英語教師のための第二言語習得論入門

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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469245707

作品紹介・あらすじ

「教えたことがなぜ身に付かない?」…SLAでその答えが見つかります。小学校・中学・高校・大学-効果的な指導法を提案。

感想・レビュー・書評

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  • 英語を教える人が最低限押さえておきたい第二言語習得の研究成果を紹介し、現在の日本の英語教育のあり方と方向性を展望。さらに、小学校から社会人まで、個々の教育現場におけるの英語教育のこれからを考える。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40158986

  • 第一章:SLA理論のエッセンス
    ①母語の影響
    母語に引っ張られる言語転移が起こる。+とーの二種類があるが、スキルの転移は人間の認知活動のあらゆる場面で起こりうること。
    Krashenが文法事項については「Natural order」があると主張したが、母語移転はそれすら覆した。Speakingを早めにやる危険はここにもあり、母語の感覚で生成をしてしまうと、英語では絶対言わないような無理やり英訳が起こる。
    ②年齢要因
    臨界期仮説(Critical period Hypothesis)によるとある年齢を超えるとネイティブのような英語を使うのは無理だと言われている。事実かどうかはまだ不明だが、Older is faster younger is betterというのは経験則的に正しい。
    ③母語フィルター
    母語にない区別(単数複数など)が深いレベルにまで処理できないからネイティブみたいになれない。年齢要因の一つの説明要素
    ④バイリンガルの利点
    バイリンガルは認知能力が優れている。老人も認知症の発症が遅れて進行も遅い。
    ⑤外国語学習における個人差
    5つの要素・・・若さ/母語との類似言語か/外国語学習適性の有無/動機づけ/動機づけ/学習法
    ※学習適応性はMLAT(Modearn language aptitude Test)で計測できることが判明している。
    1.言語分析能力(言語の文法や規則に関する敏感さ)
    2.音声認識力(聞き取るだけではなく、聞いた音を頭の中で保持する力)
    3.記憶力(丸暗記力)
    ⇒思春期を過ぎてから学習に成功するためには記憶力が必要らしい
    ただ、指導側としては適正を把握した上でそこを伸ばしていくように学習させるのも良いことが判明しており、そういった学習者の適性を考慮して教え方を変えることを適正処遇交互作用(Aptitude-Treatment Interaction ATI)と言う。

    ⑥動機づけ
    統合的動機づけ(Integrative motivation): 好き嫌い等の情緒的要因アリ
    道具的動機づけ(Instrumental motivation):XXに必要という要因
    国際的志向性(International Posture):国際的に活躍したいという要因
    どの動機でもいいから、それが学習行動に結びついているか?が大事
    行動に結びつくか(投資するか?)については3つの観点があり
    ①学習開始時のモチベーションが維持されるとは限らない。動的に把握すべき
    ②学習活動が楽しくないと動機づけは下がる
    ③十分な時間的投資に見合う必要性がないと続かない
    などの特徴がある。

    ⑦効果的学習とは?:下記3つを満たすことが理想だ
    1.言語の本質に合致した学習法
    2.言語習得の本質に合致した学習法
    3.個々の学習者の特性に合致した学習法

    ⑧言語ができるとはなにか?
    1.文法能力(Grammatical Competence)
    2.談話能力(Discourse Competence)
    3.社会言語学的能力(Sociolinguistic Competence)
    4.方略的能力(Strategic Competence)
    言語は、ソフトなもので規則から外れるものがたくさんあるので、文法能力だけでは不自然な表現だらけになる。

    ⑨言語習得の本質は?
    ・インプット仮説
    (クラシェンにより提唱、聞くこと読むことにより言語習得は起こると考え、理解優先の教授法がいいと考える。TPR(Total Physical Response)で先生の指示に教師が動作をするなんていうアプローチの基となったり、Immersion 教育も由来する。インプットにより予測文法が身につくから、無意識に予測できるようになることが理由。ただアウトプットに関しては、頭の中でリハーサルとかしてるかしてないかで変わる。ただ、インプットの注意点として、意味がわからないと意味無し。)
    ・自動化理論
    明示的な文法ルールとかから教える手法。インプットの際の気づきを増長するなどの効果はあるが、これだけだと絶対無理。

    第二章:SLAからみた日本の英語教育
    ①SLA研究の誕生
    誤用分析、中間言語分析を始めた。(Pit Corder)
    Bill Vanpattenやクラシェンがインプット派
    Merrill Swainがアウトプット派*(あくまでインプットは前提条件でアウトプットは、意味処理だけでなく文法処理させるのに必要だと提要)

    ②アウトプットの効用:Swainによると以下3つ
    1.自分の英語のギャップに気付く
    2.相手の反応を見て英語が正しいか伝わるかの仮説検証が可能
    3.お互いの言語にコメントすることで言語意識が高まる(メタ知識)

    ただ、アウトプットはそれほど言語習得に対して重要な役割を果たしていないというのが支配的。

    ③インプットとアウトプットをどう組み合わせるか?
    アウトプット⇒インプット
    でやるべき。どこが言えないかわかって、そのギャップを埋める形になるため。
    大量のインプットと少量のアウトプットが英語学習の基本

    ④日本の問題点
    1.理論が自動化モデルに偏り、自動化の訓練も不十分
    2.インプットの質量共に不十分
    3.意思伝達よりも正確さを重視しすぎ
    知識習得に偏る日本の学習はもったいない。言語名のでコミュニケーションを貴重に置くべきで、たとえ単語を少ししか知らなくてもうまく会話するすべを身に着けてたらいい。日本人は、単語や文法は知ってるのに使えるようになってないのがあかん。

    第三章:小学校英語教育のこれから
    1. Inputを増やす必要があるが、他の教科に悪影響はなさそう
    2.先生の発音は悪くても大丈夫、子供は手本を区別できる研究結果
    3.Inputでは具体的にはTPRや自主的読書教育が有効。自主的読書教育は、かんたんな英語の読み物をたくさん用意して、テープを聞きながら個人で自由に読む活動。
    他にも具体的に有効な教材としてはGrapeSeedやNHKのプレ基礎
    4.早く英語ができた人が遅い生徒と混じって勉強すると足を引っ張られるということもわかっている。音素教育については⑫歳ぐらいまでにやってれば最悪おk
    5.文字はテストせずに音声中心の活動の中で周辺的に提示して自然な習得を促すべき

    第4章~5章は中学英語高校英語の総論

    第6章:大学生、社会人のための英語学習
    ①インプット処理をいかに高めるか
    1.一定程度の理解度が保証できるもの
    ⇒分野を絞ったインプットが効果的
     Content-Based Instruction(CBI)内容重視の外国語教育と言われるもの。
    CLIL(Content and Language Integrated Learning)という発展形も参照
    同じ教材を何度も聞いたり読んだりするのもOK

    2.感情に訴えるもの
    ⇒フラッシュバルブ記憶の応用。リスニングとリーディングを同じ材料でやる

    3.自分にとって意味のあるもの

  • 先生の英語の発音は関係ないらしい。
    素晴らしいことを学んだ!

  • 読みやすい!簡潔に説明してくれる!明日からの授業に熱が入ること間違いなし!

  • オススメの英語の勉強方法

    多読多聴
    感情に訴える教材
    自分の事について話す
    自分の知りたい内容を英語で調べる
    インプット70%、アウトプット30%

  • 英語教師でなくとも、英語学習者ならば読んで損はない。
    社会人なら1章と6章だけ読めばOK

    第二言語習得に関するいくつかの説を取り上げ、ある程度定説となっているもの、いまだに論争があるものと切り分けた上で、客観的に述べられている。
    巷に溢れている成功者による属人的な英語学習指南書よりも、かなり説得力がある。
    本書にあるように、「理論に基づいた実践」が最も高い効果を生むということを気づかせてくれる一冊。

  • 英語を教える立場の方、英語を学んでいる方が対象である。英語を学ぶにあたり、インプットを多く、アウトプットを少なくして学ぶ。インプットにあたってはもちろん文法は必要であるが、文法は自分の英語が正しいかどうかの判断基準が可能なレベルで大丈夫であり、多読と精読とリスニングを行う、アウトプットは英語で日記を書いたり実際に話すことである。
    昔から言われていることであるが日本の英語教育の誤りが(致し方ないこともあるが)また明るみになった。

  • 第二言語習得の入門書としてはかなりオススメ!

  • 『外国語学習の科学ー第二言語習得論とは何か』よりも専門的な書籍になるのかと思っていましたが、かなりかいつまんでわかりやすく書かれています。いろんな人に読んでほしいという思いもあるかと思いますが、何より教員に読んでほしいとのこと。『外国語学習の科学』はあまり読まれていないようなのです。

    本書はSLAの原理についての解説のほか、各校種で指導するときのポイントも章ごとにまとめてくれています。
    科学的根拠から指導法を見直すことも大事。しっかり勉強したいです。

  • おすすめ資料 第180回 (2013.3.15)
     
    言語科学の知見を実際の英語教育に生かすための入門書です。

    英語の先生に向けて書かれていますが、 それ以外の人、特に効率的な外国語学習をめざす人、にも役立つ内容です(特に第6章)。

    [同じ著者の本]
    外国語学習の科学 : 第二言語習得論とは何か
    外国語学習に成功する人、しない人

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