フリードル先生とテレジンの子どもたち: ナチスの収容所にのこされた4000枚の絵 (21C文庫 13)

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  • 第三文明社
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784476116137

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  •  チェコ北部にある人口3000人ほどの小さな街・テレジンは、第2次大戦中、街全体がナチス・ドイツの強制収容所と化した。
     アウシュヴィッツなどの「絶滅収容所」(=集団殺戮自体を目的とした収容所)への「中継地点」として、すなわち“処刑までユダヤ人らを生かしておくための場所”として用意されたテレジンの収容所には、1万5000人の子どもたちもいた。そのうち、解放の日まで命を永らえた子どもは、わずか100人ほどにすぎなかった。

     書名にいう「フリードル先生」とは、テレジン収容所に送られ、のちにアウシュヴィッツで殺された画家フリードル・ディッカーのこと。
     彼女は、収容所の中で子どもたちに絵を教えた。地獄のような強制収容所での生活の中で、週に1、2回、強制労働のあとのわずかな時間に絵を描くことだけが、子どもたちに人間らしい希望と楽しさを与えた。
     収容所の子どもたちが描き残した約4000枚の絵は、彼らがこの世に残した生の証であり、観る者に『アンネの日記』と同質の重い感動を与える。

     著者は、1989年にテレジンの子どもたちの絵と運命的な出合いを果たし、以来、テレジンの子どもたちのことを日本に伝える「語り部」となった人。テレジン収容所から生還した人々にインタビューを重ね、関連著作を数多くものしている。また、テレジンの子どもたちの絵を集めた展覧会も数多く開いてきた。

     本書は、テレジンについての著作の最新作。数少ない生存者の一人ディタ・クラウスを主人公に据え、彼女へのインタビューを中心にテレジンの子どもたちの物語を紡いでいる。小学校高学年から読めるような平明な構成である。

  • テレジンで絵画を教えたフリードル・ディッカーに対する思い出とその前後に起きた事柄が、小説「アウシュヴィッツの図書係:ISBN 978-4087734874」の主人公のモデルとなったディタ・クラウスさんの語りと著者の説明によって綴られています。
    本人の口から出た言葉に小説以上の重みを感じました。
    児童書ですが、年齢を問わない一冊。

  • ドイツ軍の布告で父の仕事は奪われ、食料も自由に買えなくなっていた。ある日、母は黄色い布を星型に切って、みんなの洋服の胸に縫い付けていた。そして「これからは、必ずこの星のマークを付けておくのよ。そうしないと、とても恐ろしいことになってしまうの」と行った。黄色い星をつけて学校へ行くと、校門の前に立っていたドイツ兵が「こら!学校へ入ってはいけない」と怒鳴った。あの時の怖かったこと、びっくりしたことをはっきりと覚えている。でも友達と駆け足で教室へ入った。そうしたらいつも優しかった先生が「ユダヤ人は学校へ入ってはいけないことに決まったのだ。さっさと帰りなさい」と怖い顔をして言った。それっきり学校へは行かれなくなった。

  • アウシュヴイッツへの中継基地とよばれたテレジン収容所。生還者が100人に一人といわれた「地獄の控え室」とよばれた収容所でフリードルと子供たちが描いた絵画と生き残ったひとびとの証言が胸をうつ。人間の巣くう深い光と闇をわかりやすく紹介した一冊。

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著者プロフィール

1937年、東京生まれ
早稲田大学第一文学部仏文科卒業
コピーライター、PR誌編集長を経て、現在フリーで、ルポルタージュ、エッセイ等を新聞・雑誌に執筆
著書に
『くらしの風土記・埼玉』(かや書房)
『随筆集 雪やなぎ』(かや書房)
『フォト&エッセイ アンネへの手紙』(教育出版センター)
『絵画記録 テレジン強制収容所』(ほるぷ出版)
『テレジンの小さな画家たち』(偕成社)
『子どもたちのアウシュビッツ』(第三文明社)
『テレジンの小さな画家たち詩人たち』(ルック)
『15

「1992年 『15000人のアンネ・フランク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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