会計プロフェッショナルの税務事案奮闘記 (ストーリーで学ぶ租税法判例30)

制作 : 深井 和巳 
  • 清文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784433538156

作品紹介・あらすじ

租税法判例は奥が深くて面白い。税務分野の学習・実務に役立つ1冊!小説仕立てで楽しく学べる入門解説書!

感想・レビュー・書評

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  • 税務判例事例を元にストーリー形式で租税法を解説。会計士京滋会の会計士が作成に関わっており企画から2年以上を要したそうだ。掲載されている事例は税務実務全般に及ぶもので、税務業務に関わる職業会計人は一度は通読することをお勧めしたい良書だ。
    P31
    (1) DESと法人税法22条2項について
    法人税法では、資本等取引と損益取引は区別されることを前提に、法人税法22条2項により資本等取引からは益金を認識しないため、DESが資本等取引に該当すれば債務消滅益の益金処理をした更正処分は違法ということになる。
    東京地裁は、DESを「①本件現物出資によるへの本件貸付債権の移転、②本件貸付債権とこれに対応する債務の混同による消滅、③本件新株発行及び原告の新株引受」と3つの段階に分解して、そのうち②について、「上記②の混同の 過程においては、資本等の金額の増減は発生しないので、資本等取引に該当するとは認められない」とし、法人税法22条2項の益金を生ずる「取引」に該当するとした。
    そして、このように取引を分解することについて、「法令上、DESを直接実現する制度について何らの規定が設けられていない以上、株式会社の債務を株式に転嫁するためは既存の法制度を利用するほかなく、既存の法制度を利用する以上、既存の法制度を規律する関係法令の適用を免れることはできない」と判示している。
    (2) DESをめぐる会社法制
    DESとは、債権者が保有する債権をその債務者である法人に出資し、債務者である法人は債務を消滅させて資本の金額を増加させる取引であって、債務の株式化ともいわれる。
    会社法上、現物出資財産が会社に対する金銭債権(弁済期の到来しているものに限る)であって、その金銭債権について定められた出資価額(会社法199条1項3号)が当該金銭債権の負債の帳簿価額を超えない場合には、検査役の調査は不要となる(同207条9項5号)。この規定は会社法で新設されたものである。また「債権者であった者に発行する新株の数は債権の実際の価値を基準として決定されるべきで、新株の数しだいでは有利発行になる」可能性がある。さらには、債権の実価が著しく低い場合等は、取締役や現物出資者等の責任も問題となりうる(同212条、213条) (神田秀樹(平成22年) 『会社法-第12版-』138頁、弘文堂)。
    他方、法人税法上、DESを直接的に定める明文規定はなく、DESは債権の現物出資と解され、課税上現物出資と同様の取扱いを受けている。
    (4)現物出資型DESと現金払込型DES
    ①現物出資型DES
    現物出資型DESとは上述の(2)のとおり、債務者企業が行う第三者割当増資に当たり、債権者企業がその保有する債権を現物出資することにより増資の払い込みに充当する方法である。債務者企業への出資物として、金銭の代わりに債権を給付することにより、金銭の移動をせず債務者企業の債務を株式に振り替えて増資を完了される方法である。
    ②現金払込型DES
    現金払込型DESとは、まず債権者企業が債務者企業による第三者割当増資に応じるため現金を払い込み、債務者企業は新株を発行する。その後、債務者企業の側では払い込まれた現金を受領して、受領した資金を債権者企業への借入金の返済にあてる方法である。一般に「疑似DES」と言われるスキームであり、原則的には課税関係は生じないと考えられる。
    P57
    主要論点について考える
    (1)相続税法22条「時価」の意義
    相続税法22条は、相続等により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における「時価」によると規定している。「時価」については、本判決では、固定資産税の課税標準である固定資産の価格である適正な時価について示した、最判H15-6-26·平成10年(行ヒ)第41号を引用し、「法22条の「時価」は、不特定多数の者の間において通常成立すべき客観的な交換価値を意味する」と判旨した。同判決では、「適正な時価とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいう」と示しており、「時価」=「客観的な交換価値」であることを示している。
    このような「時価」の概念は、「相続税法22条は、贈与等により取得した財産の価額を当該財産の取得の時における時価によるとするが、ここにいう時価とは当該財産の客観的な交換価値をいうものと解され・・・」(最判H22-7-16-平成20年(行ヒ)第241号)など、その後の判決においても踏襲されている。
    (2)評価通達の性質·趣旨
    本判決において、評価通達の性質について「評価通達は、国税庁長官によって発出され
    た通達であって、法形式上は行政内部の機関や職員に対する関係で拘束力を有する行政規則にすぎず、国民に対して効力を有する法令としての性質を有するものではない。」と示した。
    その上で、法令としての性質を有さない評価通達が存在する意義について、
    ①大量・反復して発生する課税事務を迅速かつ適正に処理する
    ②あらかじめ法令の解釈や事務処理上の指針を明らかにし、納税者に対して申告内容を確定する便宜を与える
    ③各課税庁における事務処理を統一させる
    ためとし、通達に基づく課税行政が積極的な意義を有することは否定しがたいとしている。
    そのため、評価通達に基づいた課税処分については、「通達の内容が法令の趣旨に沿っ
    た合理的なものである限り、これに従った課税庁の処分は、一応適法なものであるとの推
    定を受けるであろうし、逆に、課税庁が、特段の事情がないにもかかわらず、通達に基づ
    くことなく納税者に対して不利益な課税処分を行った場合には、当該処分は、租税法の基
    本原理の一つである公平負担の原則に反するものとして違法となり得るというべきであ
    る。」とした。

  • 物語(フィクション)と判例をうまく並べて読みやすかった。

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