ことばの白地図を歩く 翻訳と魔法のあいだ (シリーズ「あいだで考える」)

  • 創元社 (2023年6月14日発売)
3.68
  • (19)
  • (65)
  • (41)
  • (3)
  • (5)
本棚登録 : 925
感想 : 74
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784422930992

作品紹介・あらすじ

不確かな時代を共に生きていくために必要な
「自ら考える力」
「他者と対話する力」
「遠い世界を想像する力」
を養う多様な視点を提供する、
10代以上すべての人のための人文書のシリーズ。



『ことばの白地図を歩く――翻訳と魔法のあいだ』

ロシア文学の研究者であり翻訳者である著者が、自身の留学体験や文芸翻訳の実例をふまえながら、他言語に身をゆだねる魅力や迷いや醍醐味について語り届ける。「異文化」の概念を解きほぐしながら、読書体験という魔法を翻訳することの奥深さを、読者と一緒に“クエスト方式”で考える。読書の溢れんばかりの喜びに満ちた一冊。(装画:小林マキ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『夕暮れに夜明けの歌を』では、ベランダで静かに詩を朗唱していた著者の姿が印象的だった。本書購入時にもその面影がちらついていたが、いざページを開くや、些かキャラ変していることに気づく。

    いきなり飛び込んできたのは「Quest 0(クエスト・ゼロ)」の表題。
    「この本をとったってことは、つまりこの本がきみを探していたってことだ。あ、目のまえが白く光りはじめて、光のなかに1枚の紙が浮かんできた」と続く。その白地図をプリントした印刷機が自分に話しかけてきて(驚)、「旅に出て、世界で何が起こっているのかをことばを学びながら知ってきてほしい」と依頼してくる。そこでようやく著者が案内人として登場。印刷機の号令?とともに、「クエスト」が始まる…。

    ?????
    「誰かとの共著なのかな?」と著者名を振り返ったけど、彼女ひとりしか記載がない。上記の謎シナリオに一瞬戸惑っちゃうほど、前作から様相がガラリと変わっていたのだ。
    著者の奈倉さんはロシア文学研究者で翻訳家、大学でも教鞭を取られている。本書は彼女のロシア語学習や翻訳活動の経験・そこから編み出された言語観を通して、10代の若者(恐らく本書のターゲット層)に「ことばを学ぶとはどういうことか」「翻訳で分かる世界の見え方」をクエストの間突き詰めていくというスタイルである。

    はじめにお断りしておくと、見た目のゆるさとは相反して結構奥深い。奥深いというのは、彼女の言語観や哲学のようなもの…と言うべきか。(まとまっていなくてごめんなさい泣)
    例えば原書の翻訳は注釈をつけてもそれが誤情報だったり、読者をストーリーから引き離す危険性がある…というもの。「注釈ついてる!ラッキー!」とすぐ安心するチョロい読者だった自分は愕然。(「今まで読んだ注釈の中に間違いが紛れていた可能性がある…ってコト?」)
    原書を母語とする読者と同じ読書体験を日本の読者にしてもらう為、翻訳者は魔術師のように言葉を構築していかねばならない。原文と原文読者の関係性を完全再現しなければならない。
    これは翻訳の話だけど、本当の世界の見方・理解の仕方って案外こうなのかも。めちゃ気が遠くなりそうだけど。。

    翻訳作業に限らず、ことばにまつわる学習には必ず「妖怪 あきらめ」がついて回る。
    著者曰く、目標を定めても気力体力が切れた時や本当に身についているのか不安になった時に出没するとの事。「妖怪 あきらめ」は表紙の果物台の下から飛び出している黒い物体で、恐らくヒトの幼児くらいのサイズはある。

    でも個人的には可愛いく思うし、何だかんだでヤツも自分の一部である。頑張ろうとしている時にいちいち出てこられるのは困るけど、クエストが原因で事切れないように見守ってくれていると考えれば良いだけの話だ。
    一生懸命な自分の失敗を笑ってはいけないと著者が言うように、クエスト(ことばを学びながら世界を知る)に失敗してもヤツは笑ったりしないだろう。

  • 「10代以上すべての人に」というシリーズのキャッチフレーズがこそばゆい。『夕暮れに夜明けの歌を』も翻訳された本も読んでないが奈倉さんの優しさと真っ直ぐさ、翻訳家としての矜持が伝わる。紹介された本読みたい。露語学び直したい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      111108さん
      図書館にありますように。。。

      しかしアコギな、、、誰も買わないような値段設定するのは、どう言う神経なんでしょうね?
      111108さん
      図書館にありますように。。。

      しかしアコギな、、、誰も買わないような値段設定するのは、どう言う神経なんでしょうね?
      2023/07/10
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      111108さん
      今更ですがインターネット上で読めました

      戦争文学で反戦を伝えるには|逢坂冬馬×奈倉有里|コロナの時代の想像力
      h...
      111108さん
      今更ですがインターネット上で読めました

      戦争文学で反戦を伝えるには|逢坂冬馬×奈倉有里|コロナの時代の想像力
      https://note.com/iwanaminote/n/n09361e5477c3
      2023/07/28
    • 111108さん
      猫丸さん

      お知らせありがとうございます!
      今読んできました。戦争文学に対する考察などとてもよかったです。逢坂冬馬さんもこれから読みたくなり...
      猫丸さん

      お知らせありがとうございます!
      今読んできました。戦争文学に対する考察などとてもよかったです。逢坂冬馬さんもこれから読みたくなりました。
      2023/07/28
  • 遊び心があって、楽しい本でした♪
    するるっと読めながらも、なかなかに感心する部分がありました。
    特に4章は、なるほどなぁと唸りました。
    何度も何度も読書体験を積み重ね、母語の読者が感じる思いを蓄積させて、日本語が自然に出てくるまで読み重ねる。
    「辞書を拡張」していくという考え方。
    二葉亭四迷の「詩想」という考え方。
    ふむふむ。
    あと、外国語の星占いで外国語を学ぶ!
    これはぜひともマネしたい!!

    最近わりと翻訳本を読む機会が増えてきたんだけども、楽しく読書できていて、なんなら翻訳物(海外作品)いいじゃん!と思えてるのは、ひとえにこういう翻訳家さんの努力の賜物なのだなと、感謝感謝です!

  • ロシア文学研究者で翻訳家の筆者による、新しい言語を学ぼうという人向けの、エッセイ。

    そのままでは他言語で伝わりにくい、文化的背景をともなう単語を使った文章について考える、翻訳理論の授業の話がおもしろかった。

    注釈を入れると、読書のリズムが原文と違ってしまう、という教授の言葉には、共感。
    かといって、注釈なしでこの背景をどう伝えられるのか、と一緒に考えてしまうが、模範解答に納得。

    かなり低年齢向けに感じるRPGのクエスト仕立て部分と、本文のレベルのギャップにやや戸惑う。

  • 「多士才々」翻訳家の奈倉有里さん 文学と日常溶け合う日々つづる | 共同通信 プレミアム | 沖縄タイムス+プラス(2021年12月9日)
    https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/876967

    ロシアの中の抗議、沈黙の意味を翻訳する 歴史が示す「今の危険度」 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル(2022年5月29日)
    https://www.asahi.com/articles/ASQ5R755KQ5LUPQJ003.html

    特集ワイド:国家と文学、同一視しないで ウクライナ侵攻1年、ロシア文学者・奈倉有里さんの懸念 | 毎日新聞(2023/2/28)
    https://mainichi.jp/articles/20230228/dde/012/030/014000c

    書籍詳細 - ことばの白地図を歩く - 創元社
    https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=4665

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ベスト 『ことばの白地図を歩く』 | 教文館ナルニア国
      https://onl.sc/chw2ZTy
      ベスト 『ことばの白地図を歩く』 | 教文館ナルニア国
      https://onl.sc/chw2ZTy
      2023/10/11
  • 言語を学ぶ楽しさ、言語を学び続けるためのコツ、学びたい言語圏の文化の理解のしかた…言語を学び翻訳できるように至るまでのルートを分かりやすく楽しく教えてくれる本。
    翻訳したい人は参考にこの本を携帯するのもアリだと思う。読みながらわくわくした。

  •  現代ロシア文学なんて、実は、トンと詠まないのですが、偶然手に取ったこの本で奈倉有里という方のお話を聞いていて、読んで見ようかなという気になりました。
     翻訳というお仕事をされている奈倉さんのおっしゃっていることに頷くことしきりの本でした。
     「あいだで考える」というコンセプトで若い人たち向けでしょうね、こういうシリーズを出している創元社にも拍手!でした。そのあたり、おㇹブログにも、あれこれ書きました。読んでみてください。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202504040000/

  • ロシア語翻訳家の奈倉有里さんによる、RPGのような形で、言語を習得し、本を読み、文化に親しみ、翻訳にまで進む道を自らの経験を交えて歩んでいく一冊。
    言語を学ぶ喜び、読書体験の喜びをうまく表現していると思うし、自らが背負う”文化”は自ら選び取ってよい、生まれや家族に起因する属性に縛られる必要はないというメッセージは非常にポジティブに響きました。

    「10代以上のすべての人に」というメッセージが非常にしっくりくる。
    言語ねえ、いろいろとできるといいんですけど、なかなかすぐに挫折してしまいます。
    この本を手にとって、もう一度やろうかなと思えました。時々読み返しながら、新しい言語・文化に触れることを恐れずに生きていたいと思います

  • 創元社のこの特集はとても分かりやすく、これは斎藤真理子さんに続いて2冊目だ。翻訳を趣味としてやっているので、どうやったら良い翻訳ができるのか、考えるヒントになればと思って手に取った。しかし翻訳者になろうというのは最後の話で、他言語、文化をどのように自分ごととして学ぶのかから入って行くので、逆に本書を読むことで一番確かな意思を持ち、学んで行くコツを得ることができる。語学を学ぶと言うことは、どちらかと言うと外堀から固めて行く方が楽しいし、長続きするのだ。著者の言う良い翻訳者とは「良い詐欺師」になることということも腑に落ちる。実際に翻訳にかかる前に10回以上原作を読む、それから本の詩想を捉えてから実際に訳す時間は短いと言うのもうなづける。楽しく言語を学び、世界の様々な人々と友だちになりたいと言う人にお勧めの本だ。特に、ウクライナ戦争が起き、ロシアを疑心暗鬼の目で見守る今こそ、筆者の専門分野であるロシア文学を読み、草の根の視点で、理解を深めることは、本当に必要とされていると思う。

  • シリーズ「あいだで考える」10代以上の人に 
    創刊のことば
    私たちは、本を読むことで他者の経験を体験できます。本の中でなら、現実世界で交わることのない人々の考えや気持ちを知ることができます。自分と正反対の価値観に出会い、想像力を働かせ、共感することができます。本を読むことは、自分と世界とのあいだに立って考えてみることなのではないでしょうか。

    奈倉さんの3冊目
    文化についてーがなるほどと思わせられた
    「文化が違う」「異文化」って簡単にいうけれど、箸使うか、手か、スプーンとフォークかーみたいなことをすぐに想像してつまり、生活様式の違いなのだけれど、実はもう相当西欧化していて、むしろ私たちが150年前にタイムスリップした方がカルチャーショックは大きいはず。
    そもそも「文化」という言葉自体に膨大な意味、解釈があり、誰もが同じようにその語を理解しているわけではない。「あの人は文化的だ」「〇〇文化」。前者は、芸術への造詣が深いとか、マナーや礼儀を重んじるとか、文明と意味が近い。後者は特定のグループ、集団に帰属する独特の生活様式がイメージされる。「消費文化」のように社会の特徴を表すときにも使われる。
    テリー・イーグルトン 肯定的なものと否定的なものとの両極で文化の概念は揺れている 文化概念の社会史は、類のないほど錯綜し、両面的なのである。ー
    「文化」という語が歴史の中で担ってきた数多くの意味やニュアンスをひもとこうとしている
    無数の解釈のうち、作者が大切にしている考え方「文化とは人と人とがなにかしらの共通の様式を用いて理解し合うための営みである」ー私も同感です!それは、かつてはコンセンサス(合意)の領域であった文化が、今やコンフリクト(闘争)の領域へと変貌してしまったー互いの違いを強調し優劣を決めたがるようになってしまった現代にはこの解釈は大切!

    外国に暮らしていたというと、すぐに「文化の違いで困ったことや戸惑ったこたはありますか」と聞かれるが、それは質問の立て方がすでにおかしい。「外国」と聞いて、すぐに「異文化」というイメージにつなげてしまう人がまず、認識を改めなければいけないのは、「文化」の枠組みは場所で(ましてや国籍や民族で)決まるものではないということ。「異文化」という考え方には、前提として「自分の属する文化」というものが不可避的に(自分が選び取ったものでなく生まれた国や民族に帰属させられるものとして)想定されていて、〇〇文化に結びつき、簡単に排外的な姿勢につながる。
    東京都教育委員会「日本の伝統・文化理解の教育の推進」
    には、「異文化を、理解し大切にしようとする心は、自国の文化理解が基盤となって、育まれるもの」不可思議な説明。「異文化」の対義語が、なぜ「自文化」「自分の文化」でなく、「自国の文化」なのか?国という概念はどこからなんのために出てきたのか?こうした箇所に根拠なく、暗黙の了解のように侵入してくる概念には、およそなんらかの支配的で扇動的な思惑がある。
    この資料では、七夕や三味線や茶道などいかにも日本の伝統文化的なものが挙げられ、日本人としてのアイデンティティの確立が唐突に「伝統・文化理解教育」の意義として示される。例として挙げられている伝統や文化にはなんの罪もないが、「異文化」と「自国の文化」を線引きし、特定の国籍の人が属するものとするのは強引だし、間違いだ。七夕も三味線も茶道も元々は、日本や中国といった概念がない時代に、ユーラシア大陸や琉球諸島といった他の地域から伝わってきた風習や楽器などが発展したものだ。
    エドワード・サイード いかなる文化も単一で純粋ではない。全ての文化はハイブリット(雑種的)かつ、混種混淆的(ヘテロジーニアス)で、異様なまでに差異化され、一枚岩ではない。
    文化に「異」とか、「純粋」とかつけることが撞着語法(辻褄の合わない単語の組み合わせ)なのだ。
    文化というものは、自国/他国(異国)の線引きになじまない。文化を学ぶことはむしろ反対に、「〇〇人としてのアイデンティティをほぐし、解消し、もっと広い地平に踏み出すこと。
    それにはまず大前提として、人には自分の背負う「文化」を選び、学ぶ権利がある。作者は、小さい頃から好きだった本や小説や詩の世界が、自分が最も重要とみなしている「文化」である。たとえば、日本にいても、「トムソーヤの冒険」も知らないし、「メリーポピンズ」も、トルストイもユゴーもメルヴィルも病んだことも聞いたこともないという人とあまり会話が続く気がしないが、国際翻訳者会議に出れば、どの国籍の人とも容易に通じ合える。
    思うままに好きな文化を選び、その知識や技術を磨いていけば、誰でも世界中に「共通の文化」を担う人を見つけられるから。

    自分は何かなーと考えた。
    「文化の脱走兵」で、「クルミ世界の住人」の中で、誰でもクルミが好きで美味しく食べられれば、それだけで文化の共有なのだし、バイク好きの人たちが、バイクが好きって顔をしていて、雰囲気でわかっちゃうっていうのも、バイク好きっていう、感覚を無意識に分かっていて文化を共有していることなのだと思う。

  • シリーズ「あいだで考える」創刊のことばが好きでした。

    (一部引用)
    私たちは、本を読むことで、他者の経験を体験できます。
    本の中でなら、現実世界で交わることのない人々の考えや気持ちを知ることができます。
    (…)本を読むことは、自分と世界との「あいだに立って」考えてみることなのではないでしょうか。

    本書は「あいだで考える」シリーズの第三弾。ロシア文学研究者・翻訳家の奈倉有里さんが、自分で運命のことばを選び取り、好きな文化の担い手となって、翻訳業を成すためのコツを書いています。

    奈倉さんの言葉遣いは時折とても刺さるものがあり、今回は「ことばの子供時代」という話題が特にじんわり来ました。

    (引用)
    ・ことばを学ぶと、子供時代を体験できるみたいで楽しいね。
    ・子供は間違えてもいいし、舌足らずでもいいし、まだまだ知らない単語がたくさんあってもいい。そのことばの世界に生まれてきだけで、じゅうぶん偉いのだ。

  • 『ことばの白地図を歩く』
    ロシア文学の研究者であり翻訳者である筆者が外国語の学び方を小・中学生にも分かるような優しい言葉で指南します。ジュニア向けですが大人で外国語を学びたいと思う方にも発見が多くある本ではないでしょうか。迷信のコラムやロシア語に興味を持ったエピソードが良かったです。

  • 奈倉有里さんの新刊。同時に、創元社が企画する「10代以上すべての人のための人文書シリーズ」~あいだで考える刊行の一刊でもある。

    遠くて近い、近くて遠いロシア。
    子供のころはただ、「怖い国、人種」と言うような感覚で見ていた。
    歳をとり、時間が出来てくると、世界の中に占めるスラブ民族が培ってきた文化、芸術、そのほか生活に根差した諸々に興味が出てきた。
    手始めに始めたのが Eテレのロシア語講座~があえなく、瓦解。
    折からのロシアによるウクライナ侵攻でフェイドアウト。
    録画していたストックも見る樹、聞く気が失せ削除した。

    時を同じくして関心が募ったスヴェトラーナ、フィリペンコの作品群、片っ端から読み、奈倉さんを知る。
    10代で読む~個人的に言えば12,3歳のころ、春の曙時?むくむく湧いてくる知的好奇心、そして学業に物足らなさを感じ、理系?文系?あるいは学際的なジャンル?乱読乱聴時間である。
    内容は分かりやすく、紐をたどるように次の場面が展開していく仕組み・・1日もあれば読める。そして指針も用意されており 愉しい。

    神西さんの名前が懐かしく、その誤訳?も紹介されていたが・・明治大正昭和、まして世界中がネットで一瞬につながる現時点で(あの時)を語れないのは自明の理。よくぞ、先人はここまで歩んできたと感嘆するばかり。ツルゲーネフ、プーシキンはいまいち肌が合わなかったが、語学講座で番組内紹介でいろいろ教えられた料理,エセーニンは脳裏に焼き付いている・・出来れば彼の子興味にも足を踏み入れたかった。

    奈倉さんは文字を通しての【間をつなぐ】職人・・してみると音楽、料理、手工業・・みな同類の匂いがした。

    米倉さんの夭逝が哀しい。

  • この春創刊した人文書の新シリーズ「あいだで考える」、文庫よりひと回り大きい判型で手触りよく軽く、「10代以上すべての人に」と銘打って、ふりがなたっぷり、イラストあり、二色刷り150ページ。巻末には芋づるの元(参考文献&おすすめリスト)。「岩波ジュニア新書」「ちくまプリマー新書」「14歳からの世渡り術」といった中高生向けノンフィクションへの呼び水として相次いで創刊した「岩波ジュニスタ」「ちくまQブックス」と同じような狙い(読みやすい仕様での本格読書へのスモールステップ)を感じる。

    シリーズ3冊目は私にとっての本命(このシリーズを知るきっかけともなった)。ロシア語ロシア文学にどっぷりひたって生きてきた著者による語学指南から読書のすすめを経た翻訳入門はRPG仕立てにもなっていて、読んだ勢いであたらしい言葉に挑戦するか英語や古語などを学び直したくなること必至。
    目標があってもなくても語学はできるし、「異文化と自国文化」のような雑な分断をあおる考えかたは徹底的に疑いたい。自分の感覚をとぎすまして言葉や生活を経験しながら、本の世界の魔法にかかりその体験を他の人にも伝えるべく翻訳にたずさわっている著者の流儀を知ることで、「翻訳」は言語をただ横から縦にするだけじゃない複雑な営みだということがよくわかるし、たとえば小説の映画化やアニメ化なども、仕事や教育もみな「翻訳」だなあと思った。

    それにしてもスラヴ語界隈は米原万里、黒田龍之助、そして奈倉有里と、定期的にとんでもない逸材(語学力はもとより話術が巧みな個性派)がでてくるのがすごい。亀山郁夫とかヌマヌマもいるし…。

  • 誰かの感想で興味を持って読みたい本棚に入れたと思うんだけど、語学学習の本だとは思ってなかった。ロシア語って事で、米原万里さんの「不実な美女か貞淑な醜女か」を思い出しましたが、同時通訳者と翻訳家では立場が違うし、少女時代をロシア語学校で過ごした米原さんと、日本でロシア語学習を始めた奈倉さんもまた立場が違いますね。ただ、母国語以外を学ぶことで、母国語以外の考え方・感じ方に触れる事が出来る、今いる世界を多角的に理解するための鏡の様な物だと考えているので、他言語を扱える方のお話は楽しいです。
    英語は中学からずっと、大学でドイツ語やって、卒後にちょっとNHKの語学講座見たりして、息子が大学でスペイン語を選択したのでラジオの語学講座を聞き始めて、全部モノにならずに中途半端だけど、何度でもふうん、へええ、と思えるからお得なのかな。

  • こちらも図書館本。今日返却期限だったので急いで読んだ。

    「あいだで考える」は10代向けのレーベルらしいけど大人にも必要なことが書かれていると思う。

    最近、言葉に丁寧に向き合っている人の文章を読むのが好きだ。
    翻訳のためのさまざまな技術が紹介されている。原作者の想いを汲み、翻訳する技術に尊敬の念を抱く。
    自動翻訳が簡単にできる時代であっても、翻訳者はいなくならないし、いなくなってはいけない。

  • 易しく優しく丁寧で、そして深い奈倉さんのエッセイの文体は、読んでて本当に心地が良い。

    文学案内本かと思って手に取ったが、どちらかというと語学本だった。今まで色んな語学本を読んできたが、いちばん軽やかに書かれていると感じた。簡単や安易さでなく、苦しさ厳しさばかりでなく、目標が明確でなくとも習得したい言語にまつわるガラクタアイテムをどんどん集める的な子供時代のような楽しさでいいじゃん、という素敵な考えだ。とは言え、著者のロシア語に向き合う忍耐強さと知性の分厚さは相当非凡なのだが。。。

    大人の学び直しのきっかけにもなる良書。

  • 著者はロシア文学研究者翻訳者であるため、ロシア語の例がほとんど。参考文献も。母語以外の言語に出会い、学び、翻訳に至るまでの大雑把な道のりを示している。自分には遅すぎる感が半端ないが、それでも楽しむことを忘れないようにしたい。

  • 言語や翻訳についての話だけではなく、どの章も生き方や価値観を揺さぶるような、掘り下げた内容ばかりだった。中でも文化についての文章にはぐっときた。

    ” 文化を学ぶということはむしろ反対に、「◯◯人としてのアイデンティティ」をほぐし、解消し、もっと広い地平に踏みだすことなのだ。” p.58

    この本に10代で出会える人がうらやましい!

  • 言語の習得や翻訳の極意をRPG風に描いてくれてる。
    作者の文学に対する真摯な姿が胸を打つ。
    巻末のブックガイドもいい。

    巻末記載の
    『戦禍に社会学者はなにができるか』
    エカテリーナ・シュリマン著
    奈倉有里訳・解説
    岩波書店編集部note
    これは一読の価値あり。一読といわず、何度も。

全66件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1982年東京都生まれ。ロシア文学研究者、翻訳者。ロシア国立ゴーリキー文学大学を日本人として初めて卒業。著書『夕暮れに夜明けの歌を』(イースト・プレス)で第32回紫式部文学賞受賞、『アレクサンドル・ブローク 詩学と生涯』(未知谷)などで第44回サントリー学芸賞受賞。訳書に『亜鉛の少年たち』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著、岩波書店、日本翻訳家協会賞・翻訳特別賞受賞)『赤い十字』(サーシャ・フィリペンコ著、集英社)ほか多数。

「2023年 『ことばの白地図を歩く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

奈倉有里の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×