技芸としてのカウンセリング入門

  • 創元社 (2012年9月21日発売)
4.54
  • (17)
  • (9)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 160
感想 : 15
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

本 ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784422115467

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • カウンセリングとはこういうものだということではなく、クライエントを救うために何をやってもいい。

    「声の調子」を含めた全身を使ったアート(技芸)と言える。

    聴くとは体験の共有まで。

    声の調子を聴く、態度や様子を聴く。

  • 心理職として行き詰まった時、折に触れて読み返している。

    カウンセリングの本質は、来談者が自己の情動を十分に喚起して、体験にじっくりと触れられるように援助すること。一切の価値判断なしに自己の体験に気づき、受け容れられるようになること。
    カウンセラーは自己の在り方、身体を道具にして援助を行う。言葉の内容面だけではなく、音声面にも着目する。呼吸や姿勢に意識を向ける。話し方ひとつをとっても、何をどのような順番でどのような言葉で伝えるか意識する。それら一つ一つの細やかな配慮こそがプロフェッショナルなカウンセリングを生み出す。

    カウンセラーとしての成長発展に大きな希望を与えてくれる、至高の一冊。

  • カウンセリングのデメリットについても書かれているところに惹かれて読み始める。

    以下、印象に残った内容

    ・もっとも重要なものを一つ挙げるようにと言われれば、私は「面接の今ここでクライエントの体験を促進する」ということを挙げるでしょう。
    「体験を促進する」とは、不安や恥辱感や罪悪感など、いわゆる否定的感情を引き起こすという理由で、自分自身が知らず知らずのうちに遠ざけ、抑え込んでしまっていた体験に直接的に触れることができるように導くということです。恐れられ選ざけられてきた体験に落ち着いて心を開くことができるよう導くことだとも言えます

    ・結局、「挫折体験というものは、正面から見つめるには怖すぎるものであり、そんなことは避けた方がよいのだ」というメッセージをその学生に伝えることになってしまいます。挫折体験を、ありのままに、感じたままに、悔し涙を流しながら語るといったことが十分にできたなら、この学生はこの挫折体験を貴重な成長の機会にすることができたかもしれません。
    ただありのままに聴くという行為には、話し手にとってのひどい挫折体験を貴重な成長の機会へと変容させるだけの力があるのです。

    ・カウンセラーは共感しなければならないというわけで、クライエントが「年老いた母親に会うのがつらいんです」と言っただけの段階で、「それはつらいですよね。弱っていく親の姿を見るのは子どもにとってつらいものですよね」などと、クライエントの「つらい体験」の中身を自分勝手に決めつけて「共感的な」コメントをする人がしばしばいます。そういうカウンセラーは、人の内的な体験がいかに他者には計り知れないものでありうるかということを、まるでよく理解していないと言わざるをえない。そうでなければこのようなコメントをすることはありえないからです。このコメントによってこのカウンセラーは、自分の理解のなさをクライエントに知らせてしまったのです。そんなカウンセラーに話をしながら、自分の内的な体験を自由に探究する気になるでしょうか。
    人がその心の中で何を体験しているのかは、本当に計り知れないのです。だからこそ、カウンセラーは、そこに関心を向けて、注意深く探索するように聴いていくのです。

  • 入門というタイトルに相応しく導入的な内容だが、実践的な内容も多く非常に参考になった。特に、話を聞く際の声、呼吸、姿勢について言及したり、「聞く」だけでなく「話す」技術についても丁寧に説明されている。

    ひとの複雑さに触れるときは、一般的な解釈ではなく、相手自身が経験してる真実と、それを受け取った際の自分の違和感との擦り合わせを、技術をもとに慎重に行っていくことが必要なのかな?と感じた。

    カウンセリングの限界にも言及した上で、さまざまな形で他者を援助していこうという希望を感じる良本だった。手元に置いておきたい一冊。

  • 実習始まる辺りの大学院生以降の人が読むのに適している。ある程度の経験者にとっては、よいふり返りになるお勧めの1冊。

  • カウンセリングの基礎を学べる良書

    noteにまとめ済

  • 他のカウンセリング、傾聴本とは違った視点の内容のため、とても参考になります。
    特にクライアントがカウンセラーに反抗的なケースの対応は勉強になりました。
    本の中で著者がアレクサンダーテクニークを紹介していたので、アレクサンダーテクニークのワークショップに参加しましたが、場違いな感じでした。笑

  • p30 面接の今ここでクライエントのありのままの体験を促進する
    p30 その土壌となるのが、信頼感や安心感のある人間関係です。

    p49 クライエントの話の内容だけに注意を向けてはいけません。声や表情、視線、姿勢
    態度、話しぶりなどに注意を向け、そうしたチャンネルを通して伝えられるメッセージを受け取るように聴きます。
    p50 その問題に、その問題のままで、じっくりと身を浸してみること。その問題をありのままに堪能すること。その問題のテイスト、感触、雰囲気をじっくりと味わうこと。
    p57 慰めないことがカウンセリングこ目標なのではなく、その挫折体験を「目覚めさせる体験」にまで高めることがカウンセリングの目標なのです。

    p109 声の表現における要素
    大きさ
    高さ
    速さ

    声色
    抑揚
    アクセント
    リズム
    滑舌

  • カウンセラーはカウンセリングの展開を理論で評価しがちだが、本来は声、姿勢、話し方などが重要な要素でありいわば「役者」と同じものがあるという趣旨。
    具体的な事例に対し、こう対応したらどうかなど丁寧な解説で、読んでいてまるで自分がカウンセリングを受けているような気持ちになった。
    特にマインドフルネスという考え方が印象に残った。
    カウンセリングにおいてクライアントへの無条件の肯定が必須。それを自分に当てはめてみる。自分に思い浮かぶ感情になんの評価も価値も加えずありのままを感じる。こんな自分はダメだとか、なぜこんな人生なんだろう、とか考えずに、自分に湧き上がってくる感情をそのまま。それはありのままの自分を受け入れることであり、なんか暖かい気が身体を流れて行く気持ちになる。

  • 「組織開発の探求」で紹介してあって、タイトルに心がひかれたので読んでみた。

    カウンセリングはサイエンスではなくて、アートなのだ、というのは、まあ当たり前の主張であるようで、当たり前でもないのかな?

    つい理論が先行して、クライアントではなくて、理論の解釈をみているということは多いからですね。

    アートとしての観点からみると、普通あまり言及されないところが気になってくる。たとえば、声の出し方とか、座っている姿勢とか、呼吸とか。。。。

    そうそう、それって、とても気になっています。

    クライアント的には、声の深さみたいなのがすごいインパクトあるという体験が多い。が、そこに言及してあることって少ないですね。

    ディープな声を出す人にきいても、なんらかの発声法を学んでいるわけでもなさそうで。。。。

    というわけで、声の出し方についても、ある程度の分量をもって紹介してあるこの本は貴重。

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

京都大学学生総合支援機構学生相談部門

「2024年 『公認心理師ハンドブック 心理支援 編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

杉原保史の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×