美しいアンティーク生物画の本 クラゲ・ウニ・ヒトデ篇

  • 創元社 (2017年6月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (128ページ) / ISBN・EAN: 9784422430232

作品紹介・あらすじ

近年人気が高まる、多色刷石版画や手彩色銅版画などの美しい印刷画。本書は、主に19世紀半ばから20世紀初頭に刊行された百科辞典や図鑑などの挿画プレートから『美しいアンティーク鉱物画の本』の編者である山田英春氏がとくにクラゲ、ウニ、ヒトデの秀作を厳選し収録。写真では到底味わえない絶妙な色彩やディテイルも堪能できるレトロでアンティークな世界。ヘッケルのクラゲ・プレートも収めた小さくてかわいい愛蔵版です。■「解説とあとがき」より、ヘッケルの解説を一部紹介。 10~27頁の図版はドイツの生物学者エルンスト・ヘッケル(1834~1919)の著書『自然の芸術的な形』から。ヘッケルはベルリン大学で医学を学ぶが、学生時代に調査に赴いた北海や地中海で採取した微小な放散虫やクラゲの形に魅せられ、医者にはならず、海の無脊椎動物の形態を研究テーマとするようになった。 1861年、イェーナ大学で比較解剖学・動物学の教授に就任し、引退まで在籍する。 ヘッケルは1859年に刊行されたダーウィンの『種の起源』に大きな影響を受け、自然選択説を強く支持、自らも進化論の解説書を書くなどしてドイツでの普及役を担った。 また、自然界の事象を単一の原理に帰する一元論者となり、反対論者や宗教界との激しい論争を繰り返した。 ヘッケルは精力的に数多くの論文・著作を発表したが、『自然の芸術的な形』(邦訳『生物の驚異的な形』、河出書房新社、2009年)は生物の造形美を見せる一種の画集といってよいものだ。 1899年から10枚の絵が1セットになった小冊子(ばらのシートを厚紙の表紙で挟んだもの)の形で刊行が始まり、1904年に完結するまだに計10回、合計100枚の絵とその解説が出版された。完結後は製本された書籍の形でも出版された。 「自然の」といっても、そこで紹介されているのはカラフルな蝶や熱帯の鳥などよりも、多くが放散虫や有孔虫などの微小な原生生物やクラゲ、ホヤなどの無脊椎生物、藻類などだ。 ヘッケルが着目した美は、生物の体の構造的な美しさであり、放散虫の絵なども生体ではなく、その骨格を見せるものだった。 ヘッケルは今日では生物学の教科書や博物館で普通に目にする生物の進化を示す「系統樹」の考案者であり、読者に原始的な生物も人間もひとつの「起源」から発生したものであるという考えを視覚的に理解させようと務めた。 また、「個体発生は系統発生を繰り返す」という考えのもと、人の受精卵が細胞分裂を繰り返し、尻尾のある魚のような形になり、だんだんと複雑な人間の姿になていくのは、単細胞動物からより複雑な形状の生物へと進化し、魚類から陸上生物へと至る、生物の形の変遷の様子を反復していると考えた。(以下、略)

感想・レビュー・書評

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  • 18-20世紀にかけて写真図鑑が主流になる前の、クラゲやウニ、ヒトデ生物画かまとめられた1冊。
    編集した方が美しさを基準に選んでくれた生物画たちは目を見張るものがある。ラスボスのようだったり、面白い形や顔をしているように見えたり、とにかく美しかったり、丸々して可愛かったり、この時代の生物画だからこそ見える生き物たちの良さがある。
    生物学者が絵がうまいのはきっとスケッチを死ぬほど書くからなんだろうなぁ。

  • ふむ

  • クラゲ・ウニ・ヒトデ篇と銘打たれてますが、他のシリーズは今のところ出ていない模様。
    中身は本当にひたすら、昔の世界の百科事典や論文などから引いてきた美しい生物画を愛でる仕様。
    最後に出典メモと、あとがき解説で描いた人や元の書籍についての略歴がちょろっと10ページくらいついてます。

    それにしても、博物画や系統樹を編み出したことで有名なエルンスト・ヘッケルの画は延々見てたらおかしくなりそうなくらいの装飾と規則正しさ……
    クラゲの触手がジュエリーパーツを組み込んだボールチェーンとかに見えてくる。
    もうこれ架空の生物じゃないかと疑わしくなったり。
    他の国のザ・百科事典の挿絵ですも一緒に鑑賞できてバランスが取れました。

    ブックデザイン / 山田 英春

  • 18世紀前半〜20世紀初頭に発表された、クラゲ・ウニ・ヒトデの図版を集めた画集。特にクラゲの比重が高い。
    『生物の驚異的な形』で著名な、エルンスト・ヘッケルのクラゲの図版も収録されているが、『生物〜』収録分以外の図版も二、三はいっているのが嬉しい。
    クダクラゲにせよ、カツオノエボシにせよ、テヅルモヅルにせよ、呆気にとられるほど奇妙奇天烈な姿をしているのに、精緻な描き込みと大胆な配置によって、それらは美しく感じられる。もしくは、生物が本来持っているデザインの美しさが、描き手のデザインの力によって分かりやすく伝わってきているからなのかもしれない。

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著者プロフィール

山田 英春(やまだ・ひではる):1962年東京生まれ。国際基督教大学卒。ブックデザイナー。古代遺跡・先史時代の壁画の撮影を続けている。石の蒐集家でもある。著書に『巨石──イギリス・アイルランドの古代を歩く』(早川書房)、『不思議で美しい石の図鑑』(創元社)、『石の卵──たくさんのふしぎ傑作集』(福音館書店)、『インサイド・ザ・ストーン』(創元社)、『奇妙で美しい石の世界』(ちくま新書)、『風景の石パエジナ』(創元社)、編書に『美しいアンティーク鉱物画の本』(創元社)、『奇岩の世界』(創元社)などがある。

「2023年 『ストーンヘンジ 巨石文化の歴史と謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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