実践自治体行政学-自治基本条例・総合計画・行政改革・行政評価 (実践的自治体行政学の確立をめざす--行政学の俊英による最新刊!)

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  • 第一法規株式会社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784474024977

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、先日北大公共のシンポジウムにも来て頂いた金井利之先生の『自治フォーラム』での連載を単行本化したものです。
    内容としては、「民主主義体制のなかの非民主主義的主体」である自治体行政と住民との実践的な関わりに焦点を当てたものとなっており、取り上げられるトピックも近年住民が関わることの多い自治基本条例・総合計画・行政改革・行政評価に絞って論じられています。今回は後者の2つに興味を持って読み進めました。

    第3章では、「行政改革」がテーマとして取り上げられています。
    まず、著者は行革のスタイルを①人件費の削減等を内容とした減量型行政改革、②旧来型の行政システムにメスを入れる行政経営システム改革、③行政と民間部門の在り方を一体的に考える地域経営改革に分類することができるとしています。また、行革が性質上「総論賛成、各論反対」の立場を取る関係者を生みやすいため、自治体は国の「外圧」を利用する場合が多く、住民による民主的統制と行革の実行性というディレンマが存在していると著者は指摘しています。
    そして、これらの分析を踏まえて詳細な事例研究を行っている点に本書の特徴があります。ここでは、横須賀市と八王子市の行革の取り組みが参照されています。例えば、横須賀市は当初自主的に上記①②③を含む行革を実行していましたが、00年代に入って国の「新行革指針」の方向性に影響を受けることで、②が薄まっていった経緯などが詳細に論じられています。

    第4章では、行政自身がPDCAサイクルに基づいて諸政策を管理する仕組みである「行政評価」が取り上げられています。
    まず著者は、この仕組みが90年代半ばから各自治体で急速に導入された理由について、議会や行政が何らかの形で取り組んできた従来の「評価」に対する住民の「評価の評価」が悪化したためであると説明しています。一方で、行政職員に評判の良くないこの仕組みが定着した理由については、「上から」の要求に追従する行政職員の「評価の評価無き継続」志向によって「慣れ」が生じたためであるとされ、そのため、何らかの「飽き」が来れば形骸化する危険性を孕んでいることが示唆されています。
    続いて著者は、本来政治過程を経由して民主的統制下に服するべき評価が官僚制化していくメカニズムについて説明しています。この点、「評価」が専門分野として確立しづらいために、複数の専門性をまとめあげる機能が必要となり、その機能こそが行政職員の基本的な技能であるため、評価自体に官僚制化する契機が内在しているとする指摘などは、興味深かったです。
    また、この章でも事例として立川市と世田谷区の取り組みが丁寧に参照されています。特に、「評価の評価」を担う制度監視型の第三者評価機関を設置した立川市の事例などは、興味深かったです。

    以上が後半部分の主な内容になっていますが、前半のトピックに上がっていた総合計画などにも関心があるので、また機会があれば読んでみたいと思います。
    自治体行政の実務者や関心のある学生におすすめできる内容です。

  • 自治体内の行政職員などを「民主主義体制のなかの非民主的な主体」ととらえ、市民や市民の付託を受けた首長や議員がどのように非民主的な主体をコントロールするかを論じた本です。
    特に自治基本条例・総合計画・行政改革・行政評価を取り上げ、自治体行政学の理論と事例研究により構成されています。
    伝統的な政治学・行政学の関心事項である政府の暴走をいかに民主主義が抑止するかという観点があり、いま実践がなされている「新しい公共」などの動きを整理するには至っていませんが、今後「官から民へ」の流れが継続的に拡大すれば、民主主義体制のなかの非民主的な主体は自治体職員ではなく委託先の民間企業やNPOに拡大します。この動きのなかの自治体行政学の構成が急務に感じます。自治体の自治基本条例・総合計画・行政改革・行政評価に関心のあるかたは読んでおいたほうがよいと思います。

  • 金井教授独特の記述で、特に総合計画の考え方が参考になった

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