知床開拓スピリット―栂嶺レイ写真集

著者 :
  • 柏艪舎
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本棚登録 : 16
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434112799

感想・レビュー・書評

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  • やや感情的なものがあるようにも思うのだが、知床の「国立公園」「手付かずの大自然」「厳しい自然環境」「知床100平米運動」…という先入観の危うさと、「戦後開拓」のとらえ方について再考を促してくれる良い本でした。

  • 知床が観光客で賑わうようになったのは'71年、森繁久彌が作詞・作曲し加藤登紀子が歌った「知床旅情」の大ヒットがきっかけとなっています。

    その後、'72年に斜里町自然保護条例が制定、'77年に「100平方メートル運動」がスタート。知床が観光地として、そして自然環境保全の地として全国から注目されるようになり、とうとう2005年、第29回世界遺産委員会において、知床が世界自然遺産に登録されることになります。

    私たちにとって知床は、世界遺産であり、原生林が生い茂る大自然であり、野生のヒグマやエゾシカ、渡り鳥が観察できる場所であり、太古の昔から人間の開発が入っていない未開の地である。そんなイメージを強く持っているのではないでしょうか。

    「知床開拓スピリット」は、知床旅情がヒットする以前、戦後開拓の名の下に、全国から知床半島に移住し、厳しい自然環境の中、開拓使として農地を開拓してきた人たちがいたことを、素晴らしい写真とともに教えてくれます。

    国の政策として移住してきた開拓使達は、国の政策として集団離農させられます。その後、開拓はまるでなかったかのようにその歴史は隠され、あるいは、そのことを「開拓の失敗例」として紹介され、かつての開拓使達は肩身の狭い思いをしながら、別の地で暮らしていたのです。

    写真家であり医者でもある著者の栂嶺レイさんは、元開拓者の人たちを訪ねて話を聞き、かつての開拓跡地を写真に撮りながら、当時の開拓者達の、「開拓の失敗例」とはとても思えない、おおらかで、想像力に富んだ生活の様子を浮かび上がらせます。

    なぜ、開拓者達は命をかけて開墾した土地、想像力溢れる開拓魂で作り上げた豊かな文化生活から離されなくてはならなかったのか? この本はそうした問題提起をしているのですが、読みながら感じるのは、「つらいと思ったことはない」という開拓者達のたくましく創造的な生活の楽しさです。

    栂嶺さんは本書の最後でこう語ります
    「「人の手が入った」事実をなかったことにして、開拓が入る以前の全くの原生林に戻すことは不可能である。開拓の歴史があった事実を受け入れなければ、育ちにくい森林にも、不自然に増殖し続けるエゾシカにも、今も刻々と変化していく植生にもただ悩まされ続けるだけだ。知床は九十年も前から開拓が続けられてきた、というう事実を改めて認識するところから、現在の、そしてこれからの知床の姿が見えてくるのではないだろうか」

    写真集という位置づけで発行された本です。文章を読んだ方がより理解が深まりますが、写真を見るだけでも、元開拓者達への溢れる愛情が伝わってくると思います。

    私は斜里町にある神田書店で平積みになっているのを見つけて購入しました。夜、温泉に入った後にちょっと眺めるだけでも、知床の見方が大きく変わってくると思いますよ。

  • 知床の森 開拓史の真実を探る医師 写真家・医師 栂嶺レイ WEDGE Infinity(ウェッジ)
    http://wedge.ismedia.jp/articles/-/660

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    世界自然遺産、知床に先人がイキイキと暮らしていた!
    知床半島にひっそりと残る開拓跡に焦点をあてた写真集。
    さまざまな理由から隠蔽されてきた知床開拓の歴史をありのままに伝えたいという思いが結晶した一冊。
    http://www.hakurosya.com/siretoko.htm

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著者プロフィール

1966年生まれ。写真家・医師。2001年に写真撮影・CDデザイン等を手掛けるアールイーアイ・アートテックとして独立。紀伊半島、東北、九州、八重山諸島など、古い民俗・信仰を残す村々の取材と撮影を続ける。著者に『知床開拓スピリット』(柏艪社)がある。

「2017年 『誰も知らない熊野の遺産』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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