これだけは知っておきたいPTSDとトラウマの基礎知識

  • 創元社 (2015年8月21日発売)
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本 ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784422115405

作品紹介・あらすじ

記憶や神経系との関連、向精神薬の効果、様々な心理療法の活用、マインドフルネス、瞑想、ボディワークの活用……。PTSDとトラウマから回復するために知っておくべき基本的なことがらを、PTSDとトラウマの治療に携わってきた著者が自らの経験に基づき、学派や技法にとらわれない公平な視点でやさしく丁寧に説き明かす。当事者・治療者にとって必須の理論と治療実践のノウハウを包括的に網羅・凝縮した必携コンパクトガイド。

感想・レビュー・書評

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  • 素人なりに、分かりやすく基本的な事が網羅されているように感じた。
    PTSDによる大変な抑うつ症状があるなかで懸命に読んだが、回復のための一助になった。

  •  医学や科学の知識は日進月歩なので、できるだけ最新の知見に触れておくことが重要である。ところが往々にして、『最新の知見』という代物は学術論文と大差ない難解さ(=専門家による専門家のための専門的文章)だったり、英語であったりする。
     この本を星5つとした理由は、これらをクリアしたうえでさらにお勧めできるためである。おすすめポイントは次の5点。

    1.割と最近の知見に基づいている(原著は2011年に刊行)。
    2.業績研究の問題点にきちんと触れていること。特定の技法をお勧めしすぎず、排除もしていないこと。
    3.各章(15章ある)のすべてで、具体的事例を2つ以上あげていること。
    4.過去のトラウマ記憶と『向かい合う』ことを解決課題として限定していないこと。
    5.グラウンディング(地に足がついてる感。今ここに居る感)や、ブレーキの問題に触れていること。

    1.については、原著の発行以降に、DSM-5が発行されたので、これに関しては翻訳者によるあとがきに詳しい。それ以外は、いくつかの療法やグループセラピーの問題点などを指摘しており、『知識の更新』に役立つ。

    2.について。
     『悪意の情報を見破る方法』などでも指摘されているように、特定の療法業績を研究する際は『この療法が効いた事例』にバイアスがかかり、『複雑な事例』は排除されがちである。しかしPTSDに苦しむ人は、一個どころか複数個のトラウマを持っていたり、複数の療法が必要な場合が大半なのではないだろうか。
     業績研究の妥当性を過信しすぎないように、という本書の警告はもっともである。
     また、第8章に各種の療法が紹介されている。
    「特定の療法が万人に効くわけではない、向き不向きがある。療法家はできるだけ多くの選択肢をクライエントに提供できるのが望ましい」
     という信念に基づいた紹介方法は、(その後に、一つの章丸ごとを著者本人の得意とする療法に割り当てていたとしても)信頼のおける紹介である。

    3.についてであるが、各章の末尾には、内容に沿って
    「このケースではこういう風に適用できる」
    「適用できないが、代わりにどうであるか」
    といった解説がしっかりしている。
     特に、序章で2名のPTSDに悩む人が紹介されていた。その後の章では、かならずこの2名について、章内容に沿っての解説がついている。
     読者はこの2名の状態に沿って読み進めてゆくこともできるので、より理解しやすい。

    4.この本を読んで、もっとも「おお!」と驚いた部分。私は臨床家ではないし、サバイバーなだけで、自分で生き残るに際して色々な本を読んだ。(図書館で読める範囲で)
     大概の本が、『トラウマ記憶を掘り起こして、直面して乗り越える』ことを最大の課題のように書いてあった。少なくとも、こうした本が書かれた時代にはそういった療法が主流だったのであろう。
     ところが、本書は違う。
     『第7章 PTSDを治療する』の治療第二段階が、『トラウマ記憶の早期と処理』なのである。
     では第一段階は?
     というと、『安定化と安全性の確立』に充てられている。
     心や身体、職業生活、家庭生活の安定化、安全だと感じられる状態が確立していないのに、『トラウマ記憶と向き合う』のは危険だと警告しているのである。
     治療のゴールは『クライエントの生活の質(QOL)を改善すること』である、とも明言している。
     未解決のトラウマ記憶があっても、『クライエントの生活の質の改善』が為されるのであれば、この『記憶と向き合う』必要はないし、危険でさえある、と言うことだ。
     クライエント第一を考えるのであれば、この警告はまことに当然すぎるほど当然だが、見過ごされてはならないものだ。また、サバイバーが同じようなサバイバーを支援する際にも、胸に留めておきたいポイントである。

    5.については、ソマティック療法や他のマインドフルネス(瞑想から宗教色をできるだけ抜いたもの)の関連もあるが、特に『ブレーキ』の話と『(防衛)リソース』の話題が興味を引いた。
     まずブレーキとは比喩で、心理的なブレーキを指す。つまり、クライエントもセラピストも、「アクセル」を使って課題に取り組み、不安定になる前に、「ブレーキ」を使いこなして自分の安定性を取り戻せるようになっていなければならない、というものだ。
     そして、さまざまな心的防衛の『リソース』を増やすことの重要性を著者は説く。「一つしかない逃げ道」ではなく「沢山ある選択肢」があればあるほど、フラッシュバックや不都合な状態を引き起こす『さまざまな誘因』への対処がしやすくなる、という訳である。

     すでに他の本でも同様の知見は書かれているのかもしれない。だが、自分はこの本のように、
    ・解り易く
    ・系統だって
    ・偏らないように
     書いた本なら、専門家だけでなく、サバイバーにも、あるいは支援者となる方にも、強くお勧めしたい。
     それ故の星5つである。

  • これは本当に良書で、これ一冊で最新のトラウマ治療についての情報が得られるから持っていて損はないと想う。マインドフルネスにしても詳しく解説してある。

  • 読了:2015/9/27

    「私に起こったことは、誰にも理解してもらえない」
    この言葉にすごく共感した。自分と周りで起きていることの間に、一枚壁ができたようなあの感じ。あれの出所は、この心情からなんだろうなぁ。
    そして、ようやく理解してもらえる人に出会えたときの、救われた感のすごさ。向こうも私を救い主のように崇拝しているし。

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著者プロフィール

バベット・ロスチャイルド(Babette Rothschild)ソーシャルワーク修士(MSW)。認定クリニカル・ソーシャルワーカー(LCSW)。1976年より心理療法に携わる。9年間にわたるデンマークでの勤務を経て、現在、ロサンゼルス在住。全米および欧州にて、セラピスト、コンサルタント、スーパーヴァイザー、講師として活躍を続ける。欧州および国際トラウマティック・ストレス学会、トラウマティック・ストレス専門家協会、全米ソーシャルワーカー協会、身体心理療法米国協会の各会員。米国でベストセラーとなった“The Body Remembers”(2000)(邦題『PTSDとトラウマの心理療法』創元社、2009)をはじめ、5冊の著書がある。また責任編集の「セルフヘルプのための8つの鍵シリーズ(The 8 Key Self-Help Series)」も好評である。

「2015年 『これだけは知っておきたいPTSDとトラウマの基礎知識』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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