苦手を好きに変える英語授業: アイディア集 (英語教育21世紀叢書 11)
- 大修館書店 (2003年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784469244830
感想・レビュー・書評
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定時制高校など、元来勉強に前向きになれない生徒が集まる高校で、何とか英語に興味を持たせるために、著者が工夫してきたことの数々。「アイディア集」と言うと、本当に種々のタスクのようなものやワークシートが延々と並んでいるイメージがあるが、決してそういうものではなく、実践を支える理念みたいなものが大部分、盛り込まれている。また、著者自身が「英語が苦手だった時期があった」(p.vii)ことから、「『わからなさ』を身近で共感できる」(同)という生徒に寄り添おうとする姿勢が、全編の底流にあるのも特徴的だ。
「はじめに」のp.vでは、「どうして英語なんかやらなくちゃならないの?」という「声が出ること自体が、授業に対する不満であるということが見えるようになった」とあり、まさに田尻先生が言っているのと同じことだと思った。色んな実践例の中に、ノウハウのポイントとなる部分が書かれていて、例えば「教科書の教材がそれほど魅力的でなく、生徒にとってあまり積極的になれないような内容の場合には、音声に重点を置いて授業を組み立てる方法もある」(p.32)というところは、結構おれは前高校で教えてた時、自分は音読マシンか、というくらい音声ばっかりやってごまかしていたが、これは反省しよう、と思わされた。あと、「特に英語が苦手な生徒には単純化してそれを繰り返すことが重要である。一定の範囲ができるところまで到達すれば、それだけで大きな自信となるからである」(p.33)というところと、「英語が苦手な生徒ほど理屈をつけないと文法が理解できない」(同)というところは、うまくバランスを取らないといけないなあと思う。あと、ALTの授業を述べた箇所で、「意味はわからなくても、音が聞き取れるだけでも生徒にとっては『わかった』という気持ちになれる」(p.107)という部分は、こういう心理をプラスに利用する方法が何かありそうだ、と思った。また、「外国語としての英語の授業は、時としてスキルを身につけることのみが目的化され、英語の練習を繰り返すと言うパターンに陥ってしまう。また、教室の中でゲーム的に飛び回れば『動く』ことになるかもしれないが、『考え』たり『主張』したりすることにはならない」(p.143)という部分は耳が痛い。今おれが中1を教えているから、というのもあるかもしれないが、もっと内容に踏み込んで、「心を揺さぶる」感じの授業には出来ないものか、と思う。また、学級崩壊についても、「授業が充実して生徒たちがわかるようになれば自然におさまっていく」(p.124)など、単なるアイデア集ではなく、授業のエッセンスに踏み込む内容となっていた。(15/09)詳細をみるコメント0件をすべて表示