現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。

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本棚登録 : 173
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422390031

作品紹介・あらすじ

ブルシャスキー語、ドマーキ語、コワール語、カラーシャ語、カティ語、ドマー語、シナー語……。
文字のない小さな言語を追って、パキスタン・インドの山奥へ――。

著者は国立民族学博物館に勤務するフィールド言語学者。パキスタンとインドの山奥で、ブルシャスキー語をはじめ、話者人口の少ない七つの言語を調査している。調査は現地で協力者を探すことに始まり、谷ごとに異なる言語を聞き取り、単語や諺を集め、物語を記録するなど、その過程は地道なものである。現地の過酷な生活環境に心折れそうになりつつも、独り調査を積み重ねてきた著者が、独自のユーモアを交えつつ淡々と綴る、思索に満ちた研究の記録。

感想・レビュー・書評

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  • 正直な研究者だなと。こういう人が学問を続けていける環境を整えたい。

  • 面白かったです。
    タイトルの通り、筆者はフィールド言語学者でありながら、ブルシャスキー語が通用するパキスタンの奥地に行くことを億劫に思っています。そんな筆者のエッセイ集ですが、世界に正書法の存在する言語が半分しかないことや、方言と言語の区別は非常に曖昧であることなど、興味深いトピックが出てきます。
    個人的には、「フンザ人からパキスタン人へ」という話が好きです。フンザ人は、筆者が10数年追いかけているブルシャスキー語の母語話者で、フンザ谷というパキスタン奥地に住んでいます。筆者は当初、彼らの村的なあたたかさに感動しており、フンザ人自身も1974年までフンザ藩王国に属していたこともあり、下界のパキスタン人と俺たちは違うという強い意識を持っていました。それが、いつの間にかインフラが整備され、観光客も増え、普通のパキスタン人のようにお金大好きになってしまったことを、筆者は嘆いています。
    僕個人としては、経済が発展して田舎が商業主義的になってしまうことは、必ずしも悪ではない。都市から来る観光客こそ商業主義や資本主義の恩恵を受けており、田舎の住人にそうであるなと求めることはエゴだと思います。一方で、インターネットの発達もあるとは思いますが、経済発展により景観は一様になり、人々の嗜好やライフスタイルも均一化する流れがあります。我儘だとは思いつつも、すれていない素朴で美しい土地が残って欲しいと願わずにはいられません。

  • 読了。面白かった。
    山間地方であるカティ語では空間を東西南北ではなく「上流・下流」「上・下」「あちら・こちら・中間」「山の向こう、境界の向こう」等で表現するとあったのが面白かった。
    私は山の方の出身なのだけれど、子供の頃の日常生活では最寄りの大きな山を基準として山の方を「上」、山じゃない方を「下」と呼んでいた。
    (京都の人とかはまた別の感想を持つのだろうか。)
    あと同様にカティ語の出会った時の挨拶の相手が「男から女か」「単数か複数か」、来た場所が「近くか遠くか」「麓の方か頂の方か」からによっていちいち挨拶が変わるというのも面白かった。
    言語は話者の関心事がモロに出るんだなあ…とホワワとした。

    メモ:
    カティ語を話すカタ人はパキスタンの「カラーシャ人の住んでいる谷の奥(アフガニスタンに近いほう)」に住んでいる。
    あとで調べる:
    「ピジン」
    「クレオール」

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著者プロフィール

吉岡乾(よしおか・のぼる)

国立民族学博物館准教授。専門は記述言語学。博士(学術)。1979年12月、千葉県船橋市生まれ。2012年5月、東京外国語大学大学院博士課程単位取得退学。同9月に博士号取得。博士論文の題は「A Reference Grammar of Eastern Burushaski」。2014年より、現職。
大学院へ進学した2003年よりブルシャスキー語の研究を開始し、その後、パキスタン北西部からインド北西部に亙る地域で、合わせて7つほどの言語を、記述的に調査・研究している。著書に『なくなりそうな世界のことば』(創元社)。

「2019年 『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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