平成遺産

  • 淡交社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784473042989

作品紹介・あらすじ

〈「完全主観」でたどる平成〉
〈平成時代を生きた8人の表現者が、それぞれの記憶を語る〉

この30年間を象徴する物事=「平成遺産」。2019年5月に改元を控えたいま、後世に遺したいものとは何か? その姿から、我々
がどんな時代を生きてきたのかが見えてくる──。これまで平成論を語ることのなかった8人があえて平成にフォーカスして語る、一筋縄ではいかない現代社会文化論。

執筆陣にはライター・武田砂鉄をはじめ、詩人・最果タヒ、保育士/ライター・ブレイディみかこ、言語学者・川添愛、漫画家・みうらじゅん、漫画家・田房永子、政治学者・栗原康と、各分野で独自の存在感を放つ7人が参加。さらに写真家・川島小鳥が本書にあわせて選んだ初公開作品も収録します。いわゆる重大事件の解説ではない、個々人による「完全主観」の平成から時代の空気に迫る一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • [p. 168 以降]

    読了。

    武田砂鉄「平成は終わる、神田うのは終わらない」。自分はあまり神田うの成分を取り込んでこなかったので、この文章を読んで初めて、報道されてきたニュースの端ばしに、どういう形で神田うのが登場してきたのかを知った。面白いものだなと思う。

    武田砂鉄・最果タヒ「『平成」でくくる意味なんてあるのか」。対談。最果さんの仰っている SNS との距離が、わかる部分もあり、実感としてわからない部分もあって、面白かった。具体的には、Tiwtter の変化。いいねの意味やとらえ方と、創作との関わらせ方。そこにあるヒエラルキーなど。「役に立つ」云々に関しては、自分はこの対談からはちょっと距離があって。「誰かの(親でなくても全然かまわない)役に立っている」という幻想って、単純に自分が安心できるんですよ。それは、どんな小さなことでもかまわない。当然、なくてもいいことなのだけど、自身の存在に不安を感じてどうしようもなくなってしまったとき、その小さな積み重ねで、そこから立つことができる。役に立たなくてもそこにいていい、は、その先にあるのではないかというのが自分の感覚。当然、こんな感覚なんて古くさいので、平成への置き土産として、今にもちこむ必要はまったくないものかもしれないけれども。

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    [pp. 106-167]

    田房永子「平成 0 年代、女子高生ブームの時ちょうど女子高生だった私」。成人男性と女子高生とのあいだに金銭関係が生じているとして、それを女子高生側に主語を与えるのは転倒しているのではないかという話。女子高生ブームだったときの筆者自身や周囲のエピソードから話が始まっており、実感が強い。したり顔をして女子高生を語っている大人側こそが、そもそもその仕組みをつくってきたのだという指摘は、大人の側に立つ誰もが気づいていなければならないはずのことだ。女子高生たちが率先してそういった商売の仕組みをつくってきたのではなく、先に仕組みをつくってきたのは大人たちなのだと。そこで展開される金銭感覚にも、すごく納得できるものがある。女子高生手前の女子中学生には、ニュースや噂で聞くその額は、途方もなく大きく、理由はどうあれお金が欲しい子どもたちには非常に魅力的に感じられる。けれども、それを提供する側の大人には、こづかい程度の、ちょっとした遊び程度で片づけられる額なのだ。主語が女子高生になり、「売った」のではなく「買われた」という受動態の動詞に変わった途端に、バッシングが起こる。そういう流れがあったということを、わたしたちはあらためて知っておく必要があるのだと強く思った。

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    [pp. 52-105]

    ブレイディみかこ「ロスジェネを救え? いや、救ってもらえ」。英国在住の経験からこの期間が語られているその流れを追うと、日本はずっとその後追いをして酷いことになっていっているのではないかと思ってしまう。英国人がブレアとキャメロンを選んだその理由というのが、いま日本で起こっていることと重なっているように思い、非常に怖い。そして、その後に語られるロスジェネの話。本当にもう、国家がきちんとお金を出して投資してくれ、と心底思う。ここで提示されている、世代ごとの給与額の変化や、IMF による純資産の資料については、もっと大きく取り扱われるべき問題だったのでは。しかし、本書の刊行が 2019 年であり、それから 3 年を経たいま、状況がどう変化してきたかを考えると、ますます怖い気がしている。いや、本当にもう、国はきちんとお金を出して投資してください。

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    [p. 51 まで]

    最果タヒ「阪神淡路大震災」。思えば、昭和という時代を語るときに、個人の感覚で語ることは、あまりできなかったように思う。それは、昭和 20 年という、時代を大きく分ける線引が、くっきりとそこに現れていたからだと思う。もちろん、おとなたちは過去にその線を越えて生きていた。だから、その線引の強さは、個人によって大きく異なっていたと思う。けれども、個人の経験に収斂させてしまうには、その線引はあまりにも歴史的に大きすぎるものだった。個人の経験としてその時代を越えてきた語りは、自分も耳にしていた。「戦前」と「戦後」とで、大きく分かたれた価値観の違いについてなど。けれども、それはあくまでも個人の経験であり、昭和という時代を語る際には、やはりどうしても歴史的事象を並べることでしか敷衍できないものがあった。64 年間という歳月は、それだけの大きさをもっていた。最果さんはここで、阪神淡路大震災を「経験」した個人的な瞳について強く語っている。神戸で過ごして震災に遭った最果さんは、けれども、その経験を個人的なものだと語り、外部から「震災」というひとかたまりの事象にまとめられることに苛立ちを覚えている。けれども、時代を経て、語り合うことのなかった友人の声を、神戸新聞の Twitter アカウントを通してまとめて知る、推測する、という経験を経ることで、当時の苛立ちとは別のものを自分のなかに生じさせる。何かを自らが語る、何かを他者に問う、ということの、暴力性をまじえた強さを、最果さんの言葉で顧みた。

  • 先に読んだ『コンピュータ、どうやってつくったんですか?』の著者、川添愛さんを辿っていて見つけたもの。


    Amazonより抜粋
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    〈「完全主観」でたどる平成〉
    〈平成時代を生きた8人の表現者が、それぞれの記憶を語る〉

    2019年5月に改元を控えたいま、後世に遺したいものとは何か?

    これまで平成論を語ることのなかった8人があえて平成にフォーカスして語る、一筋縄ではいかない現代社会文化論。
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    私が特に興味深く読めたのは、以下お二人の寄稿。

    ●【川添愛さん(言語学者)/情報技術とAIから、ゆるく平成を振り返る】
    先の一冊では見えてこなかった川添さんのキャラクターが大分見えてきた。とても親しみやすく、ユーモアのある方だなあ、という印象。
    テーマの通り、学術的なお話だけでなく、身近なコンピュータやゲーム機器の変遷も書かれており面白い。
    私がもう少し世代が近かったら、もっと楽しめただろうな…。

    ●【田房永子さん(漫画家)/平成0年代、女子高生ブームの時ちょうど女子高生だった私 】
    全く知らない世代ではないものの、少し後、そして地方から見ていた私にとっては『そうだったんだ…!』の女子高生ブーム。
    コンテンツとして女子高生を消費する〝大人〟の存在に目を向けています。



    改元ブームの波に乗れず、ちょっと冷めた目で眺めていたけれど、平成の終わりに読んでみてよかった一冊でした。

  • 相変わらず、みかこ姉さんが秀逸

  • 平成の終わりに著名人たちが平成時代を総括する。

    平成が終わってはや3年、平成時代とは何だったのか。振り返ってまとめよう、という(よくある気がする)本。著者は、武田砂鉄さん、ブレイディみかこさん、最果タヒさん、みうらじゅんなどの著名人で、その分野がそれぞれちがうので、違う視点から平成時代を見ているのが興味深い。おもしろい、と思ったのはブレイディみかこさんの、流行語大賞からふりかえる平成。イギリスと日本の2つの拠点を持つブレイディさんならではの視点から、新自由主義が台頭した平成という時代を捉えた。JKが消費し尽くされた時代として平成を表現した田房永子さんの章もおもしろかった。残念ながら令和になってもJKは商品であり続けている。マチズモな男社会が続く限りは優良な商品であり続けるのだろう。
    そんなこんなで平成という様々な視点が述べられた後、そうして時代で区切ることの馬鹿らしさをぶち上げるのが最終章の武田砂鉄さんで、え?じゃあ今までの章って何だったの??ってなったりする。ただし言うこともよく理解できて、平成は昭和の続きに過ぎなくて、平成の始まりの時も終わりの時も昨日と変わらない日々が続くだけで、時代の区切りはほとんど全ての日本人にとって不連続的なものではなかっただろう。そういう視点から平成、そして「時代」というものも考えさせられた。
    人生の大半を過ごした平成という時代、自分にとってはどんな区切りだったのか、ぼんやり考えてみるのも一興だが、一方で僕は元号などという非合理的なシステムは、少なくとも官公庁で早く廃止してもらって、情緒の世界で使われ続けてほしいと切に願っている。そういう社会である間は生産性もジェンダーも人権もずっと昭和のままであろうよ。

  • 最果タヒさん、文章つまらない
    武田さんとの対談も、なぜかつまらない
    ブレイディさんも、なんだろう、つまらない
    全体的におもしろくなかったけど、栗原さんは、いつもと同じでおもしろい

  • 途中で離脱

  • みんないろんなことを考えてる
    個人的にはブレイディみかこさんの論考が一番興味深かった

  • 平成とは、どういう時代だったのか。

    人によって、いろんな見方があるんだなあと
    素直に感心しながら読む。
    どういう切り口で語るかで個性が出る。

    改めて、冷静に俯瞰で見れば、
    やっぱり変わった時代だったんだな。
    そんな中で、わたし達は青春を過ごしてきてんだな。

  • 読みやすくて面白かった
    特にブレイディ、田房、砂鉄

  • 一番面白かったのは川添愛、つまらなかったのは最果タヒ。

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著者プロフィール

1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年よりライターに。近年ではラジオパーソナリティーも務める。
『紋切型社会――言葉で固まる現代社会を解きほぐす』(朝日出版社)で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞などを受賞。他の著書に『日本の気配』(晶文社、のちにちくま文庫)、『マチズモを削り取れ』(集英社)などがある。

「2022年 『べつに怒ってない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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