フリードル先生とテレジンの子どもたち: ナチスの収容所にのこされた4000枚の絵 (21C文庫 13)
- 第三文明社 (2011年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784476116137
感想・レビュー・書評
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チェコ北部にある人口3000人ほどの小さな街・テレジンは、第2次大戦中、街全体がナチス・ドイツの強制収容所と化した。
アウシュヴィッツなどの「絶滅収容所」(=集団殺戮自体を目的とした収容所)への「中継地点」として、すなわち“処刑までユダヤ人らを生かしておくための場所”として用意されたテレジンの収容所には、1万5000人の子どもたちもいた。そのうち、解放の日まで命を永らえた子どもは、わずか100人ほどにすぎなかった。
書名にいう「フリードル先生」とは、テレジン収容所に送られ、のちにアウシュヴィッツで殺された画家フリードル・ディッカーのこと。
彼女は、収容所の中で子どもたちに絵を教えた。地獄のような強制収容所での生活の中で、週に1、2回、強制労働のあとのわずかな時間に絵を描くことだけが、子どもたちに人間らしい希望と楽しさを与えた。
収容所の子どもたちが描き残した約4000枚の絵は、彼らがこの世に残した生の証であり、観る者に『アンネの日記』と同質の重い感動を与える。
著者は、1989年にテレジンの子どもたちの絵と運命的な出合いを果たし、以来、テレジンの子どもたちのことを日本に伝える「語り部」となった人。テレジン収容所から生還した人々にインタビューを重ね、関連著作を数多くものしている。また、テレジンの子どもたちの絵を集めた展覧会も数多く開いてきた。
本書は、テレジンについての著作の最新作。数少ない生存者の一人ディタ・クラウスを主人公に据え、彼女へのインタビューを中心にテレジンの子どもたちの物語を紡いでいる。小学校高学年から読めるような平明な構成である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
テレジンで絵画を教えたフリードル・ディッカーに対する思い出とその前後に起きた事柄が、小説「アウシュヴィッツの図書係:ISBN 978-4087734874」の主人公のモデルとなったディタ・クラウスさんの語りと著者の説明によって綴られています。
本人の口から出た言葉に小説以上の重みを感じました。
児童書ですが、年齢を問わない一冊。 -
ドイツ軍の布告で父の仕事は奪われ、食料も自由に買えなくなっていた。ある日、母は黄色い布を星型に切って、みんなの洋服の胸に縫い付けていた。そして「これからは、必ずこの星のマークを付けておくのよ。そうしないと、とても恐ろしいことになってしまうの」と行った。黄色い星をつけて学校へ行くと、校門の前に立っていたドイツ兵が「こら!学校へ入ってはいけない」と怒鳴った。あの時の怖かったこと、びっくりしたことをはっきりと覚えている。でも友達と駆け足で教室へ入った。そうしたらいつも優しかった先生が「ユダヤ人は学校へ入ってはいけないことに決まったのだ。さっさと帰りなさい」と怖い顔をして言った。それっきり学校へは行かれなくなった。