大学の使命

制作 : Jos´e Ortega y Gasset  井上 正 
  • 玉川大学出版部 (1996年12月発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784472099014

作品紹介

オルテガの大学論は外国でも今日再評価されつつある。オルテガはわれわれに二十一世紀に通ずる大学論を示唆している。

大学の使命の感想・レビュー・書評

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  • 2012.6.17追記------------------------
    大学改革の根本は、大学の使命を明確化し、制度の健全性を保つ根幹とオルテガはいう。おもしろいことに、当時のスペインの諸大学改革については、そうした根本と向き合わずに、誤った他国の制度を模倣している様を批判している。

    教授における経済の原理の適用として、基本的には平均人を念頭に置き、習得できないものの付与・要求は虚構と戒めた。(今日の多くの大学もこれにあてはまるだろう)
    経済活動の原理は「希少性」であり、教授活動の原理は「学習能力に限界がある」ことが出発点となる。今日いわれる、学生の学びに着目した教授学・教授法・教授制度の更新が必要と説いている。教授内容の精選(刈込)、すなわち、無条件に必要なものを残し、学生の習得可能性を考慮した整理が課題。時代が異なっても言われることは同じなのだな。

    大学の機能は、平均人が受ける高等教育を提供し、平均人を教養ある人間とよき職業人にすることができた上で、科学の研究が加わる。この重み付けがポイントとなる。専門職教育は科学者の養成と同様でないことも確認。研究が大学の中心機能となり、専門職養成追求の希薄化と教養の排除に警鐘を鳴らしている。ちなみに科学研究と科学の教授とは区分すべきともいっている。

    教養の内容は大部分が科学から来ている。他方で、人間的生き方には、機械的反応でなく判断・決定を伴っているので、判断基準と知的解釈が必要。そして科学には終焉はないが生き方には道標が必要、としている。


    2011.12.7記録------------------------
    本書の原著は、90年以上前の1930年に、スペイン人のオルテガによって著された。訳者の付録によれば、この大学論はハーヴァードの報告書で賛同が得られた。しかし、ドイツで受け入れられなかったという。ドイツでは、フンボルトの大学理念を前提として、専門職教育と研究そして一般教養を本質的に分離して捉えられていた。

    オルテガは、大学改革の根本は、大学の使命を明確にすることで、その大学の使命は、1.教養(文化)の伝達、2.専門職教育、3."それらに加えて"科学研究と若い科学者の養成、にあるとしている。今日、私たちは諸答申を読んでいてこれらのことを耳にタコができるほど聞いているけれども、実は19世紀~20世紀前半の大学の貴族的・特権的な文化を批判し、早い段階で現在の我々に馴染みのあるような大学像を述べたのは本書のようだ。全高等教育の中核を、教養「学部」にしたい、と言い切っているところに、勇気づけられるのは私だけでないはずだ。加えて井上は、その積極的機能として、科学を生み出す母体と、従来の哲学部の2つが含まれていると推量している。

    一般教養を教授することが仕事として成り立つ理由は、「確実に、快適に、非難の余地なく生きてゆくためには、非常に多くの知識を必要とするが、青少年は限られた能力しかもっていない、」(37頁)からだけと指摘している。

    これを踏まえると、今の大学の学士課程が、4年間で自学自習を含めた講義・演習で124単位に限られているから、カリキュラム論をはじめとする大学教育が課題になるといえるのではないか。青少年は、個人の知識習得能力をはるかに超える知識を、ある程度知っておかないといけないので、きっと限定された枠の中で、何を優先するかが焦点なのだろう。
    付録で井上は、「それぞれの領域に関し多量の知識群を集約化し単純化して、今日までの研究成果の過程を正確に辿りながら、その現段階の特徴を明確に理解させることにある。」と、教養学科目の特徴を述べている。私は読了後大学の第一の使命を、「教養を科学的に後世に伝達すること」と解した。

    政治的成功事象を学校教育の成功に結びつけていることは、根本的誤謬であると主張し、前世紀の「理想主義的」盲信の残りかす、と表現しているところは、今の為政者に振り返りの機会を与えてくれている。

  • 大学・高等教育論として欠かせない一冊でありながら、ある種の面白さも交じっている。というのも、オルテガはほかならぬ『大衆の反逆』の著者であるが、その人間観・危機への意識がこの『大学の使命』にも明確に現れているのだ。
    『大衆の反逆』のキーワードとしては貴族・エリート主義が一般に知られているが、この語が現在与えられている通俗的一般的印象は、オルテガにおける貴族・エリートの意味と全く異なる。そこで語られる大衆-エリート-人間観をもとにすれば、本書『大学の使命』もよく理解されるだろう。研究と教養についての態度、及び教養の内実と、それが誰の為にこそ必要であるのかが、他の大学論との比較におけるオルテガの主な特徴となる。(この辺りは多くの解説が出回っている。)
    オルテガが『大衆の反逆』において大学人をも糾弾したことを思い出しながら、本書は読まれるべきであろう。大学は「精神的権威」として振舞わなければならない。それはちょうど、現代では絶滅し、時代遅れと諦められているオルテガ的エリートのように。権威は常に、権威持つ者ではなく、その権威を見上げる人々のために働くはずである。

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