権利と人格―超個人主義の規範理論 (現代自由学芸叢書)

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  • 創文社
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784423730430

作品紹介・あらすじ

本書は、無批判な権利万能論と一線を画し、基本権間の衝突・統一的人格の虚構性・普遍的利己主義の不可避性等、従来の人権論が無視してきた権利論の根本問題に挑み、明快かつ論争的なスタイルで超個人主義の規範理論を提唱する。

感想・レビュー・書評

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  • 法思想史家として出発した著者による初の法哲学書。今では日本における「リバタリアニズム」論の第一人者として知られているが、本書ではその片鱗が垣間見える程度である。そのせいだろうか、冒頭で明言される高邁な目標——人格の別個性から導かれる「権利基底的道徳」と確固たる不変の統一的人格の不存在から導かれる「帰結主義的道徳」とを統一する理論の提示(i-ii頁)——と裏腹に生煮えの感が否めない。もっとも、その後の「リバタリアニズム」論において恣意的に使い分けられる自然権論と帰結主義との源泉が見出せるという点で、本書の議論は決して無視し得ないだろう。また、法哲学において形而上学の成果を積極的に摂取し応用している点は、実定法学との理論的架橋を活発化し得るため、評価されるべきだと思われる。

    内容としては、やはり人格の同一性を検討した第一部第五章「柔らかい人格と道徳的問題」が抜群に面白い。ただ、そこで擁護される限定的パターナリズムは、人格の同一性に関する程度説とは無関係な論拠が挙げられているために、程度説からは成功していないと見るべきではないか。パターナリズムに関しては、井上達夫のようにパーフェクショニズムを排除した形態を例外的に是認する方が説得的である。とはいえ、「私が提唱する狭義の道徳の内容には、自分や他人がもっと自己中心的でなく、もっと他人の立場に共感して、もっと公徳心のある人になるように、総じてお互いのためになるような傾向を身につけるように、常日頃から動機づけるべきだ、というものも含まれる」(18頁)と正面からパーフェクショニズムを承認する著者には、井上のような道は閉ざされているのかもしれない。他に重要だと思われた洞察としては、第二部第二章「契約はなぜ、またどのように拘束するか」にて指摘される契約制度それ自体を否認する者への対処を挙げたい。著者は以下のように指摘する。すなわち、「契約という制度自体の外部にとどまる人々に対して、彼らがかつて締結した契約を強制するための決定的な正当化は与えられなかった。しかし彼らに対して契約制度の意義を示し、彼ら自身も契約制度に入る方が賢明であるという理由でそれを受容するように説得することはできるかもしれない。それは強制の必要を最小限にとどめるのに役立つ」(191頁)。

    しかしながら、やはりアウトラインとパラグラフ・ライティングとの欠如は、全体を通した問題として指摘しなければならない。議論の明晰化に務めている形跡が散見されるだけに、技術的問題のために極めて読みづらくなっているのは残念だ。

  • 未読

  • 貧乏学生には高いんですけど、教授。

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