座卓と草鞋と桜の枝と

著者 :
  • アルファポリス
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本棚登録 : 76
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434203510

感想・レビュー・書評

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  • 表題の方の話も良かったけど、もう一つの笛の音が好み過ぎた。

    江藤三兄弟は三者三様だな。
    長男は長男らしく、次男は癖のある神童、三男は男前だが誠実で実直。
    個人的に、非常に美味しい設定だ。

    先に収録されている表題の話は、三男の話だ。
    まさか主人公とその妻両方が死ぬとは思わなかったので意外過ぎる展開ながらも、それはそれで楽しめた。哀しくもとても良い話だ。

    仁三郎は男ぶりが密かに評判である程なのに、小夜を妻に選ぶ、中身もイケメンな男だ。良いなぁ。小夜が羨ましい。
    朴念仁なのはご愛嬌。
    仁三郎、小夜が死んでも泣かなかったが、心の中では物凄い衝撃だったのだな。
    受け止めきれず、結局後を追う形になってしまったが、それはそれで仁三郎らしい。
    仁三郎がいかに衝撃を受けたかは、長兄が思ったようにあの日記で分かる。
    日頃仕事のことを詳細に書いているのに、小夜が死んだときだけは仕事のことなど一切書かずただ「妻が死んだ」とだけ書いてあるのはとても異様で、それ程衝撃だったのだと分かる。
    涙を流せないくらいの衝撃だったんだな。
    あの老人の話で、仁三郎も自分が受け止めきれない衝撃を自覚したんだよな。
    哀しいけど、本当に良い話だった。
    構成が非常に良く出来ていると思った。

    笛の音は、次男の信次郎とその主の話。
    この次男ほんと良いキャラしてる(笑)
    ちょいちょい出てくる長兄とのやり取りが面白すぎて凄い好き。
    特に笑ったのは、長兄に阿呆の相手は嫌ですのあたり。
    頭が緩い、どこかに脳みそを落としてきた、容赦無い言葉に爆笑した。
    そんな信次郎に返した長兄の「成長途中と言え」でリアルに噴き出して笑った。
    この兄弟良いなぁ。
    長兄はさぞ頭を悩ませ痛かっただろうが(笑)
    祖父と信次郎のやり取りとその仲介をした長兄は、苦労してるなぁとまた笑いが。
    あと手紙の件も笑わせてもらった。
    意味不明って、それを信次郎が言うのか(笑)
    信次郎、いい理解者を持てて良かったな。若い内に芽を潰されなかったのは長兄のおかげだな。
    小さい頃にこういう理解者が得られなかったら、信次郎みたいな神童は潰れていたと思う。

    そんな癖のある信次郎と鷹光は本当にピッタリの組み合わせだと思った。
    鷹光は器が大きいよな。そして、人をちゃんと見ている。
    信次郎は勤勉と言われたの本当に嬉しかっただろうなぁ。
    神童と謳われ続けてきたから、こんなにちゃんと中身を見てもらった賞賛は胸に響くものがあるはず。
    鷹光は天然タラシだな(笑)

    薬草園のために両替商のところに行ったところは良かったな。
    あそこで本当に主従関係になったといっても良い気がする。
    主に信次郎の心境の変化。
    鷹光が戦っている様に見えた、主君の面子を立て直す、立派な家臣の心だ。
    それにしても両替商との交渉は見事だった。そして容赦無い。
    あの交渉で一番信次郎の本来の能力が発揮され、間違いなく全開だった瞬間だな。
    途中で両替商が可哀想になるくらいには凄かった。翌日に持ち越すと言われた時は両替商の心情お察しするわ。
    冷や汗ダラダラで逃げ出したかったのにな。

    信次郎と鷹光の20年の間の話を見たいなぁ。
    すごく気になる。絶対面白い。

    最後、鷹光がお役御免になったとき信次郎もやっぱり辞した。
    あの私塾に信次郎も一緒にいるのだろうなぁ。

    信次郎の不器用で遠回しな褒め言葉をちゃんと察する鷹光凄い。
    それを聞かされた長兄の反応が可哀想ではあったけど面白かった。
    花火、見せてあげる約束したんだな。
    名前を呼ばせるところで信次郎のクーデレの真価を見た。あれは萌える。

    信次郎と鷹光の話がもっと読みたい。

  • 字が大きく読みやすかった。

    代々、家老職を担う家元の、三男と次男の話。
    どちらの話も良かったが、それぞれの話に長男は出てきても、三男の話に次男、次男の話に三男は出てこないので、少し「?」となったところはあった。

    話が短く、急展開なことも多いので、もう少しエピソードなどがあれば、ストーリーに厚みが増したかな、とも思う。

    お武家さんの話は、政の堅苦しいイメージがあるけど、これは優しくて、義理と人情なとっつきやすいお話。

  •  出世に全く無縁の愚直な下級武士と、可愛らしい奥さんの日常が描かれます。まさに、人情味溢れる物語です。やっぱりこの世は、義理と人情ですね。

  • 表題作と「笛の音」の中編2作.
    ある藩の国家老の家格の江藤家の三男を主人公にした1編.妻との慎ましい情の通い合いが(悲しい結果ではあるが)心に染み入るようだった.また次男と藩主代理の1編もぎこちない二人の交わりが掛け替えのない関係になっていくのが面白かった.そしてどちらにも登場する黒幕的な長兄がなかなか良くて,彼の物語も読んで見たいと思った.

  • 座卓が3
    後半の「笛の音」が4
    図らずも、藩の後継者となった前藩主の弟鷹光。鷹光を支える用人・信次郎との奇妙な関係。

  • 優しいけれど、少し不器用な人達の心暖まる話(*´-`*)表題作は江藤家の三男、「笛の音」は江藤の次男の話で、どちらもタイプは違うけれど善い人(^^)♪長男も話に登場して人柄はわかっているけれど、単独で読みたいなぁ(^^)

  • 武家の役人である江藤仁三郎と、見合い結婚した太めの妻・小夜との日常と、哀しいけどいい話。
    後半は、江藤家次男の信次郎と、藩主代理の鷹光の話。
    薄くて字が大きい内容量に不満はあるが、「良い話を読んだなぁ」な気分にはなる。どうせなら長男も話をつけて欲しかったです。

著者プロフィール

2013年、「座卓と草鞋と桜の枝と」で「第4回アルファポリスドリーム小説大賞」受賞。2015年同作にて出版デビューにいたる。

「2017年 『座卓と草鞋と桜の枝と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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