- 税務経理協会 (2016年10月31日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784419063900
感想・レビュー・書評
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まだ決算書をもらえないような新規取引先や、突発的に(飛び込み営業をしてきて)取引を迫ってきた営業先の善し悪しを判断するにはどうすればよいだろうか。本書はその解決策として、誰でも閲覧できる会社謄本を用いた(悪い会社に騙されない)判定方法を提案する。
非常に実践的な反社チェックができる手法には驚き。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
会社謄本を利用した会社の信用調査方法を解説。会社謄本はその会社を見極めるリトマス試験紙としての活用方法があるという。そのためには現在事項証明だけでなく閉鎖謄本も確認する必要があると説く。現在謄本は「ジキル博士」で、閉鎖謄本は「ハイド氏」であると比喩する。すなわち、「ジキル博士」たる現在謄本を見栄え良く細工しても、「ハイド氏」たる閉鎖謄本を追っていけば、その会社の本性が見えてくることもあるのだ。会社分割により設立された会社のウラは参考になった。
P67
おかしな登記が起こるワケは、会社分割を法務局に申請するときに提出する書類にあります。「資本金の額の計上に関する証明書」(資料11) と呼ばれる書類がそれです。なにやら堅苦しい文言ですが、要するに、新しく分割して作る会社の資本金は1,000万円です、ということを表した書面です。
<資料11>(略)
ポイントは、「証明書」と題してあっても、1,000万円が存在するというエビデンス、たとえば残高証明・通帳コピー・決算書などといった資料を添付する必要がない、ということです。「そんなザルでいいの?」といいたくなりますが、会社を外割して新会社を設立しようと考えている99.9%以上の方々は、制度を悪用しようなどと思っているはずがありません。事業の効率的な経営を目指し、同時に1,000万円に見合う資産がきちんと存在しているからこそ、会社分割を考えていますので、この証明書にエビデンスを添付しようがしまいが、関係ありません。
逆に、実態があるわけですから、1,000万円のエビデンスなど添付しないほうが「面倒がなくて楽でいいや」といった程度のことでしょう。よって、証明書にエビデンスを添付しないことにも、十分な妥当性があるのです。
一方、詐欺を企図する輩には、潤沢な資金などありません。ゆえに、もしこの証明書にエビデンスの添付が要件になっていたとすれば、『通帳や残高証明、決算書の偽造』というリスクをさらに冒さなければなりません。ところが幸いにして、証明書にエビデンスの添付は要件になっていませんから、騙くらかして金品を掠め取ってやろうと考えている人種なら、「資本金の額の計上に関する証明書」を捏造することくらい朝飯前でしょう。
乱暴な物言いですが、偽造するよりは捏造するほうがまだ楽な気がします。その結果としてこの制度が悪用され、大変残念なことですが、事件の温床になってしまったのです。
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