自分でできる対人関係療法

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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422113210

感想・レビュー・書評

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  • 対人関係療法では、重要な他者との問題は、
      ・相手への期待が不適切
      ・コミュニケーションが貧弱
    のいずれかによって引き起こされると考え、
      ・自分の期待を変える
      ・相手の期待を変える
      ・コミュニケーションを変える
    ことにより問題を解決しようとします。
    コミュニケーションに関しては、会話を具体的に再現してもらい、コミュニケーションがうまくできているかを分析する「コミュニケーション分析」という手法を用います。

    「対人関係療法」と「認知療法」の違いは、
    「認知療法」が“ものの感じ方・捉え方”に焦点をあてて治療するのに対し、
    「対人関係療法」は文字通り“対人関係”に焦点をあてて治療する、という点

    精神療法は、一般に、
    焦点を絞り込めば絞り込むほど短期に効果が上がります。
    「対人関係に焦点を当てる」といっても、
    「対人関係なら何でも」というふうに焦点を拡散してしまうと、幼い頃の対人関係や、いろいろな友人との対人関係など、次から次へと話題が出てきてしまい、長期にわたってしまいます。
    一方、対人関係の中でもテーマを絞り込めば、短期で効果を得て治療を終了させることができるのです。

     対人関係療法は、「重要な他者」との「現在の」関係に焦点を当てて治療するものです。
    また、単に焦点を当てるのではなく、そこで問題になっていることを四つのテーマのうちの一つに分類し、それぞれの戦略に従って治療をしていく、というふうにある程度マニュアル化されています。

    、対人関係療法が分類する4つのテーマを以下に示します。
      1.大切な人を失ったとき
      2.相手とのズレに悩むとき
      3.変化にうまく対応できないとき
      4.誰ともうまくいかないとき

    1.大切な人を失ったとき
    大切な人を失ったときには、「否認→絶望→脱愛着」という数ヶ月から半年の「悲哀のプロセス」を経験する必要があります。
    このプロセスが不十分だと、うつ病などの心の病にかかってしまいます。
    特に、悲しみ疲れるほど悲しみきるという「絶望」の期間を十分に持つことと、「絶望」を共有してくれる相手を持つことが重要です。
    そういう意味で、お通夜やお葬式などの儀式は、死という現実に嫌でも直面すること、他の人たちと悲しみを分かち合うことから重要です。

    2.相手とのズレに悩むとき
    自分が相手に「こうあって欲しい」という期待と、相手が「自分はこうしたい」という希望が違うと、相手とのズレに悩むことになります。
    「再交渉→行きづまり→離別」というプロセスがあり、「再交渉」はお互いが自分の意見に固執して譲り合わない状態、「行きづまり」はズレが行き詰ってしまってどうしようもない沈黙とかの状態、「離別」は客観的に解決不能なほどズレが大きい状態です。
    ズレの解決方法としては、ズレの段階が「再交渉」であれば、相手への期待を見直したり、コミュニケーションの方法を改めます。
    「行きづまり」であれば、コミュニケーションを始め、また「離別」であれば、悲哀のプロセスを踏むことになります。

    3.変化にうまく対応できないとき
    変化にうまく対応できないのは、古い役割を過大評価したり、新しい役割を理想化して難しく感じたりという、古い役割と新しい役割のプラス面とマイナス面を正しく評価できないことから生じます。
    DV(ドメスティック・バイオレンス)やアルコール依存症の相手の配偶者が、相手から逃げられないのはこのケースが多いです。

    4.誰ともうまくいかないとき
    誰ともうまくいかないときは、対人関係の欠如が多く、まず感情を表現してみたり、コミュニケーション分析で自分のコミュニケーション・パターンをチェックすることが有効です。

    以下に対人関係療法の参考となる情報を挙げておきます。


    【参考】

    ・水島広子さんの対人関係療法のページ
    http://www.mizu.cx/ipt.htm

    ・クラーマン他著「うつ病の対人関係療法」(岩崎学術出版社)
    対人関係療法の創始者クラーマンらによる最初の対人関係療法の本。
    しかし、在庫切れで手に入らない。
    http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4753397009/qid=1129689417/sr=1-10/ref=sr_1_10_10/249-8610969-5145116

    ・ウィルフリィ他著「グループ対人関係療法――うつ病と摂食障害を中心に」(創元社)
    対人関係療法のグループ療法版。
    http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4422113461/qid=1138595564/sr=8-11/ref=sr_8_xs_ap_i11_xgl14/503-8966795-0775119


    この本は3部構成になっていました。
    第1部「あなたの人間関係をチェックしよう」は第1章~3章まで。
    対人関係療法を始めるにあたって、自分の現状を把握することや治療を始める前に前提となる事項を説明する部分になっています。

    第1章は「対人関係がストレスを高める」というタイトルです。
    対人関係のよしあしを左右する重要な要素は「自尊心」、つまり、
    自分を大切にし自分の存在を肯定する気持ちのあり方だと書かれています。
    自尊心の低い状態にあると、自分自身を肯定できないため、 他人に自分を認めてもらうとか、他人と素直に接することが難しくなります。
    そのため、対人関係のトラブルを抱えることが多くなってしまうというわけです。
    そして、これが原因でストレスを抱え、その結果、対人関係をさらにゆがめてしまう、という悪循環に陥りやすいということです。

    第2章では、自分の「重要な他者」とは誰かを見極めること、
    その人との関係はどうかチェックしてみること、
    その人との関係において何がストレスとなっているのかを分析すること、
    などについて、具体的なチェック項目シートが用意されていました。
    さらに重要なこととして、問題点の分析ができたら、
    自分が次はどの順序でどの治療をすべきかの優先順位を決めておくこと、が勧められていました。

    第3章は、「コミュニケーション上手になろう」というタイトル。
    この章のサブタイトルだけを並べてみると、
    ●できるだけ「言葉」で伝える
    ●間接的な言葉は誤解のもと
    ●勝手に納得しない
    ●相手はわかってるはずだと思い込まない
    ●むずかしいことは手紙で伝える

    このあと第2部「それぞれの問題への取り組み方」に続きますが、
    第2部では具体的な事例を挙げて、それにどのように対処していくかが書かれています。

  • ときどき読み直す。結構助かる。

  • 人のストレスの原因のほとんどは対人関係なので、家族や恋人など「重要な他者」、友人、仕事の人たちとの間のコミュニケーションの方法を変えたり、お互いの相手に対する役割期待のズレを改善していくことで、健康な心を保っていくという対人関係療法。ケース毎に分かりやすく解説されているし、方法も実践的。様々な「困った」を解決するのにとても役立つ。面白かった。

  • 覚醒剤使用者の名前がカクさん、流産した人はリュウさん…といった安易な命名に抵抗感がある。

    それはさておき

    とくに、
    第3層は重要ではない。
    あなたはそう思うんですね、で済まして自分の領域には入れないこと!

    とはいえ、気にしてしまうが、心の平穏のためにはそうだらうな。



    沈黙は金ではない。
    言葉にしないとお互いにわからない。
    手紙でも良いのでコミュニケーションを取る。

    第1層とのコミュニケーションを諦めない。
    役割の変化と新しい人間関係。


  • 読みやすい。
    対人関係を3つのクラスターに分けるのは面白いし、現実場面と照らし合わせると納得できる。悩んでいる人はこの優先順位が変わってしまっていることが多いように感じる。

  • 対人関係療法の最も重要な相手、第2層、第3層の関係の見方に目からウロコだった。

  • 重要な他者との関係が一番大事

  • 本屋でフラフラしてたら見つけて思わず買った本。水島広子先生の本としては2冊目です。
    対人関係療法を一般の人向けに実用的に書いていて、すごくわかりやすくて感動しました。
    対人関係療法を学ぼうと思って読み始めたのですが、読んでいるうちに不思議と癒し効果がありました。

    自分の周りの人たちを3つの群に分ける。
    第一層「重要な他者」配偶者、恋人、親、親友
    第二層「友人、親戚など」
    第三層「仕事上の人間関係など」
    その中で優先順位をつけながら、人間関係を整理して不和やズレを検討する。
    ズレを認めて、段階を見極め、再交渉したり、行き詰まりからコミュニケーションを始めたり、離別したりする。
    いろいろな人のストレスケースが、書かれていて、その人の名前のつけ方が面白い。(すぐ「かっ」となるからカットさんとか。)
    心の健康のためには第一層の人たちとどう上手くつきあうかということであるということを再認識させてくれました。

  • 基礎的なことだが大事なことがまとまった良書。
    自分ができているという思い込みを捨てて
    読み直したい。
    沈黙はコミュニケーションで
    一番やってはいけないことだと再認識。

  • ・参考になる ・読みやすい

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著者プロフィール

水島広子【みずしま ひろこ】

慶應義塾大学医学部卒業・同大学院修了(医学博士)。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、2000年6月~2005年8月、衆議院議員として児童虐待防止法の抜本的改正などに取り組む。1997年に共訳『うつ病の対人関係療法』を出版して以来、日本における対人関係療法の第一人者として臨床に応用するとともに、その普及啓発に努めている。現在は対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)、対人関係療法研究会代表世話人、アティテューディナル・ヒーリング・ジャパン代表。主著に『自分でできる対人関係療法』『トラウマの現実に向き合う』(創元社)、『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』(紀伊國屋書店)、『怖れを手放す』(星和書店)、『女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)、『自己肯定感、持っていますか?』(大和出版)、『「毒親」の正体』(新潮新書)などがある。

「2022年 『心がスーッとラクになる 世界の美しい文様ぬり絵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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