Zerro

著者 :
  • 牛若丸
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本棚登録 : 129
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434038655

感想・レビュー・書評

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  • 「形に魅せられて集めた記号・暗号・符号・文字など121項の観念部品型録」というサブタイトルが付けられた変わった本。この本を読んで(と言うより見て)世の中には様々な文字や記号があるものだと思った。専門家にとっては普通に使っている記号でも、一般人にはあまり縁が無かったりする。でもひとつひとつの形が、コミュニケーションのための大事なツールであることは間違いない。これがどのように書かれ、使われたのかに興味が湧いた。ぱらぱらと眺めるだけでも面白い本です。
    就職した頃、先輩の中に文字を定規で書く人がいた。手書きが苦手だからと弁解していたが、直線と曲線を器用に組み合わせた図形のような文字を見た時、少なからず衝撃を受けた。世の中にはこんな変わった文字を書く器用な人がいるのかと思ったが、この本の中にも似たような文字が記載されていて驚いた。漢字の字素を縦に並べたもので、長野利平が考案した「流水文字」という。先輩の定規文字もこれにそっくりで、もしかするとこの文字に影響を受けたのかもしれない。

  • 2004-01-00

  • いろいろな文字に想いをはせ…

  •  数年前、全国の民家の玄関や表札などに奇妙な記号のようなものが書き込まれているのが話題となった。何者が何のためにやっているのかと大騒ぎになったが、どうやら訪問販売業者が仲間内の符丁として使っているらしい。記号の組み合わせによって、「この家にはどんな人が住んでいる」「何時頃在宅している」といった情報を伝えているのだとか。また窃盗団や空き巣のグループなども同様のサインを使っているとも言われ、詳細は不明だがどうにも不気味である。

     そんな例を見てもわかるように、人は自分が理解できない記号や文字といったものに限りなく好奇心をかきたてられるものらしい。これは何なのだろう、どういう意味なのだろう、と様々な空想が拡がっていく。
     そこでは推理や知識の翼が意味を求め大きく羽根を広げていく。神秘的だから人々は惹きつけられ、だからこそ暗号というものが昔からミステリー小説等において重要なモチーフたり得るのだ。
     そういえば映画化もされた1960年代の米国の連続殺人事件「ゾディアック事件」でも犯人からの手紙に暗号が使われていた。この事件においてもこの暗号や犯人が自分を表すために使ったシンボルマークなどがミステリアスな要素として大きく扱われた。

     例え話が長すぎたか。つまり、本書はそのような知的好奇心をひどく刺激する一冊である。著者はまえがきにおいて、「今はもう使われなくなった文字や記号、奇妙な形のサインなどを集めてみたくなった」と述べている。そう、本書はモールス符号や点字から、錬金術記号、ルーン文字、テレビ・ビデオ・オーディオ記号まで実に多様な文字が121個も収集されている。
     ほとんど実際的には使われることもなく消えていった文字も多いようだが、それでもそういった文字を眺めているだけでも楽しいものだ。
     著者は純粋に形のおもしろさでこれらの文字を集めているので、学術的な側面よりも興味の対象としての側面を強く押し出しているようだ。だから個々の文字に対する解説も実にあっさりしていて掘り下げは恐らく意図的に浅くしている。学問的に記号論や言語学を追及したい研究者にとってのテキストとしては物足りないだろうが、奇抜な文字に対する好奇心に突き動かされたコレクターの集大成の書と考えると実に思い入れたっぷりに作られている。著者自身、この本を「奇妙な昆虫図鑑のようなカタチ・ワールド」と表しており、なるほど、著者の姿勢は嬉々として昆虫採集にいそしむ夏休みの少年の姿とダブる。
     本づくりにもこだわっている。オレンジ一色に全体が染め上げられた色彩や、カバー裏に描かれた図形など著者のこだわりが表れている。本自体が一つの作品なのだ。よって本の蒐集家ならきっと自分の本棚に納めたくなる。ここにまた新たなコレクションの連鎖がきっと始まる。

     文字や記号をデザインとして捉えなおすハイセンスな視点に読者は魅了されるだろう。さきに述べた通り、学術的な系統性は無視されているので、紹介される文字たちに連続性がないのはちょっと残念だが、著者は形の似ているものが少しずつ変化していくように順番を配置しているので、読み進めるうちに読者は様々な文字と相対することになる。
     パラパラとページをめくっているだけでも楽しいが、じっくり読むと面白い発見がいろいろあって、きっと気に入る文字がいくつか見つけられるだろう。
     個人的に好きなのはギリシア・クレタ島のファイストス古代宮殿遺跡で発掘された「ファイストスの円盤」に刻印された45個の絵文字である。なんだかカワイイ絵柄で素敵。解読のための文字数が足りず、解読が頓挫しているという所もなんか魅力的ではないか。
     ヨーロッパからアメリカの放浪者・ホボたちが使ったサイン「ホボ・サイン」なんてのはまるきり冒頭に書いた訪問販売業者のサインと発想は同じである。文化や時代は違っても人間の考えることは同じなのだなあと感じる。

     もちろん日本に関わる文字もたくさん収録されている。明治以降「国字改革論」なる運動があり、欧米の列強と対抗するために日本語の文字も変えていこうという動きがあったという。そこで発案された文字も多数収録されている。アルファベットのような奇抜なものもあり、すごいもんだなあと感嘆させられる。その中の一つ「流水文字」で書かれた『吾輩は猫である』(夏目漱石)の一節なども記載されており、見てて楽しい。
     僕が住んでいる沖縄に関わるものでも、与那国島のハウスマーク「家判(ダハン)」が紹介されてる。

     前述のまえがきによればこの書名は、「不思議な記号の出発点はゼロがふさわしいように思えてきた<中略>ただし、ZEROの範囲を逸脱する(err/error)の意味を込めて『ZERRO』とした」そうだ。ここにもこだわりが表れている。

  • 数々のクエスチョン

    モールス符号、テレックス暗号、点字、二進法・・・
    形に魅せられて集めた記号・暗号・符号・文字など121項の観念部品型録。
    この本は何なのか?誰が読むのか?何で買ったのか?だから何なのか?
    数々のクエスチョンが羊のように現れて眠くなる。

  • チェロキー文字の項目を読んでいて、「リトル・トリー」を思い出した。
    不思議な文字、記号がたくさん紹介されていて、パラパラめくるだけでも面白い。

  • この本にかかれていることはたいしたことないが、表意文字と記号の関係、純粋な意味での表音文字は存在しないのではないか等、本文に書かれていないことが次々と脳内を疾走する。

  • 121もの文字、記号、その他 のグラフィックを、ただ「おもしろい」「うつくしい」という視点だけで集めただけの本です。 が、これがたいそう面白い。
    時々眺めます。 そしてなんとなく こんなデザインを考えた人たちのことを思います。 松田行正さんは他にも妙な本を出していますな

  • 記号、暗号、符号、文字などの本。
    錬金術記号、ルーン文字、神代文字など、見ているだけで楽しい。装丁も凝っており、本屋で見かけて衝動買い。

  • 心のオアシス本。

    持っているだけでも幸せ本。
    眺めるのみでも満足本。

    帯の天地幅が長く好みよ、萌え本。

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著者プロフィール

松田行正
本のデザインを中心としたグラフィック・デザイナー。自称デザインの歴史探偵。「オブジェとしての本」を掲げるミニ出版社、牛若丸主宰。『眼の冒険』(紀伊國屋書店)で第37 回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。著書に、『デザインってなんだろ?』(紀伊國屋書店)、『デザインの作法』(平凡社)、『にほん的』(河出書房新社)、『独裁者のデザイン』(河出文庫)、『眼の冒険』『線の冒険』(ちくま文庫)、『RED』『HATE !』『急がば廻れ』『デザイン偉人伝』『アート& デザイン表現史』『戦争とデザイン』『宗教とデザイン』(左右社)などがある。

「2023年 『グラフィック・ビートルズ(3,600円+税、牛若丸・Book&Design)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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