なぜ、人のために命を賭けるのか 消防士の決断

  • 近代消防社 (2004年6月12日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784421007022

感想・レビュー・書評

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  •  北陸トンネル火災のことを調べていて、プロジェクトXの動画を観る機会がありました。それで、番組のエンドロールに参考文献として挙げられていた本です。

     内容的には、北陸トンネル火災はもちろん、川崎市の金井ビル火災、磐光ホテル火災、呉市山火事、そして玄倉川水難事故などの興味深いケースばかりが紹介されています。それらの事故の中で消防士たちがいかに活動したかが迫力をもって描かれております。

     しかし、娯楽として読む分にはいいのですが、参考資料としては非常に「微妙」な本です。

     僕は北陸トンネル火災の参考資料としてこの本を読んでみたわけですが、どうも「これは誇張か嘘ではないか」と思われる記述が見受けられるんですね。消防士の活躍を全面に押し出すあまり、その他が悪役になっていたり、ドラマティックに脚色されすぎているきらいがある。

     実を言えば、プロジェクトXで描かれていた救助活動の描写も、おかしな点がいくつかあるんですよ。それはこの参考文献を真に受けたためなのか、それともNHKで誇張したためなのかは不明なのですけどね……。とにかく、「他のどんな資料にもそんな情報ないぞ」と言いたくなる事柄がいくつかありました。

    (詳細が知りたい人向けに具体的に述べますと、事故当時、斜坑から救助された人がいたというくだりです)

     あとこの本について言えば、文章がひどい。

     まず会話文ですが、「ギャー! 熱い!」とか「アッー!」とか「エッ! そんなバカな!」とか「さあ! どうしよう?」とか「もう、そろそろだナ」とか「ボッツ!」一瞬でタイマツに引火した。「アッチィ!」とか。語尾や感嘆語や擬音がすべからく片仮名なのです。

     あれなんですよ。文章がまるきり「広報誌におじいちゃんが寄稿した」感じ。よくありますよね? 町内会とか農協の広報誌に、一般人のおじいちゃんが原稿を求められて一生懸命書いたような。そういう文章なんです。

     それにしても台詞で「ギャー!」はないでしょう「ギャー!」は。中学生の書いた小説ですか。そこは地の文で、その時悲鳴が聞こえた――とかにしたほうがいいです。

     あと火がついた時の擬音で「ボッツ!」と書かれているのもおかしい。普通は「ボッ!」ですよね。これはおそらく、活字にした段階で「ッ」の言葉を出すためにTのキーを二度叩きしたのがそのまま残ってしまったのではないか、と僕などは考えているのですがどうでしょう。

     この「ボッツ!」のみならず、他にもこの本は校正をまともにやっていないのではないかと思われる個所が多くあります。3ページに1回くらいの割合で誤字脱字があるんですよ、いや本当に。今ためしに適当なページを開いてみましたが、右のページには「さっきまでいた仲間一八人の仲間は見えい。」とあるし、左には「動くものものは何一つ見当たらない。」とか書いてある有様です。いやあ買わないでよかった。図書館で借りてよかった。

     よってこの本は、読み物としてはそこそこ面白いのですが、調査の参考文献としては信用がならないんですね。なにより校正もされていないし、この本そのものの参考資料も何一つ挙げられていないのですから。

     読む時はくれぐれもご注意下さい。

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