新しい交流分析の実際:TA・ゲシュタルト療法の試み

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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422112527

感想・レビュー・書評

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  • TAの「自律という錯覚」という概念はわかりやすい。

    そしてTAが問題としている「一生このまま自律せず、周囲を操作してそれぞれの役割を演じさせたい欲求に従って生きる」のかどうか、というあたりの個についての問われ方がかなり気持ちがいい。

    前概念的思考や魔術的思考という「囚われ」からの解放を自律として定義しているようで、このあたりCBTなんかと通じるものがあっておもしろい。

    あとTAの、なぜ人は「不満を感じたい」「不快感を味わいたい」「不幸になりたい」と願うのか、という問い。そしてその「感じ」や「感情」や欲求は、ほんとうにその個人に帰属しているのか、誰かを代理して(なりかわって)感じていないか、と言うあたりの見極めのところ。
    そうした本来は「感じるべきではない感情」を「感じたい」と思うのはなぜが、のあたり。おもしろいんだな。

    ただその概念を詳細に「PACのC2の中にP1A1C1があってA1はLPで…」というあたりまでくるとそれなりに理解が難しくなるので、理解するために何度か読み直す必要がありそう。

  • ・心身にかかわる病気や問題行動の多くは、元来調和がとれているはずの心と体、知性と情動との間に、乖離や案Bランスが生じることによっておこります。また、問題の解決にあたっても、他人の操作や外界への適応に明け暮れるばかりで(過剰適応といわれます)、自分の内部の力を活用しないために、病気が難治化したり、問題が複雑化していくことも少なくありません。

    ・米国の著名な精神分析医であり、来日経験もあるJ・マーマーは精神力動論から、人間学的心理学の治療機序(メカニズム)を考察し、次の五つに分類しています。

    ①感情そのものを発散する治療法
    ②身体操作に重点を置く情動発散療法
    ③情動コントロールとリラクセーション
    ④宗教体験、インスピレーションをうながす療法
    ⑤その他、同病者の同一化、意識的認知の促進などの療法

    彼はこの①~⑤のうち、ゲシュタルト療法は①に属する療法であると位置づけております。抑圧された感情を発散させることが精神保健の王道であるという考え方です。これは、フロイトが初期に提唱したカタルシス(除反応)の概念にもとづく作用で、不安のもとをなす幼時の外傷体験を想起し、それに結びついている苦痛な感情を発散させれば病気が改善される、というものです。しかし、ゲシュタルト療法の目的とするものは、これにとどまりません。自己認識の欠如に気づくことにより、心身のホメオスタシス(恒常性)と人格の統合をめざします。

    ・ラケット感情の不合理性への気づきの公式。(感情を味わった後で言葉にさせてみる)

    私がこの「 」を抱きつづければ、相手は変わってくれるだろう。
    私がこの「 」にひたっていれば、状況は改善されるに違いない。
    私がこの「 」にとどまっていれば、事態はこれ以上悪くならないだろう。
    私がこの「 」を感じるかぎり、いやなことをしないですむだろう。
    私がこの「 」で苦しみ続ければ、過去は変わるに違いない。
    私がこの「 」を手放さなければ、必ず欲しいものが手に入る。

  • この本は、TA・ゲシュタルト療法です。最初に、交流分析とゲシュタルト療法の基礎知識の説明があります。両方を組み合わせた現場での活用場面を症例としてあげ、解説されています。すごい臨場感です。そして、コワい。
    わたしがそう感じたにすぎませんが、自分がクライアントの立場で再決断療法を受けるには、覚悟がいるなぁ、と。ときに、追い詰めっぷりに、気迫を感じながら読みました。軽率な物言いかもしれませんが、セラピストもクライアントも命がけだな、なんていうコワさです。
    本の内容は、わたしにはちょっと難しいかなと感じました。と、言っても、本文にある考え方・用語の説明、書かれている言葉が難しいわけではありません。わたしに今ある知識だけでは足りないというだけです。
    に、しても、こうまで臨場感を感じられる本は少ないかもしれないと思います。
    巻末の用語解説が、うれしいです。

  • H14,10,4と日付がある。線も引いてある…。交流分析としての活用はしていないけど、本の中にあるI'm OKなどはいろんなところで出てくるな…と今見て思う。教育相談の研修で学んだのを自分でさらに勉強した時の本の一冊。

  • 良書。
    基本と応用をざっくりとつかめる。

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著者プロフィール

杉田峰康(すぎた みねやす)
1933年、東京都生まれ。1960年、アメリカのコンコルディア大学卒業(心理学、ケースワーク専攻)、1962年、イリノイ大学大学院修了(精神医学的ケースワーク専攻)。1963年、イリノイ大学付属病院にて精神療法研修中に九州大学医学部の故・池見酉次郎教授に請われて帰国。以後、同大学病院心療内科創設期より20年間、心身医学者と歩みを共にする。その後、活水女子大学教授、福岡県立大学大学院教授(臨床心理学)、九州ルーテル学院大学大学院教授を経て、現在、福岡県立大学名誉教授、日本交流分析学会名誉理事長。
日本における交流分析の第一人者。交流分析が日本に導入された1972年から研究・実践に携わり、「日本の文化、日本人の心性にマッチした交流分析」の普及に力を注ぐ。
著書に『こじれる人間関係』『新しい交流分析の実際』『人生ドラマの自己分析』(以上、創元社)、『ワンダフル・カウンセラー・イエス』(一麦出版社)、『交流分析のすすめ』(日本文化科学社)など多数ある。

「2018年 『3つの自分で人づきあいがラクになる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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