隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ (シリーズ「あいだで考える」)

  • 創元社 (2024年8月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784422931180

作品紹介・あらすじ

シリーズ「あいだで考える」

不確かな時代を共に生きていくために必要な
「自ら考える力」
「他者と対話する力」
「遠い世界を想像する力」
を養う多様な視点を提供する、
10代以上すべての人のための人文書のシリーズ。



いま、韓国の文学、音楽、ドラマや映画に惹かれ、その社会や言語に関心を持つ人はますます増えている。本書では、著者が韓国語(朝鮮語)を学び始めた背景、この言語の魅力、痛みの連続である現代史と文学の役割、在日コリアンと言語のかかわりなどを、文学翻訳の豊かな経験から親しみやすく語る。文字、音、声、翻訳、沈黙など、多様な観点から言葉の表れを捉え、朝鮮半島と日本の人々のあいだを考える1冊。(装画:小林紗織)

みんなの感想まとめ

言葉や文化を通じて隣国の人々との理解を深めることがテーマの本書は、韓国の歴史やハングルの成り立ちについての知識を豊かに提供します。著者は、自身の韓国語学習の背景や文学翻訳の経験を交えながら、言葉の多様...

感想・レビュー・書評

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  • 非常に良本だった。
    たくさん自分のノートにメモをとりながら読んだ。
    なぜ私は日本人なのに自国が行った悪い歴史のすべてを知らないんだろう。

    31歳で延世大学語学堂に留学され1年半ソウルに住んだ。韓国留学から戻ってきた、1992年以降学んだことが役に立つ機会はあまり多くなかった。文芸翻訳をやるようになったのはふとしたきっかけからで、50代半ばになってからだった。

    2つの言語がほんとに重なったと感じることもある。韓国語でなければ日本語でもない、もしかしたら言葉さえない、言葉になる前の何かを重層的に体験しているような。
    言葉は文脈によって花開きもするし、人を殺しもする。日本列島と朝鮮半島の長い歴史をみわたしながら、人を殺さない言葉をみつけることができればと願う。
    韓国では朝鮮という言葉は、朝鮮時代を指す歴史用語は頻繁に使わない。韓国に住む人や韓国から日本へ来て間もない人が聞くと、日本による植民地時代のイメージと、結びついて悪印象を生み出すことがあると知っておこう。
    この言語と文字に出会うきっかけ
    子どものころから縄文土器のかけらを拾うのが好きで考古学を専攻
    その考古学が植民地支配に協力していたことを知りダメじゃんとなる
    妓生観光問題、在日コリアンへの差別、決定的だったのは光州事件
    休み時間に今ではフェミニズム研究会と呼ばれそうなサークルに行くと「韓国では大変なことが起きている、学生が殺されている!」
    在日コリアンの知人「少し良くなったと思ったのに、祖国はなぜどんどん遠くへ行くんだ」
    それから5年後おぼつかない技術で翻訳するようになっていた。
    茨木のり子という詩人
    語学をしゃにむにやることで、哀しみのどん底から立ち直ろうとしていた。
    隣の国の言葉ですものは魔法のように素敵な言葉だが、よくよく見つめれば隣にも国にも、矛盾と痛みと、ねじれがあった。
    運が良かったのは、大学内に朝鮮語を勉強するサークルがあったことだ。
    2014年4月16日セウォル号事件
    亡くなった304人のうち250人が高校生
    1990年代後半以降に始まった企業の自由な利益追求と競争を助長する新自由主義的な政策がもたらした最悪の結果だった。
    3・1独立運動
    1919年日本統治下の朝鮮で始まった独立運動。全国に波及したが、日本語側は軍隊や警察を出動させてこれを鎮圧、数千人の死者、5万人近い逮捕者が出た。現在も3月1日は国民の祝日。
    1937年に日中戦争が始まると日本は朝鮮半島を兵站基地とするためにさまざまな面で弾圧を強めてゆく。1938年には学校での朝鮮語による授業が廃止され、新聞や雑誌も徐々に廃刊に追い込まれた。1942年には朝鮮語辞典の編纂を進めていた朝鮮語学会の学者たちが、治安維持法違反で捕まり2人が拷問で死亡する朝鮮語学会事件が起きた。

    なぜ韓国では詩が多く読まれるのか。
    痛みを知る人が多かったから。
    近代以降、朝鮮半島の歴史は激痛の連続だった。1940年代に入ると日本語での創作が強制され、著名な詩人たちは筆を折ってしまった。
    世界文学は依然として欧米中心で英語に翻訳されることが世界文学と認められることの条件だが、日本と韓国の間で起きているような英語を通過せず実現する言語や文学のやりとりも非常に重要だ。

    1945年に日本が敗戦を迎えたとき、日本には約200万人の朝鮮半島出身者がいたが、そのうち約60万人が日本に残った。しかし1947年「外国人登録令」が出て、日本国籍を持っている彼らを「当分の間、これを外国人とみなす」こととし、管理や取り締まりの対象とした。

  • [特設サイト]シリーズ「あいだで考える」 - 創元社
    https://www.sogensha.co.jp/special/aidadekangaeru/

    斎藤真理子さんの新刊「エッセイと韓国文学の翻訳本」 | 大人乙女の新刊案内
    https://otonaotome.blog.fc2.com/blog-entry-3780.html

    書籍詳細 - 隣の国の人々と出会う - 創元社
    https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=4767

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【シリーズ「あいだで考える」】斎藤真理子 『隣の国の人々と出会う――韓国語と日本語のあいだ』の「序に代えて」を公開します|創元社note部(...
      【シリーズ「あいだで考える」】斎藤真理子 『隣の国の人々と出会う――韓国語と日本語のあいだ』の「序に代えて」を公開します|創元社note部(2024年8月7日)
      https://note.com/sogensha/n/n6776b58aa9d3
      2024/08/22
  •  気鋭の翻訳者といっていいと思いますが、斎藤真理子さんの「韓国文学紹介・若い人向け」という感じの本ですが、何よりも「あいだで考える」というコンセプトで出版企画を実現している創元社に拍手を贈りたい本でした。
     ネットというかSNSというかですべてが「わかる」と思わせる風潮が広がっていますが、ネットが教えてくれる「わかる」に欠けているのは、多分、成り行きというか、歴史的経緯なのですね。
     斎藤さんが、お隣の国の文学の「おもしろさ」を紹介しながら、韓国語のお隣と日本語のこっちとの間に立つことで、こっちが見失っている経緯を語っていらっしゃるスタンスにホッとしました。
     やっぱり、気鋭の翻訳者ですね(笑)。アホブログには、少しですが、具体的内容に触れて、あれこれ書いてます。読んでみてくださいね(笑)。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202503290000/

  • 「キム・ジヨン」の和訳を担当なさった斉藤真理子さん、うっすら思った通り洞察力の深そうな、湿度のある文章を書く方で、大好きになった。

    マル말とクル글、そしてソリ소리、あいだのサイ사이にについて考える姿勢を忘れないでいたい。

    韓国の歴史や、ハングルの成り立ちについても知れて、薄くて読みやすい本なのにすごく知識量が増えたし、手にとってよかった。

  • ノーベル文学賞を受賞されたハン・ガン氏の翻訳をされている方ということで読んでみた。

    結論から言うと、最初に読んだ韓国についての本がこの本で良かったと心底思う。

    特に歴史とハングルの成り立ちについて興味深く、また教養としても知っておくべきことの一つだ。

    茨木のり子氏の「ハングルへの旅」を紹介してくれていたのも私にとっては大きい(「詩のこころを読む」は私にとって大切な本)。

    この本をきっかけに、これから韓国について少しでも正しい歴史認識と文化の違いを知りたい。

  • 1章 말(マル)言葉
    2章 글(クル)文、文字
    3章 소리(ソリ)声
    4章 시(シ)詩
    5章 사이(サイ)あいだ

    本書の感想を書くにあたり、初めてキーボードを“韓国語”を入力できるように設定してみた。
    (正しく表記できているだろうか?)
    今まで、その初歩すら知らなかった隣国の言語を学ぶことを通じて、日本と世界の歴史をもっと知りたい。そんなふうに思わせてくれる一冊だった。読書案内としても素晴らしい!

  • 韓国文学の翻訳者である斉藤真理子さんによる韓国語と日本語にまつわるお話。
    10代以上すべての人のための人文書シリーズ『あいだで考える』の中の1冊として刊行されてていることもあり、とても読みやすく、理解しやすいです。
    ハングルに関する思想や歴史、韓国における詩、戦争と現代史など知っておくべきことがわかりやすくて、本当に読んでよかったです。

    「世宗大王とのチューニング」がとっても素敵、
    ハングルの発音の魅力がとてもよくわかりました。

    日本語には「雨脚」しかないけど、韓国語には「雨脚」も「雪脚」という言葉もあること。
    韓国語には無機物や抽象概念にも複数形があること、
    例えば「問題たち」とか「静かたち」のような。
    そんなことも知ることができて楽しいです。

    「どこかを植民地にするというしわざは、百年に及ぶ禍根を残す」
    本当のその通りで、韓国文学が大好きだし、K-POPも韓流ドラマも好きだけど、どこかで罪悪感を感じ続けてしまうのがとても苦しく、昔の人たちがあんなことしなければ‥と恨めしく思ってしまって。

    「2つの言語、2つの文化のあいだにはやはり敷居がある。日本が朝鮮半島を植民地にしたということ、そのときに起きた問題がいまだに解決されていないということだ。在日コリアンの法的地位や人権の問題もそのひとつだ。」
    「今の日本でこの言語を学ぶことは『敷居』をなかったことにするためじゃなく、こういう種類の敷居が二度とつくられないようにという願いのために、活かされてほしい。」

    今、次男はアメリカ留学時にルームシェアしていた韓国人のお友達に会いに韓国に遊びに行っています。
    これからの若い世代が、こうして心からの交流をして、敷居をまたいで日韓が共に生きる新しい時代を作っていってくれることを願います。

    私は翻訳された韓国小説や詩をたくさん読むことができる今を生きることができて、本当に本当に幸せです。
    韓国語ももっともっと頑張って勉強しよう。

  • [こんな人におすすめ]
    *韓国語やハングルが少しだけ気になっている人
     ドラマやKPOPにハマってるわけではないから韓国語を勉強するほどの熱はないけど、韓国の小説が最近面白くて、ハングルについて少し知りたくなってきた人におすすめです。言葉や文字、詩などを通して隣の国について知ることができ、読み終わる頃にはもっともっと知りたくなるでしょう。

    [こんな人は次の機会に]
    *図書館で借りる派の人
     小さなサイズで分厚くないので2週間でも読めますが、手元に置いて時々ページをめくりたくなるタイプの本です。

  • 同じ著者による『韓国文学の中心にあるもの』のカジュアル版という印象。読み易い文体でも韓国文学の肝が読者に伝わる。

    こんなにライトでも、「4章:詩」における、複数の詩の抜粋だけでも涙腺が緩む。特に、もう声を出せない誰かの身代わりになって書かれた詩の数行に、胸が詰まり言葉を失う。
    同章の〝「イタい人」と「痛い人」”の説明を読んで思ったが、自分が「イタい人」に属していると感じる時期に韓国文学に心が揺さぶられるのは、日本の文学では届かない所にまで響く何かがあるのは、痛みの連続かつ地続きの歴史が土台だからなのだと改めて実感。

    落ち込んでいる時に楽しい音楽よりも悲しい旋律を聞きたくなるように、しんどい時にしんどい韓国文学を読むと何だか救いになるのが分かるような案内本。

  • 著者の語りかけてくるような文章がとても心地よく、韓国語のいろはを全然知らなくてもすんなりと、身近に感じさせてくれる。
    とはいえ、本書を読みあらためて「隣だけど遠い国」だと感じた。
    国として経験したことが違うし、だからこそ文化的背景も違くて、これを感じ取っていくために自分にできることと言えば少しずつでも知ろうと思うことなのかな。
    この本を読んでマル、クル、ソリ、シの4つの言葉だけ覚えた。
    言葉の仕組みや意味合いについてもおもしろい話が詰まっていて読んでいて楽しかった。
    次は『韓国文学の中心にあるもの』を読みたい。

  • 斎藤真理子
    新潟県出身 新潟高校かな?
    と思ったら、姉、斎藤美奈子と混同。美奈子さんの作品は小林秀雄賞「文章読本さん江」で、昔読んだと思う。「妊娠小説」で評論家としてデビュー。森鴎外『舞姫』から村上春樹『風の歌を聴け』まで、「望まれない妊娠」のシーンがある作品を取り上げて論じ、近現代日本文学に潜む女性観をあぶり出した。

    斎藤真理子は、その妹で韓国文学翻訳者だった。
    というわけで、本の感想
    隣の国なのに、自分がなんと無知だったのかと愕然としたー
    折しも、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が宣布した「非常戒厳」について、捜査当局が拘束令状を請求した。
    激しいなぁと思うのだが、歴史を考えれば、過去の過ちを繰り返さない民主主義を貫く国民の姿勢なのか、と納得。
    ちなみに、民主化され、現在の韓国になったのが、民主化宣言(みんしゅかせんげん)1987年6月29日に、大韓民国の盧泰愚大統領候補(民主正義党代表委員)が発表した政治宣言後。それは、翌年オリンピックがソウルであるから。
    以下ウキより
    全斗煥の後継指名を受けた盧泰愚が、民主化宣言を発表。民主化宣言で、激しいデモは取り敢えず終息した。民主化宣言後に、野党勢力を率いた金泳三と金大中の間で対立。反軍政票が金泳三と金大中で分裂、全斗煥の後継者である盧泰愚が当選。しかし、翌年4月の13代国会議員選挙で盧泰愚大統領与党の民主正義党は過半数を割り込む結果となった。そのため、1990年2月に金泳三の統一民主党や金鍾泌の新民主共和党と合同して民主自由党を発足、1992年の大統領選挙で金泳三を当選させる。いわば職業政治家と軍部との連立政権であった。そして1997年の大統領選挙では、金大中が金鍾泌との連合(JP連合)の末、当選を果たした。
    そういえばゼントカンとか、キンダイチューとか知ってるなー。でもぜんぜんわかってなかった。

    2024年、今から10年前セウォル号事件で、高校生が250人が亡くなった。
    皆がこれではいけないと思いながら見過ごしてきた様々な矛盾(運航会社は、古い船で大勢の旅客、荷物を運べるよう法律違反の改造、それを見逃す不徹底な検査、責任放棄の船長は非正規雇用ー長年続いてきた官民癒着、企業の利益追求重視、政府の不手際)が引き起こした事件。
    このような歴史の節目で何度も大量死の悲しみを体験してきた国。
    理解することとは、「もし私たちが他人の内部にまで入っていくことができないならば、とりあえず近くに立ってみることが最初にすべきこと」「完全には一体にはなれないことを謙虚に認め、その違いを肌で感じていく」キム・エラン
    私たちが本を読む理由の一つは私たちは知らないことがあるということを知るためである。実際体験は限られる。文学作品を読むことはシミュレーション。しかし、完全には理解はできない。でも小説しか、体験しない感情に近づいていく方法がない。だから、一生の間にすべきことが一つあるとすれば、それは悲しみについて学ぶことでないか。「他人の悲しみにもううんざりだというのは残酷なこと」ーシン・ヒョンヒル
    セウォル号事件後、特別法の制定を求めて遺族が抗議活動を行なっていた時、「賠償金目当てだ」、「遺族がそんなに偉いのかー大学教授の失言」これらは、生き残った人たちまでも殺そうとする

    なかったことにされた大量死
    1919植民地統治下 3.1独立運動
    1948 済州島(チェジュド)4.3事件
    朝鮮戦争
    1960 4.19革命 大統領を辞任に追い込んだが、翌年パクヒョンヒが軍事クーデターを起こして革命終了
    1980 光州事件 前年にパクヒョン射殺 学生、市民が民主化要求したが、制圧された。

    ハングルは、15世紀朝鮮王4代、世宗大王が「訓民正音」を著し、500年かけて浸透。ハングルとなった。
    生の朝鮮語か音を表すパーツを作り出し、組み合わせることで、マル(言葉)をクル(文字)にする画期的なシステム。
    Kボップの魅力
    韓国語メニアッ(小さいク)!
    日本語アニマック
    ビシッと止める、閉じる、非解放子音。躍動するソリ(音)が飛び出して突き刺さる。
    ラップー日本語だと三音
    韓国語は、レッ(小さいプ)

    韓国語と日本語の間(サイ)
    敬語がある、擬態語が多い、語順が同じ
    でも、二つの言語、文化の間(サイ)には、敷居がある。敷居を無かったことにするのではなく、2度と作られないようにするために言語を学んでほしい。
    生きられない飛行機=サルジモッタヌンヘンギ=神風特攻隊

  • ハングルの素晴らしさ、日本語話者だから感じられる韓国語(朝鮮語)のおもしろさ、詩の魅力などが、わかりやすく親しみのもてる文章で書かれていて、読むと韓国語を勉強したくなる。そして日本人が知っておかなくてはならない歴史についても説明されている。「歴史を知ることは、不発に終わった夢のコレクションでもある」という言葉が印象的。

  • 朝鮮語翻訳の第一人者、斎藤真理子さんのエッセイ。

    「サイにはソリがあふれている」
    最初から最後まで、丁寧で優しい言葉で書かれていて(ルビも振られていて)、「隣の国」に対する愛と情にあふれている。
    最後の作品紹介まで、あまりに良くて、図書館で借りたのに手元に置きたくて買ってしまった。
    そのくらい、多言語に触れてる人にはたまらない一冊。全編を通じて温かいけども、大切なところはびしっと書いてごまかさないところが、斎藤さんらしくていい。

    2025.4.27
    また読みたくなって借りた

  • 読んでよかった。

    在日コリアンという言葉は知っていたけれど、韓国にルーツのある人がたくさんいて、日本の植民地支配が関係しているのだろうなぁくらいにしか思っていなかった。
    外国人登録制度によって、日本国籍にさせられたコリアンの人々が「朝鮮」籍(特定の国家を指すものではなく、出身地を表す記号。北朝鮮のことではない)や「韓国籍」になり、さらに日本は北朝鮮を未承認国家としていることから、朝鮮籍の人は事実上の無国籍状態または国籍未確認の状態であるということに衝撃を受けた。

    今ほど2つの言語と文化が好意を持って歩み寄った時代はないが、今ほど露骨に敵意や憎悪を直接的・継続的に向けられる時代もなかった、というのも重要な記述だと思った。

    困っていない人は、困っている人の気持ちは分からない。社会的弱者や少数者の気持ちが分からない。踏み躙った側は、踏み躙られた側の気持ちが分からない。
    ということをきちんと頭において、学習して、想像しなければならない。
    様々なことを知る上でも読書は大切だと感じた。

    前半の、マル(言葉)、クル(文・文字)、ソリ(声)についても興味深く読んだ。世宗大王の『訓民正音』読んでみたい。
    韓国で詩が愛されていること、k-pop原論、興味がわいてきた。

  • ハン・ガンの『すべての、白いものたちの』を読んで、韓国語にとても興味を持った。”この本を読んで”というよりもっと初めの段階、”このタイトルを読んで”興味を持ったといった方が正しい。

    『隣の国の人々と出会う』は、『흰(ヒン)』の訳を『すべての、白いものたちの』とした翻訳者・斎藤真理子さんの著書である。正直なところ、翻訳についてのいろいろを知ることができるかな?と思っていたのだが、それは私の一方的な希望で、この本には、朝鮮の歴史的背景や日本との関係性、そしてそれらを踏まえての言語・文学などについて多く書かれていた。

    あとがきに、「シナモン抜きの水正果(スジョングァ)になってしまい反省している」というような言葉があった。確かに、爽やかさよりも重さの方を感じてしまった。けれども、私が隣の国について、これまで知らなかったり、誤解をしていたりしたことを教えてもらえたので、とても読んでよかったと思っている。

    말(マル)言葉
    글(クル)文、文字
    소리(ソリ)声(思い)
    시(シ)詩
    사이(サイ)あいだ
    各章がこれらの単語が軸になっているのは、とても良かった。
    韓国語をもっと知りたいと思った。

  • 数々の韓国文学の翻訳や「韓国文学の中心にあるもの」などの著作で知られる著者のエッセイ。韓国語の音、表記、発話そして詩についてたいへん読みやすく、かつ興味深いエッセイであった。
    ハングルの表記や発音の特徴など知識として少しは知っていたが、韓国文学の翻訳者の視点で語られるのはもう少し深い話だった。
    そして詩や小説が韓国の現代史や政治そして何度も起きた不幸な出来事と絡み合っていることを知ることができた。
    一方、日本の現代作家や詩人は日本の今日的問題に向き合っているのだろうかという疑問が浮かんだ。
    韓国語を少し勉強してみたくなった。

  • ハン・ガンのノーベル賞受賞の発表があった最中にタイミングよく読めた。斎藤さんの文章が詩的ですごくすてき、と思って読んでいたら、本当に詩もお書きになるとのこと。こちらも読みたい。付録に書いてある “「失敗」の反対語は「成功」ではなく、「無事」だと思う”という言葉も名言。

    ハングルをていねいに包んでそっと手渡されたような気持ちになった。それと同時に、隣の国が経験してきた悲しい歴史も。(そしてその原因のひとつはわたしたちの国がつくった)

  • 出版社(創元社)ページ
    https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=4767
    内容紹介、もくじ、著者紹介、シリーズ「あいだで考える」動画

    「序に代えて」(創元社note部)
    https://note.com/sogensha/n/n6776b58aa9d3

  • #2024年の本ベスト約10冊

  • 著者の言葉遣いが好きです。
    たとえば、マル(言葉)について。
    p11 「マル」。この朝鮮語の音は日本語にはない。だから、くり返して発音するだけで、口の中にちがう風が吹いてくる。
    昔から、この言葉を第二言語として学ぶ人は、口の中に起きる風に誘われて、気がついたらどこかちがう場所に立っていることが多かったのじゃないかと思う。

    『目の眩んだ者たちの国家』を編纂したツン芸評論家のシン・ヒョンチョルは、あとがきにこんなことを書いている。

    私たちが本を読む理由のうちの一つは、私たちが知らないことがあるということを知るためである。人が経験できる事件は限られているので、実際に感じられる感情も限られている。そのとき、文学作品を読むことは、感情のシミュレーション実験となり得る。小説を読む間、身も細る思いをしたり、血が沸きたったからといって、その感情を完全に理解したというのは言い過ぎだ。しかし、小説でなければその感情に近づいていく方法がない。例えば、自分ん子どもが溺れて死んだのに、その真相を知ることができず、死体も見つからないとき感じる感情とか。人間は無能だから完全に理解することは不可能で、人間は意気地がないので一時的な共感も徐々に薄れていく。だから一生の間にすべきことが一つあるとすれば、それは悲しみについて学ぶことではないか。他人の悲しみに「もううんざりだ」というのは残酷なことだ。政府が死んだ人を再び殺そうとするとき、そんな言葉は生き残った人たちまでも殺そうとするのだ。」

    日本語と韓国が似ているという話も面白い。
    p135
    語順がほぼ同じであること。「てにをは」にあたる助詞があること。
    漢字の借用による「漢字語」をたくさん使うこと。
    「です・ます」調と「だ・である」調があること。
    敬語があること。
    擬声語・擬態語が多いこと、など。
    ここまで似ているからこそ、なおさら、小さなちがいが気になるのだと思う。
    たとえば複数形の使い方だ。

    なんと「静かにしてください!」の「静かに」という副詞に「たち」をつけて「静かたちにしてください!」と言うこともできるのですって!

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著者プロフィール

斎藤真理子(さいとう・まりこ)
翻訳者。主な訳書にチョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』(河出文庫)、李箱『翼 李箱作品集』(光文社古典新訳文庫)、ハン・ガン『別れを告げない』(白水社)など。2015年、第一回日本翻訳大賞受賞。2025年、第76回読売文学賞(研究・翻訳部門)受賞。著書に『増補新版 韓国文学の中心にあるもの』『「なむ」の来歴』(以上イースト・プレス)『本の栞にぶら下がる』(岩波書店)など。村松武司著『増補 遥かなる故郷 ライと朝鮮の文学』を編集。

「2025年 『朝鮮植民者 ある明治人の生涯』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斎藤真理子の作品

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