図書館逍遥

著者 :
  • 編書房
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本棚登録 : 44
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434012648

感想・レビュー・書評

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  • 明治35年開館の「大橋図書館」を、皆さんはご存じだろうか。
    日本近代図書館のさきがけで、全国に「書物館」「文庫」と称される建物はあったが、「図書館」という名称さえ普及していなかった頃の話だ。
    明治20年に博文館を創業した大橋佐平が、図書館創立のため収書し私財を寄付して麹町の自邸内に建てたのだという。病に倒れたのちは息子の新太郎が遺志を引き継ぐ。

    111坪の木造二階建て、書庫は煉瓦3階建て。集められた図書は3万6千余冊。
    デューイ十進分類法の採用、夜間開館、児童書の充実、児童・女性閲覧コーナーの設置、児童・学生優待券の発行等の試みもここで始まっている。
    それだけではない。
    各種蔵書目録の刊行、図書館事項講習会を開催して図書館人を育成し、映画や講演、ポスターや旅行ガイドの展覧会を定期的に開催したという。
    「図書館世界」という雑誌も発行している。
    ここから全国に波及し、昭和17年ごろには官立・公立・私立あわせて4千館という図書館が創られた。そしてここに魅了された人物のひとりが芥川龍之介だった。。

    本書を読むまでそんなことは全く知らなかった。他にも知らないことだらけの一冊で、非常に刺激的。
    図書館史、図書館が舞台の文藝、書籍流通システムの話等、多彩な図書館エッセイ50扁だ。
    出久根育さんの装画が画像ではやや見えにくいが、かなり面白い。
    図書カウンターの前に立つのはジュール・ベルヌ。(八十日間世界一周)
    その隣で本を持って立っているのがボルヘス。(バベルの図書館)
    奥の椅子で読書中なのがサルトル。(嘔吐)
    背表紙の部分で立ち読みしているのがジャン・ジュネ。(薔薇の奇跡)
    裏表紙にも続き、クリスティ(オリエント急行殺人事件)とポー(アッシャー家の崩壊)と山口昌男(敗者の精神史)。名前が書かれているわけではない。
    それぞれが、代表作を手にしているのだ。カッコ内がその書名。
    わずか2ミリの中の「薔薇」の文字はなかなか解読できなかったが。
    章全体でとり上げられているのはサルトルとジュール・ベルヌ。他は話の流れの中で触れられる。出久根さんの着眼点がとても嬉しい。こんな図書館があると良いよね。

    図書館から、こんなにもたくさんの話が生まれるのかと驚くばかりだ。
    編集の方が「読んでみて嫉妬した」という、あまりにも膨大な読書量。
    小学校の図書館になぜあんなに児童書が充実していたのか、戦争と図書館との知られざる関連性、発禁本図書館、移民の町の図書館、出版と図書館について、実用書と図書館、アニメの中の図書館、ミステリー好きの方には垂涎の、古今の作品がたーくさん。
    多彩な角度から語りながら、現在の図書館のあり方にも憂慮されている。

    図書館員の生涯をかけた一冊の話には、涙が出た。
    岡山理科大の佐野捨一さんという司書さんが、1977年に「世界図書館年表」なるものを出しているのだ。古代から1970年まで凝縮で、無償の情熱による20年間にわたる研究の精華。
    ところがこれがAmazonで驚愕の価格で出ている。図書館では禁帯出。
    興味のある方は司書さんにお願いして開いてみてね。世界に一冊の貴重な書物らしい。
    佐野捨一さんのお名前は日本図書館史に刻まれるべきだろう。

    読みたい本を山のように見つけてしまった。
    そんなわけで私は、この本に2日間も囚われていたのだ。
    ああ、未知のことって本当にわくわくする。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      愉しみ!レヴューお待ちしております、、、
      nejidonさん
      愉しみ!レヴューお待ちしております、、、
      2020/11/05
    • nejidonさん
      猫丸さん。
      いえ、しばらく忘れていて下さって構いません(*'▽')
      他図書館から借りた本は延長できないので、優先権はそちらに。
      小田さ...
      猫丸さん。
      いえ、しばらく忘れていて下さって構いません(*'▽')
      他図書館から借りた本は延長できないので、優先権はそちらに。
      小田さんの本は地元にありましたので後回しになります。。。。
      2020/11/05
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      にゃ
      nejidonさん
      にゃ
      2020/11/05
  • ごめんなさい。かなりの図書館ベビーユーザーと自分では思うけど、読むのがしんどい。対象読者を選ぶ本。

  • 図書館
    ノンフィクション

  • タイトルからもっと軽い内容だと思っていました。
    最初のほうの連載された分は専門的な内容が多くて、
    久しぶりに図書館学の授業を思い出した。
    後の書き下ろしは少し気楽に読めた。

    有名な文学者の蔵書が目録もないままバラバラになってしまっているのは
    もったいないなあと思った。

    (09.08.29)

    -----------------------------

    図書館(09.08.16)

  • 文学者たちと図書館との結びつきを語った本。内容を読むと、現在の図書館界へ何かを示唆していると取れる。数々の著名作家や名作にも触れていて、参考になった。

  • ふむ

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著者プロフィール

1951 年、静岡県生まれ。早稲田大学卒業。出版業に携わる。著書に『新版図書館逍遥』(論創社)、『書店の近代』(平凡社)、『〈郊外〉の誕生と死』、『郊外の果てへの旅/混住社会論』、『出版社と書店はいかにして消えていくか』などの出版状況論三部作、インタビュー集「出版人に聞く」シリーズ、『出版状況クロニクル』Ⅰ~Ⅵ、『古本探究』Ⅰ~Ⅲ、『古雑誌探究』、『近代出版史探索』Ⅰ〜Ⅶ、『新版 図書館逍遥』『私たちが図書館について知っている二、三の事柄』(中村文孝と共著)(いずれも論創社)。訳書『エマ・ゴールドマン自伝』(ぱる出版)、エミール・ゾラ「ルーゴン=マッカール叢書」シリーズ(論創社)などがある。『古本屋散策』(論創社)で第29 回Bunkamura ドゥマゴ文学賞受賞。ブログ【出版・読書メモランダム】https://odamitsuo.hatenablog.com/ に「出版状況クロニクル」を連載中。

「2024年 『出版状況クロニクルⅦ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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