いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784420310925

作品紹介・あらすじ

なぜ日本の政治家は、ペーパーを読み上げるだけで、表層的な政策論しか語れないのか。誰もが「いのち」の危機に瀕している今こそ、人々に心の平穏を与える「コトバ」をもつリーダー、「いのちの政治」の実践が必要なのではないか。
コロナ危機のさなかに、政治学者・中島岳志と批評家・若松英輔はこの問題意識をもって対話を始めた。
聖武天皇、空海、ガンディー、教皇フランシスコ、大平正芳―5人の足跡を追い、その功績や振舞い、残したコトバを読み解く。さらに芸術家、文学者、現代の政治家たちとの比較や分析を行いながら、縦横無尽に語り尽くす! 新しい次元の政治を拓くための徹底対談。集英社ウェブイミダスの人気連載を書籍化。

【目次】
序章 二〇二〇年春、危機の時代を迎えて
1 聖武天皇は疫病と天災にどう向き合ったのか
2 空海の世界観が教える「参与する」ことの大切さ
3 隣人と分かち合う。ともに飢え、ともに祈る。ガンディーの姿が伝えたこと
4 教皇フランシスコは宗教の壁を超え、声を上げられない人々の「器」になる
5 大平正芳の思想にみる 今の政治が失ったものとは?
終章 二〇二一年秋、コトバを失った時代に

【著者プロフィール】
中島岳志(なかじま たけし)
政治学者。1975年大阪府生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授、未来の人類研究センター教授を兼任。専門は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年『中村屋のボースーインド独立運動と近代日本のアジア主義』にて、第5回大佛次郎論壇賞を受賞。著書に『パール判事 東京裁判批判と絶対平和主義』『「リベラル保守」宣言』『親鸞と日本主義』など多数。
若松英輔(わかまつ えいすけ)
批評家・随筆家。1968年新潟県生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授、未来の人類研究センター教授を兼任。2007年「越知保夫とその時代 求道の文学」にて第14回三田文学新人賞評論部門当選。16年『叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』にて第2回西脇順三郎学術賞を受賞。18年『詩集 見えない涙』にて第33回詩歌文学館賞を受賞、同年『小林秀雄 美しい花』にて第16回角川財団学芸賞及び、19年に第16回蓮如賞を受賞。著書に『内村鑑三 悲しみの使徒』『詩と出会う 詩と生きる』『霧の彼方 須賀敦子』など多数。

感想・レビュー・書評

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  • 【新刊書籍】『いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている』中島岳志・若松英輔著 (集英社クリエイティブ)が11月5日に発売になります! | 株式会社 集英社クリエイティブ | プレスリリース配信代行サービス『ドリームニュース』
    https://www.dreamnews.jp/press/0000247330/

    いのちの政治学|集英社クリエイティブ
    http://www.shueisha-cr.co.jp/CGI/book/detail.cgi/1910/

  • 2023/02/03
    【感想】
    日本に蔓延している“閉塞感”の原因について、最近考えている。その中で、似て非なるものを混同してしまっている現状を感じていた。
    この本では、言葉とコトバ、命といのちは異なるというスタンスから始まる。どちらも前者はとても記号的で無機質なように感じる。
    「コスパ」なんて言葉がもてはやされ、遂には「タイパ」という言葉も耳にするようになった。そんな社会では、殺伐としてしまうのもやむを得ないなぁ、なんて考えた。

    この本を読んでいて一番思考したことの一つは「寛容さ」だ。この寛容さを考えたときに、最もしっくりした例えは“おみそ”だ。
    子供の頃、友達の弟や妹たちと一緒に遊ぶときに“おみそ”システムが活用されていた。良い意味で包摂する考え方は、まさにこれではなかろうか。参加したい!という思いを尊重しながら、我々も楽しむ。こんな政治が営まれるようになると、世界は寛容になるのではなかろうか。

  • 正月から良い読書体験ができた。信頼関係のある二人の対談集なので相補的に「コトバ」豊かな内容が広がっている。取り上げられたリーダーは、聖武天皇、空海、ガンディー、教皇フランシスコ、そして大平正芳。大平氏は「アー、ウー」の人というイメージだが、その「アー、ウー」に「コトバ」を生み出す思索があるというのは言い過ぎな感じもするが、氏の生き様も踏まえての評価では理解できた。ともに利他の研究家であるが、「利他というのは、自分が受け手になった時に始まる」「意識して利他の発信者になろうとすることは、逆に利他の暴力になる可能性が大きい」というのは日々の日常臨床では感じるところ。「いのちの政治学」というのは「私のいのちを守る」ことではなく、私とつながるすべてのいのち、そのつながりそのものを守ること、いのちは時間を越えて過去や未来も包含するので、亡き人、未来の人ともつながることが「いのちの政治学」。そのいのちを生かすために重要なのが「リーダーの選び方」と若松氏がしめてくれた。

  • 2022I230 310.4/Na
    配架書架:A2東工大の先生のコーナー

  • 大平正芳については、中島岳志さんが以前評価されいたのを知って、「あー、うー」の人が?と意外な感じだった。この本を読んで、確かにリーダーにふさわしい人だったと思った。誰かに書いてもらった原稿を読み上げるだけの政治家、自分の主張だけをペラペラ喋りまくる政治家と比べて、「あー、うー」と逡巡しながら自分の言葉で、内容のあることを、責任を持って話す政治家を持てた時代がうらやましい。薄っぺらで軽く、弱い者に優しくない、冷たい政治家は、私たち国民の鏡なのだろう。

  • 読みやすいし!わかりやすい。

  • 東2法経図・6F開架:310.4A/N34i//K

  • 「大切な思いが『言葉』にならないことって、私たちにはよくあると思います。『言葉』にならないからといって、その思いが存在しないというわけではありません。時に沈黙の方が雄弁であることさえあります。」

    政治は観察するものではなく参与するもので、今の私たちはその参与意識が極めて低いのだと2021年最も強く感じたことだった。リーダーが変わってもそれを選ぶ私たち自身が変わらなければ何一つ問題は解決されないのだ、受け手側に問題があるのだ、と知ることができた。

  • 二〇二〇年春、危機の時代を迎えて:
    二人の「リーダー」の演説
    言葉を超えた「コトバ」とは
    「命の統計学」から「いのちの政治学」へ
    「コトバ」を待つ— 石牟礼文学を生み出したもの
    「弱くあること」から学ぶ
    ファシズムが破壊しよぅとするもの
    いのちとつながる政治を取り戻すために

    聖武天皇は疫病と天災にどう向き合ったのか:
    大仏建立の背景にあったもの
    税金が「神々への奉納」だった時代
    幼い息子の死を乗り越えて
    「貴めは予一人に在り」
    「弱い存在」を包み込む—光明皇后のコスモロジー
    現代における「写経」とは何か
    「知識」の寺で盧舍那仏と出合う
    人間もまた、自然の一部である
    あらゆる人が、何かを「差し出せる」場
    「土地の所有」を分け与えるー墾田永年私財法
    なぜ遷都を重ねたのか
    求道の末に「土木」に行きついた行基
    私たちにとっての「大仏」を見つけよう

    空海の世界観が教える「参与する」ことの大切さ:
    言葉の世界からコトバの世界へ一高野山での原体験
    唐に渡った空海—空と海の「化身」として
    両界曼荼羅は、「中に入る」ことで初めて完成する
    ライバル・最澄との決裂
    「彫り出す」ょぅに山を開く—高野山という曼荼羅
    調和を創造する—「科学」による満濃池改修工事
    民衆の力を信頼した学びの場
    観察型の社会から、参与型の社会へ

    隣人と分かち合う。ともに飢え、ともに祈る。ガンディーの姿が伝えたこと 断食によって争いを止める:
    ガンディーの「準備的」な人生
    「放蕩息子の帰宅」とガンディー
    「古典をもたない」ことの危うさ
    真理のために闘うー南アフリカでの日々
    なぜガンディーの断食は人を動かしたのか
    自分たちの大地を取り戻す-スワデーシー
    「隣人」とは誰か
    自分の考えるダルマと、神から与えられたダルマ
    自己を統御するということ-スワラージ
    「マンディル」での日々
    法かダルマかー塩の行進       

    教皇フランシスコは宗教の壁を超え、声を上げられない人々の「器」になる:
    教会は、野戦病院であれ
    「羊の匂い」のする教会
    貧しい人たちから学ぶ
    ローマ教皇とは誰か
    外交の主体としての教皇
    コンクラーベと選挙
    「フランシスコ」の名に象徴されるメッセージ
    「すべての人にとっての」という視座
    軍事政権時代の経験から見出したもの
    自然との関係性を問い直す
    私たちは、生きているのではなく「生かされている」
    死者は、私たちを支えてくれる存在である
    「人材」化される人々
    「この経済は人を殺します」

    大平正芳の思想にみる 今の政治が失ったものとは?:
    「保守の本質」を理解し、実践した人
    人間は「か弱き寄る辺ない存在」である
    「永遠の今」を生き、過去と未来とつながる
    「六〇点主義」と「灰色」の重要性
    死者たちと対話しながら生きていく
    牧師になるよぅに、政治家になる
    トマス・アクィナスと経済学— 大平の卒業論文から見えるもの
    「楕円の神学」とは何か
    中国へー東洋思想への深い理解「あるべきよう」と「中庸」
    「政権は、強い反対党によって、腐敗から免れる
    息子の死と「思索の時代」
    「田園都市国家構想」と「日本列島改造論」
    日中国交正常化に向けて「真の生きがいが追求される社会」
    見えない力を政治が結集する

    二〇二一年秋、「コトバ」を失った時代に:
    コロナ危機の中で活躍したリーダーたち
    言葉とコトバ
    受け手になるときに、利他が始まる
    「聖なるもの」を見失った私たち
    「コロナ前の社会」に戻ってはならない

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著者プロフィール

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年、『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『思いがけず利他』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『保守のヒント』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『保守と立憲』『親鸞と日本主義』、共著に『料理と利他』『現代の超克』などがある。

「2022年 『ええかげん論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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