心理療法の光と影 援助専門家の《力》 (創元アーカイブス)

  • 創元社 (2019年1月18日発売)
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本 ・本 (184ページ) / ISBN・EAN: 9784422114903

作品紹介・あらすじ

《援助専門家のための必読文献、待望の復刊》
なぜ人は、人を助けようとするのか。なぜ、善意の援助が人を傷つける結果を招くのか。ユング心理学の立場から、援助する人とされる人の間に起こるダイナミックス(力の関係)を解明し、援助専門家の内に潜む〈影〉や〈悪〉の問題に鋭い光をあてる。医師、ケースワーカー、カウンセラー、看護師、教師、牧師など、あらゆる援助専門家の必携の書。

感想・レビュー・書評

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  • あっしのようなものにはこんな本は早すぎる…(T T)もうこれは、老獪な、あるいは中堅となった心理療法家が読んで自らの戒めとするための本だ…(ちなみに、グッゲンビュール先生は医師でもあり、ソーシャルワーカーや看護師の育成にも携わっておられるそうで、この本もソーシャルワーカーの話から始まる。本来は、対人援助職につく全ての人のために書かれたものだそうだけど、今時の医者や看護師、ソーシャルワーカーにこの本の言っていることがわかるだろうか…?)

    もちろん、学びはたくさんあったのだけれど、その中から、特に心に残った点を。

    ■私たちはお互いをファンタジーで包んでいる
    たとえそれは言葉で伝えられることがなくても、出会った瞬間からお互いにファンタジーを抱き、それで相手を包む。相手はそのファンタジーの通りにはならないけれども、そのファンタジーが相手の可能性を引き出し、生かす。
    そうそうそうよね!それはすごく納得する。

    オンラインで会うことの残念なところは、お互いにファンタジーは、多分生身で会うよりも多大に抱くものの、それが決して相手を包むことはないというところだろう。
    そのことが、私たちにどんなひび割れをもたらすか…
    これは考えるに値するissueだと思う。

     
    ■身体性
    私たちは一緒にいるとき、身体性を伴っている…あー書くと当たり前なんだけど、
    友人と一緒にいるときはその身体が心地よいはずだ!という指摘になるほど!と。
    確かに、一緒にいることが快い人が友人で、一緒にいて嫌な感じのする人と友人になったことはない(笑)

    それも、オンラインだとほぼ削がれる部分よね。
    もちろん見た目とか、背景とか、声とかが嫌ってのはあるけど…

    その人の匂いとか、空気感とか、そういうのが好きか嫌いかは判断できない、感じ取ることができない。

     

    ■関係の元型
    「元型」が、独立した個別の元型ではなく、関係の元型として指摘されているのは興味深いと思った!たとえば「母親-子供」元型、「父親-子供」元型など。
    確かに、子供なくして母親にはなれない。ということは、この元型は、子供あっての母親であり、母親あっての子供であり、「母親-子供」という関係の元型なのだと。
    うーん。面白い!
     

    他にも、暴力が生まれるのはなぜか(攻撃を他者に向け続ける人がいるのはなぜか)とか、もちろん、治療家としてどのように自分の持つ力に自覚的でいられるか、「影」と「悪」、影が理想を攻撃することによって生じる成長などなど、考えさせられる刺激に満ちた本だった!

     
    なのに星4つで5つでないのは、読む私に全てを受け取れる力量がまだないってことで!

  • 先月から旅の途中にも読んでいたのですけれども、この手の本にしては読みやすかったにも関わらず、ハッとするところも多くてじっくり読んでしまいました。

    援助専門家っていうのはこの本では主に分析家(日本ではそんなに身近じゃない~)のことが主ですが、それだけでなく

    ソーシャルワーカー、医者、治療者、教師といった職業的なものから、親子関係にまで言及してくれています。

    まあ日本では、正式な資格があるわけではないけれど(臨床心理士は資格アリ!)、カウンセラーやセラピスト、はたまた占い師もそういった仕事に入ると思われます。

    この著者はユング派なので、フロイトのように精神科医に限ったことではなく、広く人を助ける人々のことを述べています。

    分析家ってまあ、自己認識を助ける専門家で、分析の中では夢分析などがよく使われていたりします。

    私はカード分析?カードリーディングをしていますから、夢もカードも

    象徴 を扱うセッションになります。

    どんな援助をするにあたっても、その役割にきっちりハマる!ことをこの著者はヨシとしていません。

    むしろ、相互関係にあって、どちらかが癒し手でどちらかが癒される、というところにハマるとかえってセッションや治療が上手くいかないことを様々な例を出して指摘してくれています。

    これは親子関係だととてもわかりやすいし、様々なところで見られるのですが………

    親は 親 という役割にハマりこみ、完璧であろうとしたり(完璧なんてないのに)、子供の権限を全て握ったりします。子供を所有すると言ってもいい。

    子は 子 という役割にハマりこみ、依存したり、親まかせにしたり、親のせいにしたりします。まあ養育されている段階(自分で稼げない)では仕方ないですが、だからと言って、進路まで親まかせ?っていうすでに大人の年齢に達している子供というのもいます。

    親は子に育てられる、教えられるという言葉もありますが、お互いに影響を及ぼし、与えたり与えられたりすることが健全?良好
    ?な関係であるのです

    親の役割にはまってしまって、ご自身が子供の時のことをすっかり忘れてしまう親というのは、親の役割にハマりこみすぎてしまい、一見、いい親のように見えるけれども、実のところは機能不全を起こしている、と言えるのです。

    これ、治療関係や、私のやっているセッションでも同様です。

    私が占い師、リーダー、ってところで高みの見物(嫌なかんじ~)をしてたらいいセッションになりません。

    私自身が経験したことも含めて(とはいえ、そこに当てはめすぎるのもダメなんだけど、難しいとこ)、そして私がお客さんである経験も含めて(占われるの、リーディング受けるの好き!)セッションしていくことが大切です。

    占い師やスピリチュアルリーダーの中には、ある一定のスキルがあるからと言って、自分のことを脇に置いて、ただ見る!ってことをするパターンもあるのですけれども………

    それって親が親の役割にハマりこんでいるのと一緒で、一見よさそうに見えるし、信頼できるけれども……………

    ってことです(汗)

    要するに、助ける人、助けられる人ってやっちゃうと、助ける側の影や闇を知らず知らずに助けられる方に投影してしまって、ずっと依存関係が続く(そういう書き方じゃないけど、まあそういうこと)ってことなんです。

    親子も一緒。子供に親にしてもらってる、幸せにしてもらってる、教えてもらってるところっていっぱいあるし………

    子供と関わることで、自分の子供時代のトラウマや、葛藤が癒されることも非常に多いです。

    自分の親との関係が癒されることも。

    そういう相互関係、相互依存(一方的ではない)って大切なこと、ってことなんです。

    『自立!自立!』って目指す人の中には『依存は全部ダメ!』的に思ってる人いますけれど、それはそれで機能不全に陥って上手くいかないよ、ってことなんです。

    立場を問わず、助けたり、助けられたりってだけでなくて、お互いに影響を与え合っている、ということをいつでも認識していたり、体験することが大切なんです。

    親である方は、子供心を忘れずにいることが重要です。

    もしも、子供の時のこと忘れてしまったら………親であることに頑張りすぎてしまって、それが原因(!)でもしかしたら親子関係が難しくなってしまっている、って考えられるんですよ~

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