神田橋條治 医学部講義

著者 : 神田橋條治
制作 : 黒木 俊秀  かしま えりこ 
  • 創元社 (2013年9月3日発売)
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  • 本棚登録 :37
  • レビュー :4
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422115450

作品紹介

『精神科講義』に続く姉妹編。本書は前書と違い、医師や研究者を目指す医学部学生に向けて行われた大学での講義録である。自身の体験をもとに精神医療現場での治療や診断の問題点について語る内容は、マニュアル偏重主義の現代医療全体への痛烈な批判ともなっている。医師は、どんな状況でも患者のために何かできねばならないという強い信念と、後輩たちへの温かいエールに満ちた本書を、医学領域で生きるすべての援助者・研究者の方たちに贈りたい。

神田橋條治 医学部講義の感想・レビュー・書評

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  • 精神科医・神田橋條治氏の講義録をまとめた一冊です。扱われているトピックは多岐にわたります。主に臨床を前提とした、精神医療に関するお話です。最近、腹の底から「おもしろい!」と言える本に出会っておりませんでした。そんななか、本書はひさびさの大傑作といえます。

    「医学部講義」というタイトルの通り、主にお医者さんのタマゴたち向け、医療関係者向けのレクチャーではあります。しかし、門外漢が読んでも十分に引き込まれる、素晴らしい講義になっていると思います。わたしは「患者」という立場で本書を読みました。

    本書の中には、「患者」にとっても大変示唆に富んだ文章が次から次へと出てきます。少し長い引用になりますが、以下の文章には普通のサラリーマンにとっても考えさせられる深いメッセージが含まれているのではないかと思います。

    "(…)「厄介な人たち」という一群があると思っていれば、こっちの心は厄介じゃなくなるわけだ。「自分はやらない。誰か物好きな人に任せる」とおもっていれば厄介じゃない。(…)青年海外協力隊なんかでアフリカに行く人たちは、ずいぶん苦労をしているけれども「ああもう来なきゃよかった」とは思わないもんね。その苦労を覚悟して行っているわけだから、どこかすっきりしている。中村哲先生も苦労しておられて、がちゃがちゃ悩みはあるだろうけれども、どこかで「そこに自分の生き甲斐があるんだ」とすっきりしておられるところもある。そういうふうに概念化は役に立つのね"(P.25)

    "そして安らぐ方法を工夫する活動が有意義な活動で、自分の価値観の世界が広がったと感じる人はかなり職場復帰が可能なんですよね。どうしてかと言うと、その「安らぐことがいいなあ」と、「安らぐ方法を工夫したり、考えたりすることはやっぱりいいわ。昔は一本気で頭が固かったな」と思うようになった人は、会社の方針の中の仕事でない部分、パワーハラスメントとか、競争とかいうようなことは「あんなものはもうしょうがないんだ」と思えるようになりますから。頭の中で、純粋に自分の生き甲斐を持つ仕事と、仕事にまつわっているさまざまな人間関係とを分けて認知できるようになります"(P.264)

    それから、「なんで?」「どうして?」というWhy Questionが持つ暴力性のようなものを指摘しているところに強く共感しました。わたし自身、他人と話をするときには、「なんで?」「どうして?」という問いを必死に押しとどめ、「何が…?」という問いに変換するよういつも心掛けております。「なぜなぜ5回」、自分に向けた取り組みとしては結構なことです。しかし、それを他人に向けた途端、それは単なる詰問へとすり替わってしまう。

    "説明を求められている、というのは論理的にはそうだけれども、世の中のしきたりでは、もはや「どうして何々しないの?」というのは、説明を求めている文型ではないの。では何か。「ごめんなさい。すみません。私が悪うございました。今後気をつけます」というように応じるのが、社会の文化の中でこのWhy Questionの果たしている現実の機能なのね"(P.76)

    上に挙げた以外にも、精神疾患の患者にとって救いになるメッセージがそこかしこに見当たります。医療関係者だけに読ませていたのではもったいない、と思わずにはいられません。生きづらさを抱えて苦しんでいる、普通の若い方にぜひ読んで頂きたい一冊です。

  • 久しぶりに痛快な本だった。
    神田橋先生に直接お話を聞く機会は一度だけ,ケースカンファレンスであったけど,「何なんだこの人は?」っていう衝撃を受けた。この本はその先生が医学部の学生へ講義したものを文字起こしされたもの。
    九大の医学部生はこんな講義を聞くことができて羨ましい。本文中にも書かれているけど,大抵の医学生は精神科医にも心療内科医にもならない。そんな人達が「精神科」の授業で吸収してほしいこと,それを想定した上で講義が進んでる。そして毎年同じようなことを伝えようとされてるんだけど,しっかりとライブの授業をされている。文字でそれが伝わってくるくらいだから…これぞ臨床家の授業!

  • 神田橋先生の最新刊です。九大医学部でずっと続けられている講義を概ねここ10年ほどの物を集めたものです。「精神療法」についての講義ですが、「人間学」と言っても良い物です。神田橋先生の本は読むと頭が忙しくなります。読んだ後でも頭が忙しくなっているので感想が述べにくい特徴があります。基本は、その人の自然治癒力を大切にし、その人の持っている素質が自由に羽ばたける援助をするのが、神田橋先生の精神療法論の基礎と思います。ただそれを実践で行うのは難しく、先生は常に考えておられ、その考えをこのように披露されているわけです。

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