薔薇は生きてる

著者 :
  • 創英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434114779

感想・レビュー・書評

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  • 山川彌千枝さんが8歳から16歳までに書いた小品、13歳から15歳までに書いた短歌、13歳から16歳までに書いた日記、友達に宛てた手紙、彌千枝さんのお母さんの日記の順に収められている。
    彌千枝さんは16歳で肺結核のため亡くなったということをほとんど意識しないで読み始めた。

    「大きくなつたら」という文章で始まるこの本には、彌千枝さんの喜び、悲しみ、苦しみが詰まっている。
    だんだん「つまらない」「淋しい」という言葉が多くなっていく。
    誰かが訪ねてきたといっては喜び、母様がいないといっては悲しむ。
    怒りたくない、優しくなりたい、いい子になりたいと日記に繰り返し綴っている彼女に、「そんなことで苦しまなくていい。あなたは優しい。」と伝えたくなる。

    彌千枝さんは自分の不安をお母さんに伝えていなかったらしい。
    それはお母さんに心配をかけたくないという彼女の気遣いなのだろうけど、死後、彌千枝さんの日記を読んだお母さんはどんなに苦しかったことだろう。

    お母さんの書いた文章を読んで涙が止まらない。

    夜淋しいという、「母様いて」というからいいともと言うとお疲れになるからもうちょっとでいいのという。可愛そうに。

    そばにいてほしいという思いと、母様には元気でいてほしいという思い、どっちも本当でどっちも切実。
    こんな時どうしたらいいんだろう?

  • 触れた薔薇の冷たさが生きている証であるのと同じように、何とも愛らしく、伸びやかで、快活な言葉たち。

    今も、この本を開けば彌千枝さんは生きている。

    母への気遣いと申し訳なさが、その純粋な感性の隅にほころびを作って少し顔を出している。そのことが強く悲しい。

    生きるために必要なのは、時に健康やお金以上に、質の高い文学なのだと、最期まで読書と文筆を忘れなかった少女から知らしめられる。

    きっと今も、日本の病院のベッドで過ごす子供たち、自宅療養の子どもたち、療養所の子どもたち、ケアが必要なのに顧みられていない子どもたちのなかに、無数の彌千枝さんがいるはずなのだが。

  • 眠れない夜に開くとよい気持ち

  • ああいいなあ、と終始思いながら読んだ。

    二度目の発病後の日記から言葉が変わってゆく。病気のどうにもならない辛さを知ってしまった少女は徐々に大人びてゆく。
    少女の悲哀。体こそ健康であればという切なる願い。自然である、当然であることへの羨望・妬み。そんな自分を醜いと思う汚い感情は、静かな詩となって紡がれる。

    平凡な女の子の凡庸な記録なんかじゃ、なかった。懸命に病気を受け止めようとするその姿に心打たれました。涙が出ました。
    「よい病人になれない人は、よい健康者にもなれまい」こんな言葉本当に向き合わないと出てこない。
    書き留めたいことがあまりにもたくさんありすぎるから、全部心の中にしまっておこう。

    (20110311)

  • 何度読んでも同じところでぐっときて涙ぐむわたし。
    キュートでいじらしくて切ない、世にも素晴らしい少女の手記。
    一生バイブルとして大切にしたい一冊です。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      中村佑介の表紙画に惹かれて手に取ったら、、、夭折した山川彌千枝の想いが一杯つまっている本でした。だから恐れ多くて変えませんでした。
      でも、や...
      中村佑介の表紙画に惹かれて手に取ったら、、、夭折した山川彌千枝の想いが一杯つまっている本でした。だから恐れ多くて変えませんでした。
      でも、やっぱり読みたくなってきました!
      2012/11/09
  • なよなよしたお嬢様がお上品に綴ったのかなと思ったら、飾らない本気で切実な文章に惹かれてしまった。

  • 穂村弘「短歌のガチャポン」に「はきたる血、」の短歌が紹介されていたので読んだ。

    約90年前の1933年に結核により16歳で亡くなった少女が作った短歌や短い物語、絵、日記、友人への手紙、母親による手記、現代の作家による解説を収めた本。
    以前にも複数の出版社で刊行されており、2008年刊行の創英社版(本書)は21年ぶりの新版で9冊目。
    (1932-1933年は夏季オリンピックがあり、日本が国際連盟を脱退し、夏目漱石や芥川龍之介が少し前まで生きていたetc.という、2023年から見るとなんともすごい時代……。)

    著者は1917年生まれで、兄4人と姉4人の大家族で育った末っ子。5歳の頃に父親を亡くしてはいるものの、兄姉など周囲に可愛がられ、(短くはあったが)学校にも通い、国内外の様々な本を読むなど恵まれた環境でのびのびと育っている。兄姉が色々な道に進み、お母様が歌人であるのも影響を与えていたのかもしれない。

    友人・佐々木さんへの手紙は、「あの本読んだ?あっちの本もおすすめよ」みたいなことを綴っていたり、佐々木さんの似顔絵を描いていたりして、古き良き少女小説に出てくる手紙のお手本みたいで微笑ましい。十代の女の子が友達に書く文章や話題は、今も昔も大きく変わらないんだなあ……としみじみ。

    逆に日記では「淋しい」「いつになったらなおるか」「日記なら愚痴をこぼしても気持ちを悪くしない」と本人にしか分からない暗い感情も時々綴っていて、最期の日に言った「もういやっ」はそれらが溜まりに溜まって表に溢れ出た一言だったのだと思うとなんとも悲しい。
    「生まれて初めて化粧したる顔、花嫁の如し。」p271 と綴り、後年になって母親になった佐々木さんに娘が成長した姿を重ねたお母様はどんな気持ちだったのだろうか。

    「乙女の港」にも登場し、彌千枝さんが亡くなって数十年後も出版社を変えて刊行された本書だが、瑞々しい短歌だけでも読む価値はあると思う。

  • スポットがあたるとしたら「16歳で亡くなった」というところなのだろうけど、ただただ優れた文学作品だと思った。アンネの日記のよう。

    大正〜昭和時代のお嬢さんの、ちょっと生意気で生き生きした考え方に触れられるありがたさ。

    大好きな北村先生の「リセット」と時代背景が同じで、「愛の一家」が出てきて嬉しい。

    サッペル女子も流星群を見たのでしょう、というところ。わたしにも重なった。
    リセットはフィクションだけれど、彌千枝さんも真澄さんも見た「愛の一家」を、令和の今わたしが見つめているふしぎさを思った。

    とにかくとても良いので…
    手元においていつでも読み返せるようにいたしましょう。
    美しいお嬢さま言葉使いをマネしたくなってしまう。

  • 川上未映子が紹介していたので。

  • 落ちるよにすばやく鳥の大空を斜めに飛んでゆくすばらしさ
    ピアノの音きこえなくなったり聞こえたり、ああ、雨がサーと降ってる
    2015/01/26-02/02

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