ギタンジャリ (レグルス文庫)

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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784476012095

感想・レビュー・書評

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  • 神様を敬う詩集です。

    作者はインド人なので彼の宗教の神様に対して想いを詩に込めていますが、
    私は幼稚園がキリスト教だった影響でイエズス様やマリア様と思いながら詩を読んでいました。

    なので自分が信じる宗教の神様と思いながら読むと良いと感じました。
    詩集の中の言葉遣いが大変丁寧で、心落ち着かせながら読む事が出来ました。

    年末年始の時間がある今にじっくりと読んで欲しい本です。

  • 美しい。
    でも、「おんみ」という言葉に慣れていないため、少し違和感があった。
    聖路加病院の日野原先生も御推薦の詩人。
    『死ぬ瞬間』でも彼の詩を紹介している。

  • 大地震から十日が過ぎました。日を追うごとに増えていく死者の数
    に改めて津波の被害のすさまじさを思い、厳しい冷え込みが続く中
    で被災者の方々がご無事であられることを祈り、そして、原発の溶
    融を止めようと必死に働き続ける人々のご努力に感謝しながらも、
    放射能汚染の拡大に不安を感じ続けた日々でした。

    インターネットに飛び交う言葉や文章と、仕事のための資料や本を
    除いて、ほとんど文章らしい文章は読むことのないままに過ぎた日
    々でもありました。言葉は無力だな、と思い始めたその頃、偶然手
    にとったタゴールの詩集『ギタンジャリ』を読んで、そんな思いは
    消え去りました。不安や悲しみを吹き飛ばしてくれる、歓喜に満ち
    た生命の歌がそこにはあったからです。

    タゴール(1861~1941年)は、インドの国民的詩人です。1913年
    には英文で発表された本書『ギタンジャリ』でノーベル文学賞を受
    賞。インド独立の父ガンジーも、彼の詩をこよなく愛していたと言
    います。インド国歌もタゴールの作詞・作曲によるものです。

    『ギタンジャリ』という聞き慣れない言葉は、ベンガル語で、「歌
    のささげもの」という意味だそうです。ささげられる相手は、全て
    の生命の根源である神。タゴールは、神に対し「おんみ」と呼びか
    けつつ、讃え、祈り、全身全霊をかけて、自らの言葉をささげます。

    そういう意味では本書は極めて宗教的です。しかし、ここにあるの
    は、特定の宗教の教義ではなく、ただただ生命の根源にあるものに
    呼びかける言葉であり、生と死を司る大いなる存在に対する憧れと
    畏怖なのです。それは、仏教もキリスト教もヒンズー教も超越した、
    人間と世界を真に愛するとてつもなく大きな生命の思想です。

    タゴールがこの生命の思想に形を与えたのは、最愛の妻や娘、そし
    て親友達を次々と病気で失い、失意のどん底にいた時期です。深い
    悲しみに打ちひしがれていた時に、何故、これほどまでに歓喜に満
    ちた生命の歌を書くことができたのか不思議でなりません。死の意
    味を考え続けることを通じて、生命の根源に触れていったのかもし
    れませんし、最愛の人々が次々に奪われる不条理を経験する中で、
    この世に執着することの無意味さを知り、大きなものに身を任せる
    気持ちになったのかもしれません。詳細はわかりませんが、底深い
    悲しみの果てに辿りついた言葉が、歓喜に満ち、人間と世界に対す
    る愛に満ちていることだけは間違いありません。

    地震と戦争で、世界には不条理と悲しみがもたらされています。し
    かし、一方で、足下に目を転じれば、木々は芽吹き、花々は咲きこ
    ぼれ、草々が地面を覆っています。春は確実にやってきています。
    人の世で起きていることとは関係なく、大いなる自然のサイクルは
    傷つくことなく回っている。そのことにほっとし、また、希望を感
    じさせられもするのです。地震と津波は多くの生命を奪いましたが、
    同じ自然のエネルギーが草木の形を借りて噴き出し、人の心を癒し
    ます。自然の摂理の不思議を思わずにいられません。

    タゴールの詩は、自然の摂理にまるごと触れています。だからこそ、
    疲弊した心を癒す力があるのだと思うのです。言葉が無力でないこ
    とを教えてくれる一冊です。是非、読んでみて下さい。

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    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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    蓮の花の咲いた日に、ああ、わたしの心は彷徨っていた。なのに
    わたしはそれに気づかなかった。わたしの花籠は、空っぽだった、
    なのに、花には目もくれなかった。
    (中略)
    そのとき わたしは知らなかった――花がそんなにも身近にあり、
    それがわたし自身のものであったことを、そして このような全き
    美が わたし自身の胸の奥深くに花咲いていたことを。

    わたしの名で閉じこめられたあのかたは 土牢のなかで泣いている。
    わたしはいつも 土牢の周りに壁をめぐらすのに忙しい。そして、
    日に日に 壁が空高くのびてゆくと、わたしは その暗い陰のなか
    で 自分の真の存在を見失う。
    わたしは この大きな壁を誇りに思い、その名においてどんな小さ
    な隙間も残さぬよう塵と砂で壁を塗りこめる。そして、そのことに
    ばかり心を奪われて、わたしは 自分の真の存在を見失う。

    心が かたくなに 干からびるときは、慈愛の雨をたずさえて来て
    ください。
    日々の暮らしから やさしいこころが失せるときは、迸る歌をたず
    さえて来てください。
    せわしい仕事が あたりいちめんに騒音をかきたて、遥かなものか
    らわたしを遮るときは、沈黙の主よ、平和と憩いをたずさえて来て
    ください。
    わたしの乞食根性が 片隅にとじこもり うずくまるときは、わが
    主よ、扉をうちやぶり、王者の威厳をただして来てください。
    欲望に目が眩み、妄想と埃で 心が盲になるときは、おお、おんみ、
    聖けきひとよ、油断なきひとよ、おんみの光と雷をたずさえて来て
    ください。

    歓びの調べを ことごとく わたしの最後の歌にとりいれよう――
    歓びは 大地を さんざめく草たちで溢れさせる。歓びは 双子の
    兄弟・生と死を 広い世界で踊らせる。歓びは 嵐とともに吹き来
    たり、高らかな笑いで あらゆる生命を揺り起こす。歓びは、花咲
    く苦悩の紅い蓮華の上で 涙をたたえて 静かに坐る。そして歓び
    は いっさいの持ち物を塵のなかになげすてて、黙して語らない。

    涯しない世界の海辺に 子供たちが集まる。頭上には 無窮の空が
    じっと身じろぎせず、動きやまぬ浪が 騒々しい。涯しない世界の
    海辺に 子供たちが集まって、叫び、踊っている。
    子供たちは 砂で家を作り、貝殻で遊ぶ。枯葉で小舟をあみ、愉し
    げに 広い海に浮かべる。子供たちは 世界の海辺で 戯れ遊ぶ。
    (中略)
    涯しない世界の海辺に 子供たちが集まる。嵐が 道なき空を徘徊
    し、船は 航路のない海で難破し、死が蔓延する、それでも、子供
    たちは戯れ遊ぶ。涯しない世界の海辺に 子供たちが群がり集まる。

    おんみはわたしを わたしの知らなかった友らに ひきあわせてく
    れました。おんみはわたしの家でないところに わたしの席をもう
    けてくれました。おんみは 遠くの人たちを近づけ、見知らぬ人を
    兄弟にしてくれました。
    住みなれた家郷を去らねばならないとき、わたしの心は不安におの
    のきます。そんなとき、新しいもののなかに 古いものがやどって
    いることを、そこにもまた おんみが住んでいることを わたしは
    忘れているのです。

    昼となく夜となく わたしの血管をながれる同じ生命の流れが、世
    界をつらぬいてながれ、律動的に鼓動をうちながら 躍動している。
    その同じ生命が 大地の塵のなかをかけめぐり、無数の草の葉のな
    かに歓びとなって萌え出で、木の葉や花々のざわめく波となってく
    だける。
    その同じ生命が 生と死の海の揺籠のなかで、潮の満ち干につれて
    ゆられている。
    この生命の世界に触れると わたしの手足は輝きわたるかに思われ
    る。そして、いまこの刹那にも、幾世代の生命の鼓動が わたしの
    血のなかに脈打っているという思いから、わたしの誇りは湧きおこ
    る。

    万物は突進し、とどまるところを知らず、ふりかえらない。どんな
    力も それを食い止めることはできない――万物は突進する。

    なすこともなく過ごした数々の日に、わたしは 失われた時を悲し
    んだ。けれども、主よ、それは けっして失われたのではありませ
    ん。あなたは わたしの人生の一瞬一瞬をことごとく あなたの御
    手にとりあげてくれました。
    物たちの奥深くに隠れて、あなたは 種を芽に、蕾を花にはぐくみ
    そだて、花を果実へとみのらせます。
    わたしは 疲れて、怠惰な床に眠りながら、仕事はすっかり終った
    ものと、思っていました。朝になって 目を覚ますと、わたしの庭
    は 花々の奇蹟でいっぱいでした。

    わたしは知っている――いつの日か 地上のものが見えなくなり、
    生命が わたしの目に最後の帷をおろして、静かに 立ち去る日が
    来るだろうことを。
    それでも、星々は 夜どおしまたたき、朝は 変わることなく 明
    けそめるだろう。そして時は 海の浪のように高まり、喜びや苦し
    みを打ち上げるだろう。

    わたしが舵を手離すときは、あなたが舵を握るときが来たのだと、
    わたしは知っています。そのとき、なすべきことは 万事 時を移
    さずなされましょう。いまとなっては、いくらあがいてみても 無
    益です。

    生涯 片時も休まず、わたしは 歌をもって あなたを探し求めて
    きました。戸口から戸口へと わたしを導き漂泊らわせたものは
    歌でした。そして、歌をもって 自分の周りをまさぐり、わたしの
    世界を求め、世界に触れたのでした。

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    ●[2]編集後記

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    年度がわりの整備で一ヶ月ほど使えなくなっていた区民農園の使用
    がようやく解禁されたので、新しく割り当てられた区画を耕してき
    ました。2年間借りていた区画とは別の場所になったので、また土
    づくりから始めないといけません。

    スコップを入れて掘り起こした土を鍬でほぐすのですが、六畳一間
    にも満たないような区画なのに、汗をぐっしょりかく大仕事でした。

    掘り起こした土からはミミズやサナギが出てきました。雑草も産毛
    のように地面を覆い始めています。耕すと言いつつ、彼らの生存環
    境を破壊している事実に矛盾を感じ、いっそ今年は耕すのはやめよ
    うかと思いつつ、それでも耕してしまう人間のサガに呆れながら、
    一方で、冷えきった地面の中に、こんなにも豊かな生命が満ちてい
    ることに驚きもするのでした。

    そうやって土に触れ、秘めた生命の力に触れているうち、この十日
    間に感じていたストレスが霧消していくのを感じました。土は、そ
    して、緑はやはり希望です。明日世界が滅ぶと言われても、こうや
    って土を耕し、種を播きにこよう。そう思うと、不思議に力が湧い
    てくるのでした。

  • ピーター・ブルックの「マハーバーラタ」の音楽を担当していた土取利行さんが参加していたアルバム、シャルミラ・ロイのタゴール歌曲集から興味を持ち、手に取った本。

    かれこれ20年以上前。。。

    英語でタゴールが書いた詩の日本語訳。ひらいたところを読むとなんだか心がふんわりしやすよ。でも実はものすごい決意というか、厳しさのある愛の詩。神様?恋人?相手は誰にしろ、愛って強いもんなんですよなあ。

  • 「この★は巻末の英語版のところへの評価です。」

    日本語訳はやたら癖が強く
    キリスト教色が強くて読むに堪えないが

    巻末の英語版は見事としか言いようが無い。
    難しい英語を使っているわけではないので
    ちょっとした辞書があれば簡単に読めます。
    英語での読書の楽しみを得るのに最適であり、
    詩としての出来も素晴らしい。

    これ以上の詩人を探すのは英国でも米国でも難しいでしょう。

    心に染みいる英語です。

  • 岩波版「タゴール詩集」は絶版。
    こちらは第三文明社版

  • インドの人の言葉にチカラがある理由のひとつが西欧で言う「民主的」という偽善をもともと受け入れない、または信じていない深層の岩盤が強固であるという 感じがします。 僕は麻薬のようにこの本に翻弄されました。

  • このインド人は第二次世界大戦前に教員として来日してたらしい、そして軍部の暴走も予言してたのだと。
    そのことを思うとなんだか感慨深いものがある。

  • この作品でタゴールはノーベル賞を受賞した詩。今まで読んできた詩とは全然違って、作品のなかに吸い込まれそうになった。インドの考え方に触れることが新鮮だったのかも

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