商業・専制・世論―フランス啓蒙の「政治経済学」と統治原理の転換

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  • 創文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784423710807

作品紹介・あらすじ

本書は、18世紀フランスの言説空間において、富や市場の問題と統治形態や社会編成の問題とを含んだ「政治経済学」の思想的展開を、1760〜70年代における穀物取引論争をコンテクストとして論じる。

感想・レビュー・書評

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  • 一八世紀末フランスにおける「穀物取引論争」をバックグラウンドにして、「政治経済学」というこの時代以降政治学と経済学に分化していく学問の言説空間を再構成する研究。その際主として、ケネー、メルシエのフィジオクラート、チュルゴー、コンドルセ、ネッケルといった人々が論じられる。表題にあるとおり、専制despotismeという言葉に新たなイメージを付与したフィジオクラート、その考えを批判しつつも、理性の言葉で説得する対象となる世論に対して、その偏見を真理によって是正していくことを目論むチュルゴー、コンドルセ、さらにそうした考えを批判し、為政者はそういった偏見も含んだ世論に細かな対応をとるべきだとしたネッケル、彼らの考え方の本質的な部分が整理されて提示されている。例えば本書でのコンドルセの位置づけは、実のところ政治経済学の提示する真理と物理学や数学の真理が同一の身分を持つと考える点で、メルシエとそれほど遠くない。それは翻って、コンドルセの世論観を問いなおす研究につながっていくだろう。そういった点でも、非常に興味深い研究。

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著者プロフィール

立教大学法学部准教授。専門は政治学・政治思想史。『商業・専制・世論』(創文社)他。

「2022年 『フランス革命史 自由か死か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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