つきみのまつり

  • 世界文化社 (2023年8月8日発売)
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感想 : 11
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  • 本 ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784418238354

作品紹介・あらすじ

人も動物もすべての生きとし生けるものが、美しい満月をめでる観月祭の物語

羽尻利門氏が、美しい細密画で描く、家族で楽しむ日本の行事絵本第2弾。
十五夜の夜、神社のお祭りへ行くキッカとゲント。
山の頂上の境内では、月の神さまに感謝と祈りを捧げる観月祭が行われていて……。
人も動物もすべての生きとし生けるものが、美しい満月をめでる夜のお話。
本文中の各見開きには、絵本と関わりの深い言葉(4つの文字)が隠されています。文字探しもお楽しみください。

感想・レビュー・書評

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  •  いつもの図書館の新刊コーナーで初めて出会った絵本は、表紙の絵も気になったので借りてみたら、十五夜のお月見の日の話で、時期を逃した感はありましたが、私にとって、得るものも多かった絵本となりました。

     恥ずかしながら、私は『観月祭』を知らなくて、それは、旧暦八月の十五夜に、全国各地の神社で行われる神事で、祭神及び月の神様(ツクヨミノミコト)に、秋の豊作と日々の安寧を祈り、感謝が捧げられ、芸能などが奉納されるとのことで、本書で登場する観月祭は、四国最東端の徳島県阿南市に鎮座する『津峯(つのみね)神社』がモデルとなっていて、その境内は山の上にあり、そこに向かうリフトや、境内から見える、『阿波の松島(橘湾)』の絶景は有名だそうで、その夜ならではの美しさは、本書でも味わう事が出来ます。

     そして、観月祭の模様は、本書を通して疑似体験出来るような臨場感があり、夜のひっそりとした物静かさが、より厳かさを醸し出す雰囲気の中、宮司が祝詞を奏上する場面から、お琴や横笛の調べに合わせた巫女舞の間、ずっと聞こえてくる虫の鳴き声も、なんとも風流であり、これは実際に見てみたいと思いました。

     また、そうした伝統行事の素晴らしさを伝えるに当たり、子どもにはやや退屈に思われるかもしれない点は、物語の内容が充分に補っており、それは兎も思わず心配そうに見上げる、扉絵の曇り空から、女の子「キッカ」と弟の「ゲント」が、せっかくベランダでお月見をしているのに、月が出ないことに不満顔のオープニングへと繋がり、そんな姿を見たお母さんが、それなら神社のお祭りに行ってみようかと提案することで、たちまち笑顔を取り戻す子どもたちには、思わず心も鷲掴みといった展開です。

     更に、その楽しいお祭りの場面から、急に閑散とした参詣リフトの場面に変わる対照性も鮮やかであり、そのリフトのワクワク感を経た後に、これまた雰囲気が一変するような、観月祭へと繋がっていく流れには、読んでいる子どもも、いったい何が起こるのだろうといった期待感も芽生えそうな中、この後のちょっとした幻想的に思われる場面は、また嬉しいものがあるのではと感じました。

     本書を描かれた、羽尻利門さんのあとがきにもあるように、観月祭から改めて実感させられるのは、月の素晴らしさであり、そのささやかでありながら幻想的な魅力もあって、人間だけではなく、全ての生き物たちを、分け隔てなく平等に照らし包み込んでくれる、その神々しい中にも感じられる温かさは、目に親しみやすさのあるキャラクターと、細やかさの光る精密な背景の中にも滲み出る、揺らぐような線の描き方に月のような幻想性を感じられた、羽尻さんの絵にも共通したものがあるようでした。

     そして、その温かさは、表紙だけ見ると人間だけが月の恩恵を受けているように見えながら、それと繋がった裏表紙も広げて見ることで、実は動物たちも、等しく受けていることからも窺えますし、それらの後ろ姿から決して表情は分からないものの、それでも、どこか神秘的なものに魅せられているような、それは温かさだけではない、その凛とした厳かな佇まいに、敬意を抱かせるような雰囲気も醸し出しているのが、太陽とはまた異なる、月の素晴らしさなのかもしれないと感じられたのでした。


     ちなみに、この絵本には、全ての場面(絵の中)に隠された四つのひらがな(繋げると本書にちなんだ言葉になる)を探し出す遊び心もあるのですが、これが意外に難しくて・・・未だに見付からないものもあるのが悔しくて、ついまた探してしまうのだが、私にはもう目が辛くて(笑)、こういうのは子どもたちの方が、すぐに見つけられそうな印象があるので、再読するときに挑戦してみるのもいいのではないでしょうか。それから、参詣リフトの場面の左下のメッセージも見逃さないで下さいね。

  • 〝今夜は十五夜、お月見の夜。「そうだ、神社のお祭りにいってみようか?」ママの声に 「いきたい❢」 キッカとゲントの姉弟の顔がぱっと輝いた・・・。 山の頂上の境内では、月の神さまに感謝と祈りを捧げる「観月祭」が行われ、人も動物も、すべての生きとし生けるものが、美しい満月を愛でる、夜の美しく和やかなひと時が描かれた<羽尻利門>さんの家族で楽しむ日本の行事絵本です。

  • 全体的に落ち着いた色合い、文の絵本なので、小さい年齢のお子さんはあまり食いつかないかも。
    しかも最後の作者さんの後書き?のようなものを読むまで絵探しがあることに気が付きませんでした。
    実際にある神社をモデルにされていて、こういった伝統的な行事が続いていってほしいなぁと思いました。

  • 夜空の色合いが心をひきつけた。真っ黒ではない、明かりが滲み出て紺色だけど、そうではない色。お祭りの灯りも楽しさを感じた。絵本を読まなくなった小4女子も絵本の中に仕込まれたお遊びが楽しそうだった。

  • 8歳4ヶ月の娘
    5歳4ヶ月の息子に読み聞かせ

    絵がすてき~
    ひきこまれる~やさしい

    おつきみっていいよねえ

    観月祭いってみたいなあ
    すてきだなあ

    文字の探し絵もあるから
    2度たのしめる


    追記

    9歳3ヶ月の娘
    6歳3ヶ月の息子に読み聞かせ

    再読。やっぱり好きだ〜
    十五夜が近づいてきたら
    読みたくなるーー

    今年の十五夜楽しみだな

  • 実際にお祭りに行ったような気持ちになるよい内容の本と思いました。ただ、3歳児にはまだ早かったようで、最後まで聞いてはいましたが、何度も読んでと気に入るほどではありませんでした。

  • 3歳からおすすめ。
    ストーリー、絵の美しさ、カメラワーク、季節感、神秘性、構図など、作者が多面的に工夫されていることが、よく伝わってきます。
    こども、海、行事、乗り物、花火、お祭り、動物など、絵本らしい要素がたくさん。欲張りな内容です。おすすめしたい!

  • お月見絵本。おおきなお月様ってやっぱり素敵だね。

  • 色々なお話をMIX したようなお話のようにも感じるのですが、構成が素晴らしく、お月様の美しさや、花火が上がった時の夜の街の様子など、何度も見たい景色がいっぱいで購入しました☺️
    個人的にはリフトで上る時の表現がぴったりだなあと思うところもあり、作者の方の他の本も読んでみたいと思いました。

  • 2023.9.25 3-3

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著者プロフィール

羽尻 利門(はじり・としかど)
1980年、兵庫県生まれ。立命館大学国際関係学部卒業。絵本の出版のほか、小学校の教科書の挿絵など多くを手がける。近著に『ねこのえきちょうさん たま』( 金の星社)、『手ぶくろを買いに』( 新日本出版社)、『つきみのまつり』(世界文化社)、『きみも運転手になれる!パノラマずかん運転席』( パイインターナショナル) などがある。日本児童出版美術家連盟会員。現在、徳島県阿南市在住。

「2024年 『四角い空のむこうへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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