性格の心理学 (アドラー・セレクション)

  • アルテ
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434137761

感想・レビュー・書評

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  • ”6月28日の人間塾in東京 読書会の課題図書。「虚栄心」と「共同体感覚」が2大テーマ。
    当日は、岩井俊憲先生の講演会に引き続いて読書会で、本書に再度ぶつかった結果、一番心に響いてきたのは次のフレーズだった。
    「人生においては、正しいということは重要ではない。むしろ、自分の問題を前に進め、他の人の問題を促進することに貢献することが重要なのである。」(p.43)

    なお、訳者 岸見さんの解説によれば、原著タイトル"Menschenkenntnis" は「人間知」という意味で、解説の最後はこんな言葉で締めくくられている。
    “本書において示される「人間知」は、真に知れば、必ず人を変えることができる。”

    ここでいう「人」は「他人」ではなく「自分」のことなんだろうけど、このフレーズを信頼して、今後も人間知・人間学を学んでいこう。

    <キーフレーズ>
    ・われわれが性格特徴ということで理解しているのは、人生の課題に取り組もうとする人における、心の一定の表現形式の表れである。それゆえ、「性格」は社会的概念である。(p.7)

    ・性格を判断する時には、常に人の全体の中の位置にだけ、本質的な要素として注目すべきであるということ、個々の現象だけを選び出す、例えば、身体の状態、環境、あるいは、教育にだけ目を向けるのでは十分ではないということである。(p.18)
    ※常に「全体」をみよ、ということ。

    ・人間の性格は、われわれにとって、道徳的判断のための基礎ではなく、いかにこの人間が彼[女]の環境世界に働きかけ、それとどのような連環にあるかという社会的認識である。(p.38)
    ※性格=社会的認識

    ★人間相互間の違いは、共同体感覚と力の追求の大きさによって規定されることを理解した。これらの要素が互いに影響されるのである。それは、力の相互作用であり、それの外的現象が、われわれが性格と呼ぶものである。(p.39)
    ※性格=共同体感覚 と 力の追求 の相互作用が外的に現れたもの。

    ・虚栄心は、一定の限度を超えると、非常に危険なものになる。(略)人間的な連関を意識しないで、人生との連関を持つことなく、とりとめもなく動く。そして、人生が要求していること、人間として[人生に]何を与えなければならないかを忘れる。(p.41)
     ※人間として人生に何を与えなければならないか!!(p.185の解説にも登場)

    ★人生においては、正しいということは重要ではない。むしろ、自分の問題を前に進め、他の人の問題を促進することに貢献することが重要なのである。(p.43)
     ※これはとても響く言葉!現実には、虚栄心が邪魔をして、嘆きやいい訳に終始してしまう。

    ・価値低減傾向(p.49)
     その傾向は、虚栄心のある人にとって、そもそも何が攻撃点かを示している。他者の価値と重要性である。
     ※他者を軽蔑し、侮蔑する行動で、相対的に自分を高めようとするんだよなぁ。

    ★自分を曝すことを許さないこのような態度の中に別の形の虚栄心が見られる。自分の能力について決定する時が近づくと、まさにその瞬間に、虚栄心が方向を変えさせるのである。彼は、失敗すれば失うことになるかもしれない栄光のことを考え、自分の能力を疑い始める。これが決心することのできないすべての人の秘密である。(p.59)
     ※先送りにするのも、多かれ少なかれこれが理由だわ。

    ・イタリアの犯罪心理学者がかつてこのようにいった。「人の理想的な態度が一定の限度を超えたり、善意や同情心が人目について形を取ると、信じないことが最も適切である」(p.65)

    ・人間の不安は、個人を共同体に結びつける連帯によってのみ取り除かれうる。自分が他者に属していることを意識している人だけが、不安なしに人生を生きるだろう。(p.95)
     ※読書会Aグループで、一番多く引用された箇所。自身の虚栄心を「不安」の観点から見る人が多かった。

    ・共同体は逃亡者のための場所を持っていない。共同体において重要なのは、ある程度の従順と適応性、協力し、他者の助けとなる能力であって、他者に優越するために指導権を自分に引き寄せることではない。(p.104)

    ・無作法は根深い意味を持っているのであり、われわれは、それによって、人を判断できるということ、他方、そのような誤りを取り除くことができるのは、人を全体的に理解する時だけであることがわかる。(P.109)
     ※夜尿症、夜を怖れる、一人でいることを怖れる、自殺企図 …。
     ※その立場になったら、どうすればいいか。「全体的」な理解ができるか。

    ・われわれは既にこの困難から抜け出す方法を知っている。男性と女性の共生は、男女のどちらも服従することがない仲間関係、労働共同体でなければならないのである。そのことが、たとえさしあたってはまだ理想であっても、少なくともいつも、人がどれほど文化的に進歩しているか、ないしは、それからどれだけ遠いか、そして誤りがどこで始まったかを知る基準となるであろう。(p.119)
     ※都議会野次問題を思いうかべつつ、自分の職場のことを思う。「共生」「どちらも服従することがない仲間関係」「労働共同体」になっているか???

    ・われわれは怒る人を一貫して人生に敵対している人と特徴づけなければならない。しかしここでも体系へのわれわれの要求を無視しないために、どんな力の追求も、無力感や劣等感に基づいているということをもう一度指摘しなければならない。(p.131)

    ・悲しんでいる人は、元来、告発者であって、そのことで、まわりの人と対立するからである。悲しみも、当然、人間の本性として自然なものであるが、過度に誇張されると、まわりの人に対する何か敵対的なもの、有害なものを含んでいる。(p.133)
     ※悲しんでいる人=告発者!
     ※バランス!!

    ★人と人を離すと共に結びつける情動は、羞恥心である。それもまた共同体感覚が作り出したものであり、そのようなものとして、人間の精神生活からなくなることはない。人間の共同体は、この情動なしには不可能だろう。(p.141)
     ※「結びつける情動」という指摘が新鮮! 共同体の一員であるために、恥ずかしくても耐えるってことかな。

    ・父親のリーダーシップ、父親の権威(p.144)
     このただわずかしか共同体感覚にもとづいていない権威は、たちまち公然の、あるいは、隠された抵抗へと導く。それが速やかに承認されることはおそらく決してない。その最も重大な欠点は、権力の所有と結びついている利点を示し、子どもたちに権力を渇望させ、野心を持ち、虚栄心を持たせることで、子どもたちの力の追求に模範を示すことにある。子どもたちは今や皆行きすぎ、尊敬され、まわりの人の中で最も強い人において見てきたのと同じ従順と服従を要求し、そのようにして、親やまわりの他の人に敵対的な態度を取るようになる。(p.144)
     ※おそろしや!「父親の権威」による負の連鎖。職場の経営者やリーダーにも言えること。自分の代で断ち切らねば!!

    ・大抵なされるもう一つの主たる誤りは、おそらくは母親は役割を引き受けるが、しかしあまりにも強く、過剰な仕方で引き受けるので、共同体感覚を[母親以外の人に]移すことができないということである。(p.146)
     ※これも、父親の権威と対比してありそうな話。気をつけるべし。外の世界へと開いていき、片目をつぶって(あるいは半眼で)、離れていく勇気を見守る必要あり。

    ★母親への関係の他にも、教育には注意しなければならないさらに他の多くの重要な要素がある。とりわけ、快適な家庭教育は、子どもがこの世界に喜んで心軽やかに順応することを可能にする。(p.146)
     ※こういう家庭でありたい。

    ・学校はどんな子どもも精神的な発達の途上で入る状況である。それゆえ、好ましい精神的発達の要求を満たさなければならない。それゆえ、学校が精神器官の発達条件と一致している時にのみ、よい学校だといえる。われわれはこのような学校を初めて社会的学校と呼ぶことができるのである。(p.149)

    ・人と人(Menschen)とが仲間として結びついている(mit)と感じられることが、共同体感覚(Mitmenschlichkeit)があるということの意味である。(p.154:訳注)

    ★ドストエフスキーは、『未成年』の中で笑いについて分析している。
     「もし人間を見分けたい、人間の魂を知りたいと思ったら、その当人の沈黙している様子や、しゃべったり、泣いたりしている具合や、あるいは進んで、高潔なる思想に胸を踊らせている状態に注意するよりも、むしろ笑っているところを見たほうがよい。笑い方がよかったら──それはつまり、よい人間なのである」といっている。(p.161:訳注)
     ※「快活さ」の解説文における「笑い」についての訳注。いや、まさに、そのとおりだと同感。

    ・しかし、最初の喜びはすぐに消えてしまう。何もかもうまくいくはずだったのに、たちまち行き詰まってしまうからである。理由は二つある。一つは目の前にいる子どもが他のどんな子どもとも違う独自な面を持っているということである。本をどれほど仔細に読んでみても、そこには一般論は書いてあっても、目の前にいる<この>子どもについて書いてあるわけではない。
     そこで本ではだめだと思った人は、カウンセリングを受ける。たしかにカウンセリングでは自分の子どものことが問題にされる。ところが、今度は先とは反対の極に走る人がある。即ち、理論、原理、原則を学ぼうとせず、こんな場合はこうするというふうに、いわば応用問題の答えを知りたいと思うのである。これが育児がうまくいかない二つ目の理由である。(p.167:解説)
     ※あー、とてもよくわかる。

    ・人間の悩みはすべて対人関係の悩みである、とアドラーはいうが、対人関係の問題を解決するためには、さらに、理論の誤用を防ぐためには、自分を知り、人を理解すること、即ち、本書の原題である Menschenkenntnis(人間知)が必要である。(p.168:解説)

    ・ダイエットをしている人が、食べてはいけないのに空腹にかられて常よりもたくさん食べたという時に、心の中での葛藤に負けて、つい食べてしまったのでは<ない>。全体としての私がその時、これを食べることをよしとしたというふうに考えるのである。(p.178:解説)
     ※これが全体論!「全体としての私」が決断。★個人(indivisual)=分割できない全体としての人

    ・アドラーは、共同体感覚は規範的な理想、方向を与える目標として優越性の追求に方向性を与えるものと考えるようになったのである。(p.180:解説)

    ★どう思われるかを考える前に、自分が今ここで何をすればいいかを考えられない人は、するべき好機を逸することになり、現実との接点を失うことになる。(p.185:解説)
     ※自分が今ここで何をすればいいか!!

    ★アドラーは所属感を重視するが、共同体との結びつきは、受動的なものではない。その上に、積極的に、与えること、貢献することによって所属感を得られることが重要だと考えるのである。アドラーがこのようにただ性格の分析に終始するだけではなく、その改善の方向性を具体的に与えていることも、アドラーの性格論の特徴である。本書において示される「人間知」は、真に知れば、必ず人を変えることができる。(p.187:解説)


    <きっかけ>
    2014年6月の人間塾課題図書”

  • アドラーの本は好きで、手に取るが、これは何だろうな、論文を読んでいるようで、読みづらく内容が心に入って来ない。

  • 流行りのアドラー心理学。
    正直、雑誌なんかで目にする関連記事や本のキャッチコピーが私の苦手ストライクで敬遠していたのだけど、100分de名著がとても面白かったので読むことに。
    いやー、アドラー先生きっついよ!!
    安直な自己啓発系なんて思っててほんとすみませんでした!!(便乗本の中にはそういうのもあるかも知れないけど)
    de名著でも、トラウマは自分で作ったものだというのはなかなかショッキングだったけど、性格について書かれた今作では、性格は遺伝なんかじゃないと。
    家族や周囲の模倣はあっても、最終的には自分で選ぶものだと。
    なので、例えば怠惰な性格というのは、元々怠惰だから課題に取り組めないのではなく、課題に取り組みたくない言い訳として怠惰な性格を作り上げたのだと。
    え、ええー!!
    言われてみればわかるけど目から鱗ー!!
    性格というのは自分の虚栄心を満たすために作るのだとか、グサグサ来ます先生。
    突き詰めれば、全て自己責任、ということなんだろう。
    背負うのはなかなか覚悟が要るけれど、潔い。
    その心がけはしていたい。
    もちろん、全て正しいとは思わないが、読んで良かったなー。

  • ★2014年8月20日
    続けて読んでいる中で、特に難解。頭に入ってこない。
    こういう性格の人の背景にはこういう心理がある、という内容なのだが、背景にある心理はアドラーが注目している共通のものなので、区別がつかない。この1冊については、わざわざ読まなくても、他のもので触れることができる。とぎれとぎれに読んだこともあり、知識としても印象としても残りにくかった。

  • 図書館より。
    個人的には、、かなり動揺しながら読み進めている。
    文章がかなり難しく感じられる。

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著者プロフィール

1870年‐1937年。
オーストラリア出身の精神科医、心理学者、社会理論家。フロイトおよびユングとともに現代のパーソナリティ理論や心理療法を確立し、個人心理学を創始した。実践的な心理学は、多くの人々の共感を呼び、アドラーリバイバルともいうべき流行を生んでいる。

「2022年 『人間の意味』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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