能力で人を分けなくなる日 いのちと価値のあいだ (あいだで考える)

  • 創元社 (2024年3月27日発売)
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本 ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784422360164

作品紹介・あらすじ

シリーズ「あいだで考える」

不確かな時代を共に生きていくために必要な
「自ら考える力」
「他者と対話する力」
「遠い世界を想像する力」
を養う多様な視点を提供する、
10代以上すべての人のための人文書のシリーズ。



本書は、著者の第4子で重度の知的障害者である星子さんとの暮らしや、津久井やまゆり園事件の犯人「植松青年」との手紙のやりとり、また1977年から通い続けた水俣の地と水俣病などについて、10代の3人の若者を相手に語った記録である。能力主義と優生思想、人とのかかわり、個・自立・責任、差別、脳死、人の生死といのち……などをめぐって話しあい、いのちに価値づけはできるのか、「共に生きる」とはどういうことかを考える。(装画:中井敦子)

感想・レビュー・書評

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  • 【シリーズ「あいだで考える」】最首悟『能力で人を分けなくなる日――いのちと価値のあいだ』の「はじめに」を公開します|創元社note部
    https://note.com/sogensha/n/nb7cc768bfb4a?magazine_key=m1febd99b6deb

    最首悟さんからの手紙 序列をこえた社会に向けて | カナロコ by 神奈川新聞(2021年5月12日)
    https://www.kanaloco.jp/news/social/article-498856.html

    最首 悟 | arsvi.com:立命館大学生存学研究所
    http://www.arsvi.com/w/ss02.htm

    書籍詳細 - 能力で人を分けなくなる日 - 創元社
    https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=4764
    -----------------------------
    (yamanedoさん)本の やまね洞から

  • 能力主義、優生思想、脳死、いのちの価値づけ

    答えるのが難しい内容にも関わらず、
    最首さんの問いに、真剣に向き合い、
    自分の言葉で話す中高生3人。

    自己責任は、個人を重んじる西洋の考えで、
    従来の日本は、持ちつ持たれつ、情けの関係
    成り行き主義で、曖昧にぼかす
    また日本の死生観は、現世は繰り返す輪廻思想。
    日本は、開いた世界で、未来は広がる
    と捉えていた。
    一方、西洋は、因果関係。
    人間が世界を変えることができる。
    創造から始まりいつか終末がくる。
    死はこの世の終わり。閉じた世界。

    明治維新によって、西洋の考えに追いつけと
    必死にやってきたが、
    1970年代から、個人の自立が重んじられる。
    現在は、従来の日本的思考の
    開いた世界の中に閉じた世界が内包していると。

    能力主義とは、自分の力で闘って生きていけ。
    能力主義を拒否したり、その世界に合わない人は、どうしたらいいのか?
    能力主義の世界から抜け出すか、
    又は、その中で上手くやっていこうとする方が
    生きやすいいのか。
    何を大事にして生きていけばよいのか
    選択するのはなかなか難しい。

    高校生の一人が、
    曖昧さをもう少し大切にしながら、
    自分の選択をもう少し丁寧にしようと思うと
    最後に話しているのが、とても印象的だった。

    閉じた世界ではなく、未来に広がる世界に

    最後に、最首さんの言葉を大事にしたい。
    人は必ず、頼り、頼られる。

  •  著者のお一人というか、本書で高校生を相手にして語っていらっしゃる最首悟さんは、1970年代に青年期、学生生活を経験したボクのような世代には懐かしいお名前の方です。
     彼の「水俣」とのかかわりに関心を持っていたボクにとっては、指標的な思想家なのですが、その彼が「あいだで考える」というこのシリーズで、80歳を越えた今、ダウン症で生まれ視力もことばも体を自分で動かすこともできない星子さんというお嬢さんとお暮しになりながら「いのちと価値のあいだ」についてお考えになっていることを高校生たちとまっすぐに語り合っていらっしゃる本書の内容に胸打たれました。
     あほブログに少し詳しい案内を書きましたが、この企画を本にした創元社に拍手!でした。
      https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202504240001/

  • 重度の障害を持つ子の親であり、大学教授である著者と中高生との対話集。いのちとは、価値とは何か。私たちは能力で人を簡単に区別する。それこそ人の本性だが私たちはその本性にどう向き合うべきか。脳死、津久井やまゆり園事件、水俣病についても語る。

    非常に難しいテーマの本です。これ1冊で何かを分かる事は難しく、巻末にあるブックガイドで理解を広げることが必要だと思いました。

  • いつも利用している図書館の蔵書の新刊の中に最首先生の名前を見つけたので、思わず手に取ってしまいました。

    著者の最首先生には、昔、仕事で間接的にお世話になったことがあります。
    先生の人となりは、人づてに聞いたことがありましたが、この本を読んで、最首先生の生き方というか考え方というか、人生への取り組み方というか姿勢というか、そういったものを、直に感じられた気がします。

    この本では、能力主義という言葉が何回も出てきますが、「能力主義を批判する」というよりは、「能力主義を疑ってみる」ことの大切さを訴えているように思います。
    人間はものごとを単純な二項対立で捉えがちですが(例えば、「能力主義は是か非か」)、対立する二項を疑ってみると同時に、二項を丁寧にとらえることで、それらを包含する、より豊かな針路・進路を取ることの大切さを説いているように思います。

    最首先生の懐の深さ、というか、人としての温かさ、というか、物事を丁寧に見つめ考える姿勢、というか、そういったものを感じられた一冊でした。

  • 新聞の書評で見かけた。最首さんが、十代の若者4人との対話を通して、命について考える企画。『なぜ人と人は支え合うのか』で知った最首さんの本なので読んでみた。生きるって何か、命とは、価値とはという、答えのないテーマを4回に分けて対話した記録だ。もちろん、植松死刑囚の話も出てくる。
    最首さんなので、哲学だし思想だし、生きることについて深いんだけれどとても身近に話してくれる。
    思うところはたくさんあるけれど、とても深く心に残った箇所があるので、フレーズ登録ではなくてここに書いておく。


    以下P29から引用
    最首さんがみんなに突然、「『聴す』と書いてどう読むか、わかりますか?」と問いかけました。
     これは「ゆるす」と読みます。「ゆるす」は「ゆるい」や「ゆるゆる」と元は同じらしいんですが、「聴す」と書いて「心をひらいて聞く」意味合いがあるんです。
     普通は、相手に注意を集中させて熱心に聞くことがよしとされますね。でも「聴す」の聞き方はそうではなくて、ぼーっと聞く。心をひらいてぼーっと聞いていると、相手もしゃべってるうちにリラックスしてきて、心をひらく。そこから、相手のことを受け入れる、いいよって言う、「許す」の意味にもつながるわけです。
     (中略)これはケアにおいても非常に大事なことなんですね。
     大切なのは、緊張の反対の「弛緩」っていうこと。人間関係で、お互いがお互いに対して「居る」だけで、ゆるむことがあるでしょう。体がゆるみ、心がゆるんでくる。そういうあり方のひとつを、この「聴す」という言葉が表しているんじゃないか。
     (中略)お互いがお互いを聴しあう関係にある。それもまた「頼り、頼られる」ということです。



    誰かと「居て」、ゆるんでもらえる存在でありたい。

  • 去年の春創刊した人文書の新シリーズ「あいだで考える」、文庫よりひと回り大きい判型で手触りよく軽く、「10代以上すべての人に」と銘打って、ふりがなたっぷり、イラストあり、二色刷り150ページ。巻末には芋づるの元(参考文献&おすすめリスト)。「岩波ジュニア新書」「ちくまプリマー新書」「14歳からの世渡り術」といった中高生向けノンフィクションへの呼び水として相次いで創刊した「岩波ジュニスタ」「ちくまQブックス」と同じような狙い(読みやすい仕様での本格読書へのスモールステップ)を感じる。
    しばらくぶりで出たその6冊目。

  • 個人主義のわたしに、新たな知見を与えてくれた。

    重複障害の娘さんを持つ最首悟さんと、中高生3人の会話。

    いのちの価値とは、能力の高低や有無ではない、というのが一貫した主張。よく分かる。

    最首はさんは、脳死は死ではないという立場。
    私は脳死は死で、臓器提供はむしろしたいという立場だった。
    私の母は臓器提供反対派で「自然じゃない」というようなことを言っていたけど、なんとなくその気持ちにも寄り添えるようになったかも。

    津久井やまゆり園事件の犯人の植松青年は優生思想の持ち主。入所者に声をかけて意思疎通ができない人間を殺していったという。
    成田悠輔氏が「高齢者の集団自決、集団切腹みたいなのしかないんじゃないか」と発言したという。成田氏はとても面白い人だなと好感を持っていたのでショック。この経緯をちゃんと調べたい。

    西洋と東洋の考えの違い
    個人と責任というところで、戦争責任を感じていないというのは深刻な問題。ここは無理にでも考えないとダメだなと思った。
    あなたのあなたとしてのわたし、という考え方に納得した。相手によって態度が変わるのはこういうことか。

    苦海浄土、読みたい。


  • 障がいのあるひともないひとも共に学び、共に過ごす学校を目指す「インクルーシブ教育」に興味関心あるひとにおすすめ。また、脳の差異・特性に注目した「ニューロダイバーシティ」に興味関心あるひとにもおすすめ。

    津山やまゆり学園事件をいまだに受け止めきれていないです。私は「◯される側だ」と感じた、テレビの前で立ち尽くして泣いた日を忘れられないです。

  • 最首さんの、他者を受け入れた上での寛容さが、風通しの良い関係を築く上で必要なことだと感じました。
    一緒に語らう学生さんたちも、じっくり考えて、外れたことをいうことを恐れず、言語化して伝えようとしている様子がとても好印象でした。

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著者プロフィール

和光大学名誉教授、駿台予備校講師

「2023年 『弱さの情報公開―つなぐー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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