緩和ケアという物語 正しい説明という暴力

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  • 創元社 (2015年7月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784422115931

作品紹介・あらすじ

患者の個々の価値観や状況、医療の文脈を無視して、緩和ケアの「正しい理解」を促すことは、時として倫理的暴力となることもある。ナラティブ・アプローチは患者の個別の物語に固有の価値を見出し、患者を語り手として尊重し、複数のナラティブの共存を認める。患者が抱くストーリーを医療の中心に置いた時に見えてくる世界を、著者が経験した具体的な事例とともに描き出す。医療者だけではなく、がん医療に関心のある全ての方へ。

感想・レビュー・書評

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  • ドグマに警鐘を鳴らす名著

  • 老猫の看取りで不安になっているので、藁を掴もうと読みました。

    ワタシが読みたかった目的とは違うために“今はちょっとしっくりこない”本でしたが

    人間の家族や友人知人、本人にとっての
    緩和ケアは シンプルな“医療”という面だけではない、ということがあたたかい文脈で語られているようでした。

    ぜひ機会が合えば また読みたい本です。

  • 心理学の本を色々読んでいたらたどり着いた本。私は医療従事者でもなく、またその経験もないが、リアリティ溢れる診療の様子が事例として沢山紹介されていて、まるで追体験しているような錯覚を覚え、単純に読み物として面白い。
    ナラティブ・アプローチは緩和ケアの分野のみならず、全てのコミュニケーションにおいて活用できる考え方だと思う。
    「痛み」の定義に関する記載は非常に興味深かった。

    冒頭の「緩和ケアに行かせてください。安楽死させてくれる緩和ケアで死なせてください。」と言う患者に対して、緩和ケアはそういうものではないです.と説教することは、医療的には”正しい”が、ナラティブ・アプローチ的には正しくない。深いと思います。

    ---
    「症状を正しく説明すること」も「痛みを正しく評価すること」も、それ自体、間違ったことを言っているわけではない。しかしそれぞれの医療の文脈を無視して押し付けられるなら、深い傷を残す暴力になることもある。

    「正しい説明」は破壊的な力が潜んでおり、論理的な「暴力」になることもある。普遍的なものが個人と一致そこねて、あるいは個人を包含しそこねて、普遍性への要求そのものが個人の権利を無視してしまう状況では、普遍的なものは暴力になることもある。
    緩和ケアの「正しい」定義も、患者の個々の価値観や考え方、状況を無視して一方的に正しいものとして押し付けられるなら、それは「論理的暴力」として働く可能性がある。

    がんと告知されてから自分のことを振り返るなかで、「自分は悪いことをしたわけではないのに」とか「あれこれのおこないが悪かったのだろうか」と罪悪感を抱いてしまうことはしばしばある。そういうときに、あなたが悪いわけではない、と言ってしまうことは、生まれかけた新たな意識の芽をつむことになるかもしれない。そこで生じた罪悪感を十分に意識することによって、新たな意識が生まれる可能性もある。不用意にこれらのことを指摘することは、下手をすると患者に二重の荷物を負わせることになりかねない。

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著者プロフィール

岸本寛史 (きしもと・のりふみ)
《第6章》
京都大学医学部医学研究科卒業
現在 静岡県立総合病院緩和医療科部長
《主著》
がんと嘘と秘密(共著) 遠見書房 2022年
せん妄の緩和ケア(単著) 誠信書房 2021年

「2023年 『ナラティヴと情動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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