべきか、国の哲学はどこにあるか、その立脚点を謙虚に論じた節はない。

    では昭和に有為な人材はいなかったのか。そんなことはない。政治家、官僚、財界人、軍人、言論人など軍事だけでなく、政治、歴史、伝統など多面的に目くばりする人物は各界に存在した。軍人の中にも文民支配を信念とする人物もいた。そのような人物がなぜ指導者になれなかったのか、なぜ指導部に列することができなかったのか。過去のそういう事実を確かめて現在を知り、そして未来へ伝言していく、それが今、私たちに求められている。

    戦争は人災だからこそ、私たちはそこから多くの教訓と知恵を学ばなければならない。

    ――ノンフィクション作家・評論家 保阪正康

    ~『ビジュアル 人物で読む太平洋戦争』より

     * * *

    全体は「第1部 日米開戦に走った人々」「第2部 開始された太平洋戦争」「第3部 崩壊する絶対国防圏」の3部構成。登場人物はおなじみのあの指導者たちです。以下に目次の一部を掲げておきます。

    [目次]
    ■第1部 日米開戦に走った人々
    近衛文麿/石原莞爾/杉山 元/蒋 介石/毛 沢東/リッベントロップ
    大島 浩/板垣征四郎/植田謙吉/平沼騏一郎
    スターリン/ヒトラー/阿部信行/米内光政/有田八郎 ほか

    ■第2部 開始された太平洋戦争
    山本五十六/黒島亀人/村田重治/南雲忠一/淵田美津雄/嶋崎重和
    キンメル/ショート/山下奉文/パーシバル/チャーチル/本間雅晴
    ウェーンライト/今村 均 ほか

    ■第3部 崩壊する絶対国防圏
    木村昌福/柴崎恵次/古賀峯一/福留 繁/小畑英良/ターナー
    小沢治三郎/スプルーアンス/角田覚治/岸 信介/小磯国昭
    牟田口廉也/佐藤幸徳/豊田副武/マッカーサー/寺内寿一 ほか

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著者プロフィール

太平洋戦争研究会(たいへいようせんそうけんきゅうかい):近現代史に関する取材・執筆・編集するグループ。同会代表は、出版やドキュメンタリー番組に写真を貸出す近現代フォトライブラリー主宰の戦史研究家、平塚柾緒。著書・編著には、『写真が語る銃後の暮らし』『写真が語る満州国』(ちくま新書)、ふくろうの本『図説 山本五十六』『図説 太平洋戦争』『図説 東京裁判』(河出書房新社)や『日本海軍がよくわかる事典』『日本陸軍がよくわかる事典』(PHP文庫)、『面白いほどよくわかる太平洋戦争』『人物・事件でわかる太平洋戦争』(日本文芸社)、『カラー写真と地図でたどる 太平洋戦争 日本の軌跡』(SBビジュアル新書)、『証言 我ラ斯ク戦ヘリ』(ビジネス社)など多数。

「2025年 『写真が語る敗戦と占領』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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