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Amazon.co.jp ・本 (184ページ) / ISBN・EAN: 9784422210735
感想・レビュー・書評
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前半の132ページまでほぼ各ページにカラー図版。活字が無いページさえもかなりある。図版はこの著作のために描かれた物ではなく、年代順の解説に沿って、各時代の奴隷制度の歴史的に(おそらく)貴重な絵画や銅版画などが実に豊富で、かつ残酷です。たくさんのビジュアル情報の威力は圧倒的。これだけの資料収集の努力は並大抵では無いだろうと思う。
著者はフランスの歴史学博士で、本著の内容は大航海時代以後のアフリカから主にアメリカ合衆国、西インド諸島への奴隷貿易や奴隷の扱いや奴隷政策、アメリカ合衆国、フランス、イギリスの奴隷商人や対奴隷政策などが記述されます。アフリカから中南米への奴隷やポルトガル、スペインの奴隷商人や奴隷政策についてもう少し知りたかった気がします。例えばラス・カサス司教の仕事などは紹介してほしかったです。アフリカからの奴隷についての本といえばアメリカ合衆国の本が多い中、アメリカ以外のヨーロッパ諸国の記述は興味深かった。
記述の一部では、ヨーロッパ人や特に自国人であるフランス人に気を使ってか、批判が甘い部分があり、かなり残念に思いました。
133ページ以降185ページまでは資料編「自由への長い道のり」としてアメリカ史研究家の猿谷要さんが執筆。この部分は白黒の印刷だが、やはり豊富な図版・写真が掲載され、ボリュームもあり!一文は一見にしかずのとおり、説得力と読み応えがあります。特にリンチの写真はショッキングなはず(有名な写真だが、別の本では木からぶら下がる2人の死体をわざと消し去った加工写真も見かける)。内容はさまざまな著作の引用文。特にアメリカで奴隷解放・奴隷制度廃止後の黒人の文化面での活躍を述べる文が興味深いです。
さらに巻末に全ての図版の出典や絵画のタイトルが3ページにわたってリストになっているのが素晴らしいです。
なお、本文中「サントドミンゴ島」という地名が何度も出てくる。著者やフランス人はサントドミンゴ島と呼ぶのかもしれないが、これが日本の地図で言うところの「イスパニョーラ島」のことであることが、翻訳あるいは訳註などで全く触れられないのは残念。訳者の知識不足なのかもしれない。
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「...17・18・19世紀の奴隷商人は、残忍な野蛮人ではなく、ナント、ラ・ロシェル、ボルドー、マルセイユ、ロンドン、ブリストル、コペンハーゲン、リスボンなどの善良な市民であり、出身階層もまちまちであった。」
「奴隷商人はみな、良心をもっていた。18世紀のなかばまでは、奴隷制度を国際的な大貿易にとって不可欠なものとして認める人が多かった。奴隷商人は、以下のように考えて奴隷制度を正当化した。奴隷制度はアフリカにすでに存在し、奴隷は、黒人自身やアラブ商人によって売られている。それならば、ヨーロッパ人に買われるほうが得である。...文明に接する機会が与えられ、アフリカ内部で頻発している戦争にもはや巻き込まれなくてすむ。とくに、キリスト教に改宗することができるし、そのなかでもっとも賢い者は、自ら解放されるであろう!」
「ヨーロッパ人は、黒人を『ニグロ』として軽蔑するか、よくて商品か大きな子ども扱いにする。...『他民族』に対する優越意識に浸りきっている。...『西インド諸島のプランテーション経営者は、黒人売買がどのようにおこなわれているかについてまったく罪はない』といったとしても不思議はない。...『アフリカの黒人たちを虐殺や耐えがたい隷属状態から救い、よりよい生活条件を享受させることになる』と確信していた。奴隷売買は、そのうえ王や政府、教会の支持を得ていた!そうであるとすれば、奴隷商人が行なっている行為を誰がまともに非難できるだろうか?」
よく読むと、これらの文では奴隷商人とは、ヨーロッパにいて奴隷売買の計画・指示をするが自分はアフリカに行かない人を指していることがわかる。別のところでは「奴隷商人」という語はアフリカにいて奴隷狩りをし、奴隷を売りつける人を指してもいる。そうするともはや「奴隷商人」は善良でもなく、良心を持ってもいないはず。
しかも、国王や政府、教会を持ち出して、言い訳がましく奴隷商人を擁護しようとしているようにも読めてしまう。
別のところでは、奴隷貿易船の船長がアフリカの部族の首長に会い、みやげ物を与えるのと引き換えに、首長が奴隷市場の開催を命じる。
「奴隷は、木製の熊手状の首輪をはめられて、家畜のように長い列をつくって歩かされる。黒人のブローカーかアラブ人の商人が連行してくる。」
ヨーロッパ人ではなく、黒人首長の配下の黒人ブローカーやアラブ人商人だけが黒人を拉致して奴隷をかき集めて、それをヨーロッパ人が買っただけ、と言っているようにも読める。実際は、ヨーロッパ人が直接奴隷狩りに参加したり、指示・依頼したり、奴隷狩り用の武器を調達・渡したりしたりなど、もっと深く奴隷狩りに関与していたはず。
「...1685年の黒人法は、フランス領植民地で、当時はとても自由主義的で人道主義的であると評価されていた。しかし、その第38条を読むと首をかしげたくなる。『1カ月間逃亡していた奴隷は、耳を切り、...再犯を犯し、さらに1カ月逃げていた者は、ひかがみを切り、...三回逃亡を企てたら、殺すべし。』
残虐な法律に対し、あえて自由主義的、人道主義的と言った上(書かなくてもいい)、「首をかしげる」だけで非難することを避けている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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奴隷制度について具体的に急ぎ足でという感じ。形を変えたこういうものって今でも成立していたりしつつあるのではないかというような気が強くした。世界史で軽くしか習わないのでいい機会になった。
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「知の再発見」双書23。大航海時代の奴隷貿易の始まりから、1800年代の廃止まで、1500万人近くが商品として運ばれた。プランテーションでの過酷な労働、反乱と弾圧。
歴史において重要なファクターであったことを再認識。 -
絵画などが多く分かりやすいが、それがステレオタイプな話ばかりとなってしまっていた。本質を求めるのならば本書は適していないだろう。
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